第13回 夫君殺しの女狐は今度こそ平穏無事に添い遂げたい ~再婚処女と取り憑かれ青年のあやかし婚姻譚~ 綾束 乙 様 前編

※企画内容にもあるようにこれは「分析→評価」の結果であり、決して作品を否定している訳ではないのでご了承ください。


「夫君殺しの女狐は今度こそ平穏無事に添い遂げたい ~再婚処女と取り憑かれ青年のあやかし婚姻譚~」 綾束 乙 様

https://kakuyomu.jp/works/1177354054890082907


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1、物語の総論


・ターゲット


「中華もの+妖怪もの+恋愛ものが好きな十代、二十代の女性」


 と判断します。

 キャッチコピーとあらすじに偽りなしですね。


 いきなり余談ですが「arcaea」と言う音ゲーの「inkar-usi」と言う曲がイメージソングとしてぴったりな気がします(わかりにくい)。youtubeで聞いてみてください(ステマではない)



・簡単な要約


「訳ありの過去を持つ主人公が心を閉ざす夫と向き合い、互いの未来を切り開いていく物語」


 と要約させていただきます。ラブストーリーとしては明快で素晴らしいです。


 ただこうして物語全体を一行で要約すると、ちょっとだけ危険な所が判明します。

 それが何かと言うと、主人公が自分の目的を達成する為に必死に何かを掴み取る……と言う物語ではない事です(それが完全に不利と言う訳ではないのですが、盛り上がりに欠けてしまう欠点があります)。

 そしてこの書評全体通じてちょくちょく出てくる課題なのですが「主人公は誰なのか」と言う事を意識して書く事が必要なのかもしれないと感じました。



・テーマ


 「信」、「絆」または「ちょっと歪な愛情」


 だと思います。

 信は「信じる」と「不信」、両方の意味を込めて漢字一つにしました。あとその方が中華っぽいかなって(それはいらない)。

 榮晋は途中から自分の不信心に苦しみつつ、香淑を突き放します。しかし香淑はそんな夫を嫌いになりきれず、聖人君主のレベル(言いすぎ)で信じ続けます。その結果、自分の望むものを手に入れる事が出来ます。

 晴喜、道玄も榮晋の良い所を知っているが故、ちょっと拗らせている行動をしても関係にひびが入る事はありません。呂萩も彼を(家を)疑わず尽くします。こう考えると、榮晋は境遇こそ過酷な物の、香淑と違って周りにむちゃくちゃ恵まれていますね。その二人の対比にもなっています。

 余談ですがその状況は香淑に耐えられても、榮晋は耐えられない気がする(メンタルは女性の方が強い……)。

 ちなみに各論で後述しますが、媚茗も「信じる」と言う事に関わっています。


 「絆」はこの作品では人も妖怪も、媚茗含め、それぞれの感情や縁で繋がれています。主要キャラでは唯一自己本位的な物で繋がっていた媚茗だけが物語から排除される形になりました。


「ちょっと歪な感情」については現代と若干価値観が違いますが、メインの二人、そして妖怪の二人が身をもって呈しています。タイミングが合わなければ媚茗の一人勝ちだった訳で、善も悪も正義も不正も、幸せになるも身を亡ぼすも、運や状況次第と言う……。



 テーマは各キャラクターの信念に通ずるものや、表現の端々、クライマックスに現れる事が多いです。

 実はこの作品の場合、これ!と言う物がわかりにくく、または特にないのかもしれないと考えました(細かい事よりとにかく私の考えた面白い恋愛模様を見ろ!と言う熱で書かれた作品)。

 テーマはなくても構わないのですが、あった方がキャラの方向性や物語の軸がぶれにくい、深みが増すと言うメリットがあります(あるのに読み取れていなかったら申し訳ないです)。



●物語全体のテンポが悪く感じました。主な原因は二つ。


1、序盤(せめて全体の25%くらいまで)で物語の明確なゴールが示されていない為と思われます。

 これが示されていると着地点を明確にできるので、困難(物語の山)も作りやすくなり、キャラを焦らせスピード感も出せます。一応、ゴールっぽいものはぼんやりと出ています(榮晋に添い遂げたい)。が、その為の波乱の種類(壁)が少ない、もしくはその壁が弱い傾向があります。

 例えば榮晋に添い遂げるためには絶対にこれをやりたい!(もしくはやりたくない!)と言う明確な何かあれば良かったかもしれません。そしてそれを色々な物が邪魔をする。

 香淑の不遇な設定は物語的な枷ではありますがキャラの壁と言う訳ではないので、それを絡めた彼女の困難にもう一工夫欲しいと考えます。



2、視点が頻繁に変わる。


 視点が変わるとその都度ゼロスタートになり、スピードが落ちます。快速が各駅になる感じです。

 例えばマフィア同士の麻薬の取引があったら、取引のシーンをすぐに終わらせささっとマフィアを捌けさせるべきで、これを途中で分割させてしまうとスピード感やそれまでの情緒やスリルは全て失われてしまいます。ドラマの最中にCMが入るようなものです。

 勿論、香淑が暴漢に襲われた時のように明確な引きを作ると言う目的があれば採用しても問題ありません(これもやりすぎるとくどいので注意です)。

 せめて一つの場面をしっかり終わらせてから視点を変える方が無難と考えます。これはテンポ感のほかに、各シーンには目的があるのでそれを分散させるのは得策ではないと言う理由もあります(文献より)。

 

・余談ですが視点が頻繁に変わる場合、物語を安定させる事が難しい為「最終的に何が見せたいのだろう」と言う疑問が浮かび、読者が迷子になる可能性があります。


・更に更に余談ですが、目的が明確でない→困難が用意しにくい→主人公の活躍の場が必然的に少なくなります。

 さらに頻繁に視点が変わる事がそれを助長し、主人公の主人公らしさが薄かったように思いました。

 


●物語の構造を見て行きます。今回は文献のヒーローズジャーニーを引用します。


日常の世界……家を出て、榮晋の元へ(まだ今までと同じ運命)

冒険の誘い……殺して欲しいと言われる。

冒険の拒絶……それを作中通して拒否。

賢者との出会い……晴喜との出会い、榮晋の本当の姿がチラ見え。

第一関門突破……決定的な物はなし。

仲間、敵対者/テスト……直接的な仲間は狐空。この場合の敵は叔父上や媚茗であり、暴漢に襲われる(後述しますが、榮晋も敵です)。

最も危険な場所への接近……明確にはないですが、物語の転換となる部分なので榮晋的には香淑が人間だとわかる所でしょうか。

複雑化……なし。榮晋的には媚茗をどうにかする手段がなくなり絶&望。

最大の試練……打倒、媚茗。

報酬……無事倒し、榮晋を救う。

帰路……なし。あえて挙げるなら狐空が居なくなる事(お腹の赤ちゃんが居なくなる)。

再生……なし。あえて挙げるなら再び子供に恵まれた事。

帰還……榮晋との幸せな生活。



 こんな感じかと思われます。

 上記の榮晋が関わる所は本来香俊にとってのシーンとはっきり言えないので、報酬の所はグレーゾーンです。明確にはない部分も含めると、大分定石からはズレている形になります(それが悪い訳ではない)。


 例えば第一関門では媚茗と直接関わらせて、榮晋を取り合う形にさせると物語も分かりやすくスムーズに進みます。

 帰路、再生、帰還の例を挙げると、ちょっとベタですが、

帰路……媚茗の呪いか何かが残っていて、香淑に襲い掛かる。

再生……皆が何とか助ける(序盤にその「助ける方法」の伏線があるとエレガント)。

帰還……香淑を救い出し、無事ハッピーエンド。

 こんな感じです。

 この部分はよく見られる展開で、ホラー映画で倒したと思ったゾンビが実は生きていて最後の悪あがきで襲い掛かり、ギリギリ避けて倒す。みたいな感じです。あってもなくても良いんですが、あった方が確実に盛り上がります。


