第10回 ビーストウォリアー  /  ネガティブ 様 後編


続きです!



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2、各論



●第一話


 掴みの部分はインパクトがある訳ではないですが、大きく外す訳でもなく、無難と言った感じです(読者にとって興味の引く謎か何かがあるといいですが、なくてもいいです)。

 開幕説明だらけですが、これはこれでありです。あ、特撮ものなんだな、とわかるので。特撮物は大体の読者さんに物語のモデルが植え付けられているので、どんな物語になるかなんとなく想像できます。


 が、それが許されるのは冒頭だけです。この後再び嵐のように説明がありますが、全部いただけません。

 読者は物語を見に来ています。仮に段を作るなどして読みやすくしても、それは説明文が読みやすくなっただけで何の解決にもなっていません。結局は目が滑ります。

 説明ではなく描写で見せるようにした方が良いと考えます。

 でも俺はこういう書き方で行くんだ!と言うのであれば私は何も言えませんが、こういう書き方をする小説は一般的に売られていないので、得策ではないかもしれません。



>怒号と共に少女の後ろから飛び出したその影は、ワニ獣人に強烈なドロップキックを浴びせる。


 こういう場面も結構説明的、駆け足的に映ります。

 ので、例えばこんな風にします↓


 怒号と共に少女の後ろから飛び出したその影は、ワニ獣人に強烈なドロップキックを浴びせる。


 どうでしょう、説明感は薄れて臨場感も増しますよね。こう言った描写が全体的に足りないので、特に体言止めになっている様な箇所は意識してみると良いかもしれません。



>普通のヒーローものならば、助けられた少女は安堵するところであるが少女の顔は恐怖で引きつったままであった。だが、少女を救ったその怪人の姿を見れば無理はない。その怪人の、仮面ではない本物のライオンの獣頭、筋骨隆々の鍛え抜かれた裸の上半身に真紅のパンタロンとシューズを下半身に履いている姿は、少女から見ればたった今吹き飛ばされたワニ獣人と何ら変わらない異形の怪人でしかなかったからだ。



 説明しすぎです!物語になっていません!

 例えばここであれば、



 助けられた少女は安堵せず、恐怖の色も消えていなかった。自分を救ってくれたらしい目の前の人物は、ワニ獣人と何ら変わらない異形の怪人でしかなかったからだ。


 かなりスマートでビックリすると思いますが、これだけで十分です。主人公の容姿はこの緊迫したシーンが落ち着いてから紹介すればいいです。

(初出なので全部引用しましたが、終始このような感じなので一々書きません。が、それを差し引いてもさすがに説明的すぎる所は例として挙げて行きます)



>ライオンの怪人はワニ獣人を倒すが、戦いの中、ワニ獣人の鋭い牙と強靱な顎で左腕の上腕に噛みつかれ半獣人の特徴である赤い血を流しながら、片膝をつく。


 半獣人の血は赤い、これは一応伏線にもなっているので丁寧に書いた方が良いかもしれません。一文に情報が詰め込まれているので、私が初見の時は気付きませんでした。

 と言う感じで、伝えたい事を詰め込むと結局伝わらなかったりするので、一呼吸おいて地の文を進めた方がいいかもしれません。現実の会話と一緒です。



>心こそが最も価値があるという価値観の持ち主であった。


 このような信念や矜持は行動で見せて行かないと嘘っぽく見えます。これも出来れば言葉にせず、読者に感づいてもらうくらいが丁度良いです。



>異世界の獣人達からは半獣人であるという理由で半端物扱いされ、人間達からは元々獣人達の先兵としてこの世界に現われた経緯から化け物扱いされているヒーローの心は孤独だった。半獣人ゆえに獣人と人間双方から拒まれてきた彼は、


 ずっと同じことを違う言葉で説明しているだけの部分です。こういう所もよく見られます。この情報は戦闘の時の台詞で何となく察するので、全部カットして大丈夫な場所です。

 逆にここで説明するなら、戦闘の時の台詞を全部カットです。

 そしてこれも、この後人間と関わる時に軽く描写を入れれば大体わかるので、説明で知らせてしまうのは無駄であり、美しくありません(文献より。語るな魅せろ)


