え、宮廷【結界師】として国を守ってきたのにお払い箱ですか!? 〜結界が破られ国が崩壊しそうだから戻って来いと言われても『今さらもう遅い』エルフの王女様に溺愛されてスローライフが最高に楽しいので〜
24.【王国SIDE】責任を押し付けあうだけの不毛な話し合い
24.【王国SIDE】責任を押し付けあうだけの不毛な話し合い
「ふざけないで! 聖女の力は絶対よ。私の力があれば、あなたたちもいらないわ!」
「姉上、せっかく来てくださった結界師様に向かって、なんという口の聞き方をするんですか! すぐに謝ってください!」
アレクが激昂する。会場の空気もまるで私が悪者のようだった。完全に会場内の空気をモノにしたアレク。この空気では、王族の身分を使って、失言を押し通すこともできない。
「……申し訳ありません」
主張が認められるどころか、こうして頭を下げさせられるなんて。屈辱だった。
私の発言には、もはや何の説得力もないのだ。世界で一番の結界師をクビにした失態を、弟に尻拭いしてもらった愚かで傲慢な王女――それが、ここに集まった者たちからの私への評価だった。
「父上。迅速に結界師を集めた私の手腕を認めてくださるなら――この件は是非とも、私にお任せください。来てくださった結界師と共に、全力で解決に当たらせてもらいます」
「……良かろう。こたびの件は、アレクに任せることにする」
アレクは父の言葉を聞くと、勝ち誇ったような顔をこちらに向けた。
「そんな――父上!」
「貴様は私を騙そうとしていたのだな。しばらくは自室で謹慎していたまえ。沙汰は追って下そうーー失望したよ、エリーゼ」
全ての責任は私・エリーゼにあるという結論。今後のことは全てアレクに任せると宣言し、自らは事態の収束に動くことなく、国王は去っていった。
どうしようもない国王だった。
(どうするのよ……)
謁見の間は、あっという間に混沌に包まれた。
残されたのは混乱する貴族ばかり。誰も国の未来を真剣に考えず、己の保身のみを考えている。先ほどのやりとりを見て、情勢の変化を悟ったのだろう。私の後ろ盾となっていた者たちの動きは、とても機敏だった。
「エリーゼ王女。勝手な思いつきで先走られましては、困りますな……」
「私としても、結界師はこの国には必要だと思っていたのですよ。それでも、エリーゼ王女にお家にとりつぶしをチラつかされては、どうすることもできず……」
「汚いぞ貴様等っ! 私は今回の件には関わっていない。そうですよね、エリーゼ王女!」
若き天才、聖女様、革命家――そういって私を持ち上げていたものたちは、あっという間に手のひらを返す。彼らは、そのままアレクにすり寄っていった。
「――アレク、よくも私をハメてくれたわね!
みなさん、聞いてください。これは聖女である私を陥れようとしたアレクの陰謀です。結界師の言うことはウソっぱち、正体は隣国のスパイでしょう!」
私は責任逃れのため、出まかせを口にする。心のどこかが、こんなことをしている場合ではないと警鐘を鳴らすが、焦りに突き動かされていた。
このまま国の混乱の責任を取らされようものなら、王位はおろか王族としての地位すら失う可能性すらある。下手すれば大罪人だ。
「姉上、いい加減に往生際が悪いです。言って良いことと、悪いことがあります!」
アレクが顔を真っ赤にして怒鳴った。こちらも口汚く罵り返す。
誰もが責任を押しつけあった。
誰もが責任を回避しようとした。
――そんなことをしている余裕はないというのに。
数時間にも及び"話し合い"は続けられた。延々と互いの失態をあげつらうだけの、不毛な会議。建設的な話し合いは何ひとつ行われなかった。
「どこまでも醜い権力争いじゃな。巻き込まれる民が哀れで仕方ない」
「ふぉっふぉっふぉ。前任の結界師は、よくこんな国で働いていたものじゃな」
「まったくじゃ。でもその尊い心は、結界師の理想とするところ。我らも見習わなければなりませんな」
結界師たちの呆れ声。どこか遠い場所から国の混乱を眺めるような、心底興味のなさそうな表情――それが、やけに印象的だった。
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