第3話 サイズ 

 鏡に映る腰回りをみてため息が出る。

 衣装を買いにきたショッピングモールで、かわいいワンピースを見つけた。私服用にと手に取り試着室に入ると、さっきまでハンガーに吊るされて軽やかに揺れていた白地のワンピースが、私の肉でゆがんでいる。


 「お客様~どうでしたかぁ~?」とカーテンの向こうから声をかけてくる店員になんと返せばいいのかわからず、や、やめときます、と裏返った声で言った。


 そうですかぁ、という店員の声に背を向けて元の服に着替える。ワンピースをハンガーにかけると、それは軽やかな姿を取り戻していた。


 ワンピースを売り場に返すと、隣に同じワンピースの色違いが2着並んでいた。だが、私が着たものも含めて、サイズはF(フリー)サイズの1種類だけで、そのサイズに入らない女は店の中では存在していないのと同じなのだと思った。


 GUにはLLサイズまで売っていて、それをありがたいと思ったのは大学生になってからだ。高校生の頃も痩せてはいなかったが、大学に入って体重は急増した。それは一人暮らしの自由さからかもしれないし、人間関係のストレスや、虚しさかもしれないが、過食が原因であることだけは明らかだ。


 S、M、L、LL。

 LLを手に取り、体に当てながら3Lになったらここからも追い出されてしまうのかと苦しくなる。


 けれど「芸人」という社会ならばわたしを今と変わらず、あるいは今より増して歓迎してくれるかもしれない。

 生まれてすぐ、私の意思なんて関係なく、勝手に「女」という土俵にあげられたのに、そんなの関係なく世間は私を評価してくる。

 でも「芸人」という土俵に立てば、「女」から降りられるかもしれない、そんな考えが浮かんだ自分を衣装の入った袋をみて恥じた。

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