・このあと夢で回想し、光との出会いが語られます。ですがこの時点で結構情報過多なので、光と出会った時や、情報を小出しにしていくと良いと考えます。

 すると、光と言う少年は何者なのだろう?と言う読者の興味をひき続ける事も出来ます。焦る気持ちは分かりますが、



>「数十年前の、この世界へのビーストウォリアーズ侵攻の際、我らを裏切り人間側についた忌々しいライオン獣人の男と人間の女との間に生まれた存在。それがお前だ。強さを示し組織に身を置いているとはいえ、裏切り者の獣人の血と脆弱な人間の血を引くお前は組織の邪魔者、面汚しでしかないのだからな! 」


 また同じ説明を会話で繰り返しています。さらに、普通に会話をしていたらこんな不自然な喋りになりません。特に敵の獣人はキャラクターと言うより情報を喋らせる機械になっているので、ご都合的に映り良くありません。



・このあとブレイブレオは心を入れ替える訳ですが、いきなりなので説得力に欠けます。理由は十分理解できるので、心理描写をもう少し丁寧に書いてからの方が納得いく展開にできたと考えます。

 キン肉マンの悪魔超人も勝手には善人にならず、正義超人にボコられる必要があるのと一緒です(わかりにくい)。



>力のあるものが戦えるのは当たり前だ。だが、力の無いものが戦うのは強き心と覚悟の表れ


 王道ですが、たまにこうして心に刺さる言葉があるので驚きます。作者様が本当に伝えたい事なのだと思います。



>これで、もう後戻りはできねぇ。


 総論で言うのを忘れましたが、キャラクターが非日常に行く時は「後戻りが出来ない状況」に陥るのがセオリーです。まさにその展開になっていて、物語の構造はやはり素晴らしいと感じます。



>受け入れられなくてもいい、わかってくれなくてもいい。


 この時点ではまだ完全に孤独なヒーローなので、強がっている事がわかります。強がっているなんて言ったらゴウキはキレそうですが、この後光の言葉が響く後押しにも見えます。






●第二話


>「知らないね。俺は首領の命令でそこのガキ共を組織の科学者達の元へ届けようとしているだけだ。その後、ガキ共がどうなるかは知らん。組織の科学者連中のことだ。人体実験にでも使う気か、それとも単純に我らの食料にするつもりか」


 ここもめちゃくちゃ不自然です。

 「知らないね」の一言だけで、後は地の文で獣人の舐めた態度を描写し、ゴウキが「許せねぇ!」と言う流れで十分です。悪の組織の科学者の所へ連れていかれたらどうなるかは子供でも何となくわかります。



>力があるやつが戦えるのは当然だろ?


 この真っ直ぐさがブレイブレオの良い所ですね。力があっても戦わない、汚い奴は大勢いるのに、そんな事を微塵も思っていない感じが好感を持てます。


>俺は半獣人だからって自分から逃げたりしねぇ。自分が半獣人であることを恨んだりしねぇ。


 ここはタイガーとの対比になっていますね。彼の場合自分の運命を呪っているのに対し、ブレイブレオは真っ直ぐに戦う。ライバル(?)は同じ境遇なのに逆の考え方をしている良い例だと思いました。



●第三話


>他人を交通事故から助けて亡くなった男を夫にもっていた彼女は、危険や面倒事は避けた方が良いという考えを持つようになったのである。


 作者様は過去を説明で淡々と語ってしまう癖があるようなので、出来るだけ控えた方がいいかもしれません。あとからなんとなく察する方が粋な演出になります。

 それは置いておいて、お母さんも自分なりの信念から子供を守ろうとしている姿は見ていて気持ちが良いです。ここでは光の壁となっていますが、読者的にはどちらも応援したくなる感じに映るので。



>「あっ、やべぇ、バイトの時間が。そろそろ、出るか!」


 こう言ったコミカル路線で行くのもありだと思います。ちなみに何のバイトなんでしょう。コンビニか、工場っぽい。

 バイト先で獣人が出るなんて展開もありですね。


>「ゴウキおじさん、こんにちは!」

>「ああ!!」


 同じアパートかーい!

 と、誰もが思うでしょう。面白い。最初の小学校が何故光の通っている所か分かったのも、これが関係しているのだなと補完出来ます。

 さらにここは伏線になっているし、物語的に意外性があって良い設定ですね。



>人間風情に教えたところで何の意味も無いだろうが、殺す前に教えてやろう! 