 こうして見て見ると、どうも榮晋を主人公に据え置くとしっくり行く気がしました(困難や壁、葛藤、報酬が全て描かれているので)。

 香淑の活躍が余り無く、主人公感がないのは榮晋に重きを置きすぎているからかもしれません。



●メインの二人について


 キャラには欠如(加害)があり、その回復(逃亡)の為に物語は動きます(文献より)。


・香淑


外面の欠如(加害)→榮晋を知りたい、添い遂げたい。家からの迫害

内面の欠如(加害)→過去に夫が三人死んでいる


 と判断します。

 酷い扱いを受けつつも、何とか彼を理解しようと努める主人公。それは内面の欠如である「四度目でマジで後がない」と言う必死さと、一番最初に目撃した榮晋の苦しそうな目を見て「今までの男とは違うのでは」と言う希望もあった訳ですね。そこは説得力があります(超絶イケメンだったと言うのもでかいと思われる)。

 時代的な価値観もあると思いますが、最初の夫に榮晋の如く振る舞われたら「酷い男……」となるのが普通でしょう(最初の夫の方が遥かにクズだけど)。


 外面の欠如を徐々に回復しつつ(榮晋の心を開きつつ)、最終的には過去のトラウマを乗り越える事実を手に入れます(乗り越える詳細な描写はない)。同時に実家の確執も解消されたようなものですね。外面、内面、両方の目的が達成されます。

 完全なハッピーエンドと言う訳です。結構、内面は達成されるが外面は達成されない、みたいな物語も多いので。


 「年上」を活かすと言う意味で、彼女は終始年下っぽく映るのが勿体なく思いました(それはそれで可愛い)。

 せっかく年上設定があるので、こんなに奥手っぽいのに年上感を見せるギャップでドキっとさせる場面があっても面白いと思います。それでラストなんかに「やっぱり君は女狐だな」と照れながら榮晋が言えばタイトルを絡めた粋な締めになる気もしました。

 厳しく言ってしまうと年上設定を活かしきれていない、と考えます。

 

 ちなみに個人的には性に無知で無防備な年上も十分そそる(ただの趣味)。



・榮晋


外面の欠如(加害)→殺されたい(媚茗から生気を奪われている、つらい)

内面の欠如(加害)→媚茗(呪い)から解放されたい


 と判断します。

 香淑や道玄に対し殺されたいと明言し、その願いをかなえようとします。殺されたいとは言いますが「死にたい」と言わないのは、内面の葛藤である「解放されたい

」と言うのが本心だからですね。

 彼自体に問題がある訳ではないので、この内面の問題が解決すれば元の好青年に戻るのは必然と言うか、納得の行く展開です。


 榮晋の場合は殺されたいと言うのは当然達成されず、加害である媚茗からの解放を得る事で両方が達成されます。

 物語の中では徐々に欠如の回復へ向かう事が多いですが、勘違いや性格もあって彼の場合は終盤で一気に回収されますね。珍しいパターンだと思います。


・物語にはキャラクターに逃れられない障害があり、それを枷と呼びます(文献より)。二人にとって共通の枷は「身分」と「憑かれている妖怪」で、全く同じものですね。


・さらに二人は互いに弟と姉がいる設定です。大事にしていた家族と離れ離れになっていて、どこか寂しさや愛しさ重ねていた部分があるのかもしれません。



●敵について


 敵も外面的、内面的の壁として別々にはだかります(文献より)。兼任している場合もありますね。


・香淑の外面上の敵は榮晋です。榮晋からは拒絶されっぱなしで、外面の目的は上手く行きません。彼と結ばれる事で内面も達成されるので、同様に内面の敵も一緒です。この作品では登場しませんでしたが、恋敵が立ちはだかると敵としてわかりやすい気がしました。

 媚茗は殺そうとしたりしましたが、直接にも間接にも壁になるような場面はなかったように思われます。と言う訳で外面上の敵ではないのですが、榮晋を開放するには彼女を倒さないといけないので、内面上の敵ではあります(ちょっとややこしいですね)。あまり見ない珍しいタイプの関係です。面白い。

 暴漢に襲われたのも目的を阻害されたと言うよりかは受動的な被害だったので、物語上の障害とはちょっと違いますね。そう考えるとやはり主人公への困難が少ない印象を受けます。


