第3話 下町に遊びに行きました
公爵家の屋敷から馬車に乗ること10分。
やってきたのは下町である繁華街だ。
ここ【プリスタイン公爵領】は、前世で言うと県ぐらいの大きさで、こちらの世界だと【領国(りょうごく)】と呼ばれている。
リアンダー王国には王領(おうりょう)の他に三十の公爵領(こうしゃくりょう)があり、その中にさらに侯爵家が治める侯爵領、伯爵家が治める伯爵領がある。
王家から公爵家へ、公爵家から侯爵家へと、領土の一部の統治・運営を委任しているのだ。
つまり国の下に都道府県があって、市町村があるというような仕組みである。
「見てアキト、あれおいしそう~!」
屋台にほかほかと湯気を上げている、白くて丸いおまんじゅうが並んでいる。
指さしたところ、さりげなくアキトが屋台との間に割って入った。
「お嬢様、あまりはしゃぎすぎないようになさってください。一応変装してはいただいていますが、目立った行動をすれば周囲に公爵令嬢だと気づかれるかもしれません」
「大丈夫よ、子どもじゃあるまいし」
「そうですか。それはよかった。では、以前のように大型犬を追いかけすぎて転んだり、ケーキを食べすぎてお腹を壊すということもありませんね?」
「うっ……」
アキトは手強い笑みを浮かべている。これだから記憶力のいい人は困る。
確かに公爵令嬢は、公爵領ではいわば『お姫様』だから、常に誘拐の危険がつきまとう。
でもプリスタイン領は治安もいいし……過保護すぎると思うんだけどな。
「そちらを二ついただけますか」
「はいよ!」
アキトがまんじゅうを購入してくれている間、何とはなしに往来(おうらい)を眺めていたところ、私の目にとんでもないものが飛び込んできた。
「あああああああああああーっ!!!!」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます