第9回 春という季節には…? /  ❅銀花❅ 様

※イベント内容にもあるようにこれは「分析→評価」の結果であり、決して作品を否定している訳ではないのでご了承ください。


春という季節には…? /  ❅銀花❅ 様

https://kakuyomu.jp/works/1177354054894577618



※今回は作者様が執筆活動を始めたばかりと言う事で、あんまり突っ込み過ぎた分析評価はむしろ混乱を呼ぶと判断し控えさせて頂きました。

 プロット以前の基礎的な小説の書き方に関する事はこの企画の趣旨に反しますので書きませんでした(ちょっとしか)。

 今回は短めになりますが、全く手は抜いていないです。


※短編集との事なので各話が複数投稿と見なし、第一話だけ読ませていただきました。



―――――――――――――――――――――



1、物語の総論


・ターゲットは

 「年齢問わず。ちょっと不思議でほんわかするショートショートが好きな人」

 と判断します。



・簡単な要約

 「心に寂しさを抱える主人公が母との絆を取り戻す物語」

 本文自体は短いですが、こんな感じかと思います。



・主人公の神崎風花を見て行きます


欲しいもの、やりたい事

 外面上、おつかい

 内面上、母との絆。


 物語は基本的にこの欲しい物を求める為に展開します。この作品ではおつかいを理由に主人公は行動を始め、夢猫館にて旅をし、最終的に内面上欲しかった母との触れ合いも手に入れます。

 母親ともっと一緒に居たい、と言う高校生らしいわかりやすいキャラクターなので、何の疑問もなくストーリーに集中できました。

 これが母とは過去に色々あって云々……だとショートショートでは複雑すぎるし、キャラの把握までが面倒なので、主人公の性格選びはグッドだと思います。


・目的に向かって行動を起こす際、大抵は主人公の思い通りに行きません。その壁になるのが所謂「敵」です。そしてその敵と戦う事が物語上でのシーン(場面、出来事)になります。

 この作品の場合は明確に分かりやすい敵は出てきません。あえて挙げるなら母やお店に握られている夢を自由に見る権利だと思いますが、出来ればもう少しわかりやすい主人公への試練を与えてあげるといいかもしれません(母とのすれ違い、夢の続きを見るにはお店が出す条件をクリアしなければならない、等)



・物語には主人公へ協力してくれるキャラクターが現れます。(勿論いなかったり、たくさんいたりします)

 協力と言っても色々あり、無条件で協力してくれるボランティアみたいなキャラはあまり出てきません。大体は等価交換と言うか、主人公が何かを与える事により、相手が何かをくれると言う場面が多いです。与えるのは意識的でも無意識的でもどっちでも構いません。

 (何か、には知恵だったり乗り物だったり力だったりお金だったり、はたまた命だったり、作者の発想次第で様々あります)


 この作品だと、主人公はお店に対し何かを与えたりはしていません。その代わり第三者の「母」が依頼をすることにそれが達成されています。

 お店→ ←主人公

 ではなく、

 母→お店→主人公

と言うちょっと珍しい構図です。ですがこれでも「母は愛情の為に」お店に対価を支払っているので、整合性的には全然オッケーです。



・物語は基本的に、主人公が日常から旅に出て、非日常から帰って来る構造になっています。

 この作品も主人公が過去へタイムスリップし、戻って来る、その結果内面の成長を遂げている(母との和解)と言う物語の原形をきちんと成しています。


 さらに定石としては非日常の中では主人公への制約などがある物なのですが、この作品で言うと子どもに戻ってしまっているので上手く行動が出来ない、と言う所ですね。

 

・最終的に主人公は何かを得ることになりますが(この場合母との和解)、それと対価に何かを失う事になるのが一般的です(少年漫画でよくある、仲間が死ぬ事で新しい力に目覚める、みたいな)。

 ここでは明確に失うものはないですが、こじつけ的に言えば母を理解しようとしなかった古い自分(価値観)を捨てる事が出来た、と言う感じでしょうか。



・四部構成(起承転結)、三部構成(序破急)とありますが、一応わかりやすく起承転結で見て行きました。


起、夢猫館の猫に出会うまで

承、過去の思い出を巡る

転、母の想いを知る

結、母との和解


 と分析しました。

 それぞれきちんと分かれているのですが、「掴み」と物語がガラっと変わるはずの「転」が少々弱く感じます。

 掴みについては、これはショートなのでかなり短い間にグっと読者の心を掴まなくてはいけません。それで言うと、復讐劇である二話の方が掴みは良いですね(軽く拝見しました)。