・榮晋の外面上の敵は香淑、そして媚茗です。殺されたいのに殺してくれない、本性を暴こうとするも上手く行かず……明確な障害かどうかは微妙ですが、敵ではあります。

 媚茗は明らかに加害者なので、わかりやすい敵です。もちろん解放されるための条件なので、内面の敵も媚茗となります。


 こじらせ系なので当たり前と言えば当たり前なのですが、欲しいものが相手同士、そしてその敵も相手同士と言うのは面白い構図ですね。恋愛もの特有な気がします。


※余談ですが、これだけメインの二人に絡みまくる媚茗なので、枷としてだけではなく狐空と同じくらいバックグラウンドがあるともっとキャラが立ったかもしれません。

 主人公達に立ちはだかる悪というのはそれだけで魅力的なので、彼女に人間らしい過去があったらメインの二人に負けないくらいの人気キャラになった事でしょう。彼女はこの物語で敵と言う「役割」の面しか書かれなかったのでちょっと可哀想な気もします(私は媚茗が結構好きなので……)。


・ラスボスについて


 ラスボスは大抵主人公の影の部分みたいなキャラクターであることが多いです。

 香淑にとって媚茗は影の部分とはちょっと違いますが、献身的な愛を貫く主人公vs自己本位な愛を貫くラスボスという構図なので正反対です(献身と自己本位がどう違うかは置いておいて)。

 この関係もよくあるし十分面白いですね(性格が逆だったら斬新でもっと面白かったかもしれない)。

 倒した後は大抵ラスボスを赦せるか、赦せないかと言う選択を迫られる訳ですが、主人公に選択の余地はなかったですね。と言うより、選択権がなかった感じです(あったとしても、赦さない可能性が高いでしょう)。

 もし彼女を「赦す」と言う選択を採用した場合はどうなっていたか。そっちを考えてみるのも面白そうです。



●キャラクターには役割があります。

 この作品はキャラを意図して少なく書かれたのか、非常にわかりやすいです。


 主人公に関してですが、

 榮晋は敵対者であり贈与者(贈与物をくれる人、この場合の贈与は食料や住まい、情報、最終的には愛)や見方によっては賢者にもなります。役割だけ見ると羊たちの沈黙のハンニバル・レクターみたいです。

 晴喜は賢者です。賢者は物々交換で何かをくれるキャラクターです。香淑はお菓子を上げ、彼は「助手」と言う役割として自分を差し出します。

 道玄は媚茗を倒す為の「支援者」(無償で何かしてくれる)です。

 狐空も賢者(命の物々交換)であり、その後は心変わりして「贈与者」になります。


 と言う、主人公があまり関わりを持たないのでめっちゃシンプルです。


一応、榮晋にとって媚茗は敵対者であり、賢者です(生気を貰い、富を授ける)。

 人間に憑りつくと言う性質上、妖怪は賢者になりやすいですね(晴喜は違うけど)。



●物語は主人公が日常から非日常に行き、日常に帰って来ることで終わりを告げます。ちょっと物語の構造と話が被ります。


 主人公のいる日常は実家……と言いたいところですがそれだと最後は実家に帰る事になってしまうので、想像上の新婚生活って所でしょうか。

 で、思いっきり榮晋がそれを否定することで想像とは斜め上の生活が始まる訳ですね(最初に殺されたいと告白された所)。

 この非日常への冒険に主人公は辞退します。で、普通ならその後承認してその依頼を実行しようとするのですが、この物語の場合そう言う訳には行かないので拒み続け、別の提案をします(媚茗を倒す)。

 先程も書きましたが、この部分は世に溢れかえる「物語の文法、構造」の定石とは違うので、。物語の構造が何となく入っている一般の読者達には直観的に受け入れられなかったりするので、もしかしたら自覚はないかもしれませんが、とても勇気ある行動なのです。最高にクール。高田は称賛を送ります。

 話が逸れましたが、香淑は非日常に戻り、元の日常とは違う理想の生活を手に入れます。


・そして目的を達成する為には何かが失われます。物語は失った物の大きさで得た物の大きさを表現しようとします。

 手に入れた物は榮晋、失った物は狐空ですね。つり合いは取れていると考えます。



・各論に入る前に書いておくと、この作品は中盤以降からが本格的に面白くなってきます。勿体ないが故、そして作者様のレベルが高いが故、それまではちょっと辛口が目立つかもしれません。





総論は以上です!


