第4話 ステージ裏

 自主企画ステージは盛況で終わった。結局、曽田に言われたことを考慮して、1発目は1年生という体だが、その前に1組の半分以下の長さの前座を、上級生にやってもらうことになったのがよかったのかもしれない。


「めぶさん!」

 1発目にネタをやった1年生コンビが駆けてきた。


「お疲れ様。どうだった?」

 私の問いかけにツッコミの神田が答えた。


「あの…俺らに1番手やらしてもらってありがとうございました!今度は前座なしでやりたいです。ほんとめぶさんのMCもよかったっす。」

 幸田の額からは汗が噴き出していた。人に熱意が宿った時のこの目が好きだ。


 しかし、後方に視線を移すとボケの尾野がしょげた様子で立っていた。またかと思いつつ、声をかける。

「尾野、どうした?」

「いや、なんでもないっす。」

「ん?言ってごらん?」

「いや…、なんか俺、お笑い向いてないなって。」

 やっぱり、と心の中で苦笑したが、思い直して、今日のステージを振り返った。

「…今日の尾野の2回目のボケ、よかったよ。いつもより表情豊かだったし。」

 そう言ってはみるものの、こういう言葉たちは全く尾野の中に消化されていないのは分かっている。


「めぶさん、ありがとうございます。また相談あるので、ご飯連れてってください。」

 尾野がそういうと幸田も苦笑しつつ、私に礼をして尾野を連れその場を去っていった。

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