 普通教えません。ご都合的過ぎます。

 不自然な会話で教えてしまう方法は物語において本当に良くないとされます。ニュアンスや小道具などを使ってさりげなく伝える事を心がけた方が無難です。



>「……約束は守りてぇが、てめぇは俺の正体を知っちまった。だから、お前には消えてもらう」


 元悪党だとこういう事しても違和感ないですね。そんな設定を活かせて行けたらよりキャラが立つ気がします。



>一瞬のうちに間合いを詰めその剛腕でキリン獣人の腹をぶち抜いたのだ。


 毎回戦闘はこれくらい短くても良いような気もします。あまり長くても技の応酬だけな時もあるので……。



>「半端者……め! よくも……我らの…………計画を! だが……あのガキ……半端者のやつを……えらく……慕っていた……よう……だったな。半端者も……あのガキに……わずか……だが……思い入れが……ありそうだった。あのガキを……使えば……奴を……倒せるかも……しれん!」



 ここも説明が過ぎる上に、三点リーダーで瀕死を表すにしては長すぎます。

 死ぬ直前にここまで喋ると余裕がある感じが出るので、喋らなくて良いです。ただ憎悪と恨めしい気持ちを目線に鋭く宿して、光を睨みつける。それだけで意味深になります。

 そして、そこで終わってください。それが伏線となり、誘拐された時に「あの睨みはそう言う事だったのか」と読者は納得します。先程その場で全部説明しない方が良いと書いたのも、こう言った場面で面白さが発揮されます。



●第四話


 冒頭のゴウキの悩みは心の変化も見れて良いですね。総論で言ったシークエル(ジレンマ、決断)に当たる部分ですが、こういう演出は上手いと思いました。



>「ライオンのおじさん、助けて!」


 何気に初めて、ヒーローとして「助けて」と言われた気がします。

 中々感慨深い場面だと私は思いました。ブレイブレオはそれどころじゃないでしょうが、ちょっと感銘を受ける様子があっても良かったかな、と個人的には思いました。



>「では、私はこの子供を連れて行きます。後は頼みましたよ、鷲獣人」


 ここで盛大な疑問が浮かびます。

 光を人質にブレイブレオを殺す事が出来たはずです。そうしなかったのは何故なのか、さすがに説明がつかないのでここは設定の練りが甘いと言わざるを得ませんでした。

 整合性を考える前に、作者様がやりたかったことを優先させてしまった結果と考えます。



●第五話


 冒頭部分、やはりゴウキの心情が説明と言う形で語られてしまうので、勿体ないと感じます。

 このキャラは今どんな気持ちなのだろう、と言うのを想像するのも小説の醍醐味なので、説明しすぎてしまうのはシリアスな雰囲気の興を削いでしまいます。



>「彼は私にとっては卑怯者です!!」


 心の支えを奪われた上、一番言われたくない事を投げつけられる主人公。落とし方が絶妙ですね。再起不能までは行かないものの、かなり落ち込ませる程度に困難を与えています。



>人間の世界に破壊者としてやって来たビーストウォリアーズの戦士達には、末端の下級戦闘員に至るまで獣人の世界への帰還の際に使うある物が支給されていた。クマ獣人の見せた組織の科学者が開発した空間転移の力を秘めた鍵状の物体である。この鍵の力を使えば、1つの鍵につき1度だけ対象となっている1人を別の世界に転移させることができた。


 コピペかと思うくらいに、以前とほぼ全く同じ説明が出てきています。ここは全てカットした方が無難です。

 


>「光、すまねぇ! もう少しだけ、待っててくれ」


 光の為、人に認められたい、と言う思いだけでしたが、この辺から「ヒーロー」としての自覚が芽生えていますね。このタイミングでこのシーンを出すのはバッチリだと思いました。



●第六話


 この展開はちょっと油断してました、予想出来なかったです。敵地に乗り込んで何だかんだ倒すんだろうな、見たいに思っていたらまさかの……。

 ここで大事な存在と戦わなければならないと言うのは信念的にも面白いですね。光の心の葛藤も同時に描けているので良い演出だと感じました。



>「な、なんで、なんで逃げないんだよ!!」


 ブレイブレオが光に思った事を、そのまま思わせる為に体を張ると言う、熱い展開です。やはりこの二人は似ているなと思います。



>「おじさんも、いじめられてたの?」


 ここで「あ~なるほど」と唸ってしまいました。

 強い力を持つ主人公も持たない光もある意味「いじめられている」事により、腕っぷしがある事だけが強さではないと言う事の説得力が物凄いんですね。

 ブレイブレオは心の強さを求め、光は物理的な強さを求める。互いが欲しい物を持っていると言う中々にグっとくる演出です。



>「そんなお前は、俺にとっては支えであり『友』なんだ」


 ここは完全に主人公が成長した事が分かる良い台詞だけに惜しいな~と思います。

 この一つ前のシークエル部分、光が拉致されて悩んでいる時に「そうか、俺にとってあいつは友なんだ……!」と気づくシーンがあるとより感慨深いシーンになると思いました。



>「半端者の命懸けの説得で、憎しみとは相反する強い親愛の情が芽生えたためでしょうか? 完全に細胞が変化しきる前に変化途中だった細胞の大半が人間のものに戻ってしまったようですね」


 この前後にも長い説明があって、感動が興ざめしてしまいます。細かい説明はするとしても後で(と言うか言わないでよい気もします)、とりあえず今はブレイブレオの熱い気持ちが伝わった、と言う事にしておいてよいと思います。



・この後正体がばれてしまいますが、遅すぎず、早すぎず、と言った感じで二章に繋がるので上手いですね。

 正体を隠している系のお話はバレない様に最後まで行くようにする展開もありますが、この作品はバラす方向でもまとまって行くので、これはこれで全然アリです。



>「ハハッ、俺も弱くなったもんだな。涙が、止まらねぇよ」


 何か小気味良いオチが付くと尚良かったですが、それでも一章はかなり綺麗に終わりました。構成の出来としてはほぼ完成されていると言ってもいいくらいです。

 最後は普通に感動しながら読んでいました。



●七話


>腕を組み、友達の誕生日プレゼントに1人悩むゴウキ。


 おっさんが友達(しかも少年)の誕プレに悩むって可愛い光景です、キャラに愛着が湧く描写でとても良い気がします。



>「俺は人間の世界で育ち、人間に迫害されてきた。俺がまだ半獣人としての力をほぼ使えなかった頃、~~」


 ここもタイガーが聞いて欲しかったのかなと思うくらいにめちゃくちゃ長く自分語りしてしまいます。

 読者は既に半獣人が迫害されている事を知っているので「俺は……地球で育ったんだ」これだけで全て伝わります。



>「貴様を助けたのは、万全の状態の貴様を倒さなければ意味が無いからだ」


 これは全く説得力のないご都合的理由です。そもそも万全な状態でなくとも皆倒せていないので、強さを示す云々の前に死体を引き渡せばかなりの栄誉だと思います。完全に意味不明理論です。


 ただし二章で同胞を出すと言うのは読者を飽きさせない良い手だと思いました。これからどうなるんだろう、と言う感じは強く出ています。



>そう言ってゴウキは光に、紐を通してペンダントにしてある3本の鍵を渡す。


 恐らく伏線ですね。三回空間移動できると言う事は、かなり展開を考えられていると思います。この書評を書いている時点ではまだ出てきませんでした。



>「謝ることなんて無いよ。本当は俺、ゴウキおじさんが俺の誕生パーティーに来てくれると思ってなかったんだ。おじさんにそんな時間は無いと思ってた。でも、おじさんは友達として俺の誕生日パーティーに来てくれて、祝ってくれた。それだけで、俺はすごく嬉しかったんだ」


 ここは「謝らなくていいよ……ゴウキおじさん。ほんとに、ありがとう」だけで十分です。あとは描写で魅せましょう。

 人は本当に感動した時は言葉が出ないものなので、喋りすぎると嘘っぽく見えます。



●八話


・冒頭から光が支えになっている事がわかる展開です。彼はこの辺りから博愛な感じを出し、物語に積極的に関わっていきますね。



>「わかり合いたくねぇ訳がねぇ。人間は絶対傷つけさせねぇ。だが、和解の道も捨てねぇ」


 ラップみたいになってます。

 書いてから何度も読み直したりして、言い回しにも気を使った方が無難です。



>「俺やっとおじさん以外にも友達ができたんだよ!」


 もしかしたら後々出てくるかもしれませんが、もし出す予定がない場合この友達は重要なので出しましょう。ラストに少し出るだけでも大丈夫です。出さないとご都合的に映る可能性があります。


 そして心の支えになった存在をすぐに葛藤要因にさせる方法は上手いと断言できます。冷静に見ると王道なのですが、中々難しい事をやってのけていると思います。



>「良かった、ブレイブレオが来てくれたぞ!!」


 さらにこのタイミングで人々に認められると言うタイミングの良さ。主人公的には複雑だろうな、と言う事が伺えます。

 しかもこの後主人公は嫉妬に悩むわけですが、その前にこの戦闘を入れる事によりかなりテンポよく読めます。時間を置いてジレンマを描く事で余計に悩んでいる事を示せるわけです。素晴らしい!