 転は正直あってないような感じでしたので、もっとインパクトが欲しい所です。夢の中で母が死んでしまうとか、それで母の大切さに気付く……と言ったような。読者がドキドキハラハラする展開を想像してみてください。

 あと、掴みと同じぐらい大事なのがオチです。これは長編短編に限らずですが、特にショートショートは「オチ」がかなり大切なので、誰もが唸る様なオチを是非練ってみてください。この作品ではオチがなかったので、それを加えるだけでさらに面白くなると思います。


 掴み、オチ、起承転結の無駄のなさ、読者の飽きさせない巧みさ、文章の上手さに関しては教科書のような作品があるので、そちらがかなり勉強になると思います。一度読んだ後に、私の書評も読んでみてください。(宣伝)

 その作品と言うのが、この自主企画の第五回で読ませていただいた物です↓


「その涙さえ命の色~ALIVE~ 」 猫柳蝉丸 様

https://kakuyomu.jp/works/1177354054893946954




・作者様は書きはじめとの事でしたが、ストーリーの破綻もなく、無意識に物語の構造を掴めているので、あとはキャラを掘り下げたり少し複雑な展開にしていけばもっと面白いものが容易に作れる可能性があります。

 夢猫館は設定を練れば長編にできそうな題材だと思うので、そっちで挑戦してみてもいいかもしれません。

 夢猫館を主人公にして、毎回訪れる人が変わる……って言うのが書きやすそうなストーリーですね。



・地の文などについては会話での説明が多いように思うので、それを描写で示していけると良いと思います。

 例えば夢の中での母の台詞ですが、

「いきなり走り出してどうしたの!?」

 ではなく、

 地の文で走った事を描写した後「どうしたの!?」と言う方が違和感なく読めます。


 物語に出てくるものはほんのちょっとの物でも全てが関係ある必要があります。

 そう言う意味で、これは物語になぜ必要だったかを考える、もしくは物語に設定として落としていく必要があるなと感じた物を以下にあげます。

 そこ?細かいよ!と思うかもしれませんが、理由があれば説得力と完成度は間違いなく増します。


何故「猫」である必要があるのか。

夢に入る手段が何故薬なのか。

夢猫館は何者なのか(目的は何なのか)


 これだけでもしっかり伏線を張って示せて行けるとより良い作品になるかなと思いました(とは言いつつ、ショートショートでは難しいかも)。

 夢猫館の店長(?)の異質な感じをもう少し出せると良かったかもしれません。




 総論は以上になります。



――――――――――――――――――



2、各論


・最初の四行ですが、ここは掴みの部分なのでできれば過去に入る回想と言うより、猫夢館で迷っているところなど、読者の興味をひける場所が良いと思います。




>ではこちらの薬を飲んでください。


 ファンタジーなお話なので、夢への導入も現実的ではない方が良いかもしれません。薬だと一気にリアルと言うか、オリジナリティもないので。

 例えば猫ですから……夢猫館特性人間用マタタビ、みたいに関係する物の方が面白いかもしれません。

 (普通の人間なら使用を拒否すると思うので、店長が無理やり飲み物とかに仕込むとかが自然かもしれません)



>店員さんはなんでそんなに嬉しそうなんだろう?


 店員が笑う箇所が二か所あるので、主人公が「嬉しそうですね」的な事を言って、店員に猫夢館の目的を一言でも良いので喋らせるのもありかもしれません。

 作品の雰囲気に彩りが出ると思います。




 短いですが、気になった所は以上です!


―――――――――――――――


3、作品の強み(弱み)や個性だと思う所(主観多め)


・ストーリーは破綻していませんでしたが、ありきたりでした。ひとひねり、何かあると良いですね。


・情景や心理の描写不足を補った方が良いと思います(なくても良いですが、あるに越したことはないので……)。


――――――――――――――――


 以上です!


 作品をお見受けするに純文学やミステリーが好きそうなので、そっち方面も見て見たいなと思いました。ミステリーはちょっと敷居が高いですけど……。


 重ねて申し上げますが、素人の分析や評価なので……気に食わない所があったら「高田はわかってないな……」くらいに思って頂けると助かります。


 ❅銀花❅様、素敵な作品をありがとうございました!





 次の第回は、ネガティブ様の「ビーストウォリアー」を拝見させて頂きます。

 

 

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