14. おい、ベッドにもぐりこむな!
「今日は色々なことがあったな」
部屋に入り、俺はひとりごちる。
とつぜん呼び出されてクビを言い渡されたと思ったら、まさかエルフの王女――ティファニアが迎えに来て。
(今日からここで暮らしていくんだな)
環境の変化に、戸惑うばかりだ。それでも何とかやっていくしかない。そんな決意を持って目を閉じたが――
「旦那さま! 来ちゃいました!」
やたらと騒がしい声に叩き起こされた。目を開けると、そこには枕を持参したエルフの少女――ティファニアが、パジャマ姿で立っていた。
「な、ティファニア!? どうやってここに。というか、何故ここに?」
「合鍵バッチリです! それに夫婦が一緒の部屋に寝泊まりするのに、何か理由が必要ですか?」
笑顔で鍵を見せてくる。いやいや、無邪気に笑ってるけど、ツッコミどころしかないからな? ティファニアは、俺の視線にこりた様子もなく、両腕を広げて更にとんでもないことを言ってのけた。
「さあ、旦那さま! 今ならこんなに可愛いエルフの美少女を、襲いたい放題ですよ!」
そう言いながら、ティファニアはなんとベッドの中に潜り込んで来るではないか。え、どういうことなの!? さっき「この宿で不健全なことは禁止!」とか言ってたよな!
「可愛いって、自分で言うか?」
「……突っ込まないでくださいよ。なんか、恥ずかしくなってきちゃったじゃないですか」
頬を赤らめて俯いてしまうティファニア。その様子は妙にいじらしく、思わず衝動的に抱きしめたくなってしまうが……理性を総動員して自重。
「ティファニア、もう少し自分を大切にした方が良い。俺も男だし、あまり無防備に来られると……理性が持たないぞ?」
そう言いながら、ティファニアのサラサラの髪を撫でてやる。嫌がるでもなく、気持ち良さそうに見を閉じ、
「理性、無くしてくれても良いのに……」
「え?」
ティファニアが何かを小声で呟いたが聞き取れず。ティファニアもわざわざ言い直すことはせず、静かな沈黙が訪れる。
「旦那さまの傍は、あったかくて安心しますね」
「そうか?」
「ずっと悩んでいた結界についても、あっさり解決してしまいました。旦那さまは、まさしく救世主のような方です」
「そんな大げさな。あんなの、ちょっとした工夫だぞ? 全然、大したことはしてない」
というか、ただの応急処置だしな。まだまだやらなければならないことは、いっぱいある。
「そういう驕らないところも素敵です! やっぱり旦那さまで良かった」
そんなことをしみじみと呟き、
「旦那さま、私のこと好きにして良いんですよ?」
ティファニアは上目遣いで、さらなる爆弾を投げつけてきた。数々の発言に、俺のちっぽけな脳みそがフリーズしかけたころ、
「このバカエルフ〜! なにをどさくさに紛れて、リット様を誘惑してるんですか!」
部屋に少女たちが飛び込んできた。リーシアが勢いよく駆け寄り、ティファニアのほっぺをムニーっと引っ張る。
「り、リーシア。ひ、ひひゃいです、こうさんです。ごめんなさい!」
「反省してください!」
そんな2人の言い争いをよそに、
「まったく、油断もスキもあらへんで。何が宿の主人だから一緒には眠れない……や、バッチリ来とるやないか!」
「危なかった、リーシアさんお手柄です! 不覚です。こんな簡単な手に、気が付かなかったなんて……」
飛び込んできた少女たちは、あれよあれよという間にティファニアを部屋の入り口まで、ズリズリと引きずっていく。
(やれやれ、ほんとうに理性が吹っ飛びかけたぞ)
ティファニアにとっては、軽いスキンシップなのかもしれないが、王国でボッチ生活を謳歌した人間には、かなりの刺激なんだぞ?
「お騒がせしました。それでは師匠、おやすみなさい」
「ああ。おやすみ、アリーシャ」
ひとしごと終えたと言わんばかりの満足そうなアリーシャたちと、むーっと悔しそうなティファニア。騒々しいけど、弟子がお泊り会を満喫しているようで何よりだ。
(ふむ、念のためにこの部屋にも侵入防止の結界を張っておくかな)
合鍵はやばい。次やられたら、ほんとうに理性が持たなそうだ。
俺は単純な魔法陣を3つほど生み出し、無造作に混ぜ合わせると入り口の扉に向かって放り投げた。これで俺の許可なく、この部屋に入ってこれる者はいなくなるはずだ。
俺は安心してベッドに戻り――そのまま眠りに落ちた。
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