・後半の蝙蝠と首領の会話は……引用しませんが、やはり説明が目立ちます。



●九話


>「光……俺を……見捨てる……の……か?」


 力で勝てないので精神攻撃で来ましたね。読者もそろそろ肉弾戦は見慣れて来た所だと思うので、良いタイミングな気がします。



・この戦いで主人公は「相手を信じる」と言う事を学びます。知らぬうちに真の強さを光から学んでいっているのが上手い構図になっています。



>「貴様はこのガキを危険に巻き込まないために、各地を渡り鳥せざるを得ないだろう。その間、このガキが獣人に襲われたら俺が守ってやろうというのだ」


 またタイガーのよくわからない理論です。光の存在はバレている(と現時点では思っている)ので各地を飛び回るより傍に居てタイガーと共闘した方が遥かに安全です。道理の通らない事を口走っています。

 ここも作者様がやりたい展開を優先した結果、辻褄が合わなくなったのだと予想します。



>「ビーストウォリアーズが壊滅すればまたいままでのように暮らせるさ」


 と言う訳で敵組織が壊滅するまでタイガーは光を守り続ける事になります。万全な状態で戦う時には既に認めさせる組織は無くなっている訳です。タイガーが絡む場所は必ずストーリーが破綻しています。

 他が上手いだけにかなり勿体ないです。



●十話


>自らの右手の掌を見つめるタイガーアベンジャー。(そう、この手で……)

>自らの右手を見つめていたタイガーアベンジャーの目には、自身の右手が徐々に血塗られたものに見えていた。その途端、フラッシュバックする過去の記憶。

>(死なないで!!)(あなたは……悪くない! だから、いつか……)(人殺しの化け物!!)

>目を固くつぶり頭を振って再度、自らの右手を見つめるタイガーアベンジャーの目に~~~



 これ端折って引用してません。右手を見つめすぎです……。

 書き終わった後に自分の文を読み直していますでしょうか。読みなおした上でこの違和感に気付かない場合は、小説を書かない素人の方でも良いので一度誰かに読んでもらってから投稿する方が良いように思います。

 珍しく過去が説明されない場面で、しかも何故か協力するタイガーの気になる場面だったので、かなり勿体ない書き方になってしまいました。



>彼はその言葉を歯牙にもかけないというふうにフンッと鼻を鳴らし、そっぽを向く

「別にお前の為にこんなことをしているのではない。」


 タイガーってツンデレなキャラですよね。ドラゴンボールのベジータを思わせます。



>「どうせ貴様もいつか奴を裏切るのだろう?」


 つまりタイガーは過去に裏切られた経験がある訳です。ゴウキは迫害されて来たものの裏切られると言う経験は無いため、ある意味タイガーの方が辛いかもしれませんね……。



>「半端者にしてはなかなかの力ではないか!」


 敵はちょくちょく「半獣人は弱い」旨を知らせる台詞を吐く訳ですが、ブレイブレオもタイガーも負けた事ないんですよね。

 半獣人は世界に二人だけしかいないかも、と主人公が言っているくらい少ないので、何故獣人全体にそのようなイメージが付いているのかの説明がいるような気がします。

 いや確かに弱者の血が入っていれば弱くなると思っても仕方ないのですが、実際はビーストウォーリアーは負け続けているので普通なら「半獣人めちゃくちゃ強くね?」と言う情報が横行しているはずです。



●十一話


>「ライオンのおじさん、虎のおじさん、もう止めてよ!!」


 ここが思いきり破綻しています。

 いきなりブレイブレオとタイガーが戦ってるんですが……何話か投稿ミスってませんか?と言うくらい超展開です。

 これでは主人公が各地を回っていた意味がなくなります。何だったんですか、もう敵の組織は壊滅させたのですか……?