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2、各論


●1


・名前でどんな人物造か想像させるのはよくある手法ですね。強そうな人の名前を鬼塚にするとか。

 そこで全キャラクターに言えるのですが、名前が非常に良いです、イメージにピッタリの名前。作者様が悩みに悩んで漢字を選定したのだろうなと想像しました。



>香淑は自分を慕ってくれる侍女達が憤慨ふんがいするのを、


 夫殺しの異名を持ちつつも慕う人が居ると言うのは、香淑の人柄を仄めかす良い表現ですね。普通ならビビって寄ってこないでしょう。



・この回、中盤なら良いのですが、第一話の掴みも掴みの部分なので、状況説明や心理描写が多すぎる印象を受けました。まずは衝撃的な出会いをさっと書いてしまってから、主人公の御心表明に移る方がテンポは良くなります。


●2


・物語の構造だけで言えばシーンの目的が1と2は同じように思われるので、先ほど書きました説明と心理描写を少し削り一つにまとめた方が良い気もします。

 そして掴みが落ち着いた頃の3で、省いた部分を入れると導入がよりスマートに決まると思います(初夜を心配していい感じに物憂げですし)。


●4


>若い娘では得られぬ柔らかさだな。それに、このあたたかさ……。いくらふれても飽きなさそうだ」


 何気にここはちょっと伏線的ですね。媚茗にはない「あたたかさ」を感じています。三点リーダーで、本人も自覚がないくらいのちょっとした動揺を表現している気がしました。


 しかし殺されるために煽っているとは言え中々辛らつな言葉を吐きますね。それほど追い詰められているのでしょう。



・この回で「殺してもらうため」とカミングアウトを受けます。序盤の衝撃としては良い位置ですね。これ以上後だとちょっと退屈になってしまう気がしたので。



●5


・物語にはシーン(出来事、葛藤)とシークエル(その出来事への反応やジレンマ)があります。シーンの後にはシークエルを用意し、そのシークエルが次のシーンに繋がり……と物語が転がって行くとエクセレントです(文献より)。


 ここでは何が言いたいかと言うと、シーン(出来事)のあとにシークエル(その事へのジレンマ)は確かに起きているのですが、何故か榮晋のシークエルになってしまっている事が不味いのです。

 ここは主人公である香淑のシークエルを先に描くべきでした。このような場面転換の失敗がよく見受けられます。そのシーンを描く目的や、何よりこれは香淑の物語であると言う事を意識した方が良かったかもしれません。

 さらに不味いのは香淑のシークエル前に新キャラ(晴喜)まで出てきてしまうので、一旦香淑にとってのシーンがなかった事にされます。晴喜が出てくると先に彼の話になってしまうので、まずは主人公の葛藤を描き切る事が先決です。

 恐らく読者は作者様が悩みを見せたかったのか、新キャラの説明を見せたいのかがわからなくなり、迷子になります。



 関係ないのですが「桜蘭高校ホスト部」と言う漫画をご存じでしょうか。埴之塚光邦と言うキャラクターがいるのですが、私の中の晴喜のイメージが完全に彼です(ほんとに関係ない)。



●6


・続きになりますが、香淑がおいてけぼりのまま更に新キャラ(媚茗)の紹介に入ってしまいます。このままでは榮晋が物語の主人公に映るので、ちょっと危険です。

 そして媚茗はそれぞれのキャラを掘り下げてからでも間に合う気がするので、登場がちょっと早いかもしれません。



>鉛でできた男でも融かしてしまいそうな甘い響きを持つ声は、


 今更ですが作者様は比喩がとてもお上手。こう言った美しい表現がたくさん出てくるので、つい唸ってしまいます。良い武器をお持ちですね。



>「長年、丹家に取り憑いてきたけれど、あなたほど綺麗な人間は初めて。ふふっ、これが、人間が言う恋というものなのかしら……?」


 ずっと女性を生贄に捧げていたみたいですし、それ本当に恋なのでは?と思ってしまいます。不器用な恋心だったとしたら、彼女の終わり方は中々切ないものがあります。






後編へ続きます!


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