第31話 生理痛になりました
ああ~やってしまった……。
腹が立った勢いで、したくもないお見合い話を受けてしまった。
あっという間に話は進められ、五日後の今日、とうとうオスカーが我が家にやってくる。
考えるだけで気が重いせいか、頭が痛くて、体がだるくて、何だか熱っぽい。
昨日の夜、あんまり眠れなかったもんな……。
いつもなら九時には起きるのに、十時になってもベッドの上でごろごろしていたら、
「お嬢様。そろそろお召し替えを」
「ぎゃっ!!」
私は叫んで布団にくるまった。
寝起きの髪ぼさぼさ、パジャマもはだけた状態の姿をアキトに見られるなんて。
「何で来るのよ~!」
「何でと言われましても。昨日でいただいた休暇は終わりましたし」
「分かった。分かったから、一回出てって。着がえは一人でできるから」
お見合い用にお母様がわざわざ仕立て屋さんを呼んで作ってくれた、淡い水色のドレス。
胸元と腕にレースがあしらわれていて透け感があり、涼しげなデザインになっている。まさに、夏にぴったりのドレスだ。
なのに、袖を通しても、ちっとも気分は浮き立たない。
ていうか、何か目まいまでしてきた……。夏バテかな?
「朝食のご準備が整いました」
「ごめん、要らない。下げてくれる?」
アキトは眉を曇らせた。
「どこか具合が悪いのですか」
「ううん、大丈夫。食欲ないだけだから」
と言ったけど、血の気が引いて目の前がぐるぐるする。
体もだるいし、ずきずきと下腹部が痛み出した。
あ……これってもしかして……。
「失礼します」
「ちょっ……!」
避ける暇もなく、アキトの手が額に触れた。
「熱はないようですね」
「だから言ったでしょ、大丈夫だって」
そそくさとトイレに行くと、案の定、生理が始まっていた。
やっぱりだ~最悪……。
トイレから戻ると、アキトが険しい顔で仁王立ちしていた。
「お嬢様。お加減が悪いのでしたら、医師をお呼びいたします」
「いい、いい。平気だから」
「しかし、お顔の色が悪いようにお見受けしますが」
「しつこいな! いいって言ってるでしょ!」
いらいらした気持ちを、つい言葉にぶつけてしまった。
大体こんなことになったのも、アキトのせいなんだから。
アキトがあのとき助けてくれて、私のお見合いを阻止してくれたら、今ごろ私は食っちゃ寝ライフを満喫してたのに。
「……申し訳ございません」
謝られると、余計に罪悪感で胸がうずく。
ごめんアキト。でも、生理痛でいらいらしてるなんて言えないし……。
「お母様に会ってくるから、しばらく放っておいて」
とりあえず部屋から逃げ出した途端、視界に眼鏡男子が飛び込んできた。
「え!?」
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