 タイガーと光を二人だけにするためのご都合展開でした、と言う事が読者にバレています。二章の破綻はここが一番ひどいので、やはり書き直すレベルかと思います。



・ここで謎の獣人が出てきますが、超重要な場面に新キャラを出して解決させるのはせめて一回にするべきです。タイガーの時は序盤ですしギリギリ許容範囲ですが、二回目となるとただのご都合主義になります。


>「味方かどうかもわからねぇ獣人を信用はしねぇ。格上の炎使いだろうが~~


 との事なので、多分ブレイブレオの父親なんですかね。あまりにもストーリーが王道過ぎるとそんな所まで予測できてしまいます。



●十二話


>「コウモリ獣人の言った通りだったな!!」


 ここから七行に渡って、聞いてもいないのに街に罠を張った方法とその理由を説明しだします。これも、必要がないので全てカットする方が無難です。

 読者がどうでもいいと思う物、ストーリーに直接関係ない事は基本的に記載しない方が良いらしいです(文献より)。



●十三話


・ここは前の戦闘のシークエル部分に当たる訳ですが、シークエル中にシーンを入れると臨場感が増すと言う方法があります。それをここは利用できています。

(例えば紛争地帯で戦友が死んだことを嘆いている最中に、再び戦闘が始まる等)

 気持ちの切り替えが出来た瞬間、獣人が襲ってくるので同じ効果を生み出していますね。



>「炎使い、私はこの水使いを蝕んでいる毒を自身の能力で除去することができる」


 さすがに……都合よすぎですね。伏線がないと納得のいく展開ではありません。上手く行きすぎる展開は読者を飽きさせる可能性があります。



・今回のピンチも謎の助っ人に助けてもらう訳ですが、そろそろ主人公が自分の力で最大のピンチを乗り切る展開が欲しい気がしました。



・この二人組の敵はかなり重要な敵でしたね。死をもって主人公に新しい葛藤を与えると言う役割を持っていました。


 こんなにたくさん敵を倒しているのにも関わらず、その戦闘に、物語的に「戦った意味を残す」のは定石通りで素晴らしいと思います。





 各論は以上です。



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3、作品の強み(弱み)や個性だと思う所(主観多め)


・これは感想になってしまうのですが……正直に言わせてもらうと日曜の朝にやっている小学生が見るような特撮物を見ている気分で、安っぽさが悪目立ちする文面です。

 ですが……読み続けていると、その安っぽさは全然ぬぐい切れないはずなのに、何故か心が揺さぶられます。

 冷静に考えれば超ベタベタな王道展開なんですが「心から書きたいものを書いている」と言う作者様の熱なのか、真っ直ぐすぎるキャラのせいなのか、いつの間にか感情移入して感動すらしていました。

 「友達」だの「絶対に守る」だの、綺麗毎を信じていられる子供が掲げるような台詞なのに、妙に心に響いて来る作品でした。こう言う純粋な物に感動できる自分が居て、ちょっと安心しました。


・王道ストーリーで面白いのですが、もう少し捻りが欲しいなと感じました。


・ちょっと伏線が少ない印象を受けました。余計なお世話かもしれませんが、この企画の第八回に読ませていただいた小説が伏線お化けだったので、参考にリンクを張っておきます。


「人狩り」 / なはこ 様

https://kakuyomu.jp/works/1177354054886646530


その解説をした書評です↓

https://kakuyomu.jp/works/1177354054894635885/episodes/1177354054894814730



―――――――――――――――――



 以上です!


 作品の題材、文章の勢い、あらすじはなし、プロフもなし、男らしく潔いです。

 恐らく作者様がそう言う真っ直ぐな性格なのだと思います。好きな言葉は一撃必殺って印象を受けます(意味不明)。

 俺はこう言う物が書きたい、と言う情熱はひしひしと伝わりました。人情に熱い主人公にそれが現れていますね。

 ヒーローものは激熱にしやすいですから、このまま書き続ければ化ける可能性は十分にあると思います。是非頑張って欲しいです。



 再び申し上げますが、素人の分析や評価なので……気に食わない所があったら「高田はわかってないな……」くらいに思って頂けると助かります。


ネガティブ様、素敵な作品をありがとうございました!





 次の第回は、油布 浩明 様の「三界の魔術師」を拝見させて頂きます。

 

 

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