第15回 ダメ仙たちと退屈な僕  /  吉野川泥舟 様

※企画内容にもあるようにこれは「分析→評価」の結果であり、決して作品を否定している訳ではないのでご了承ください。


「ダメ仙たちと退屈な僕」  吉野川泥舟様

https://kakuyomu.jp/works/1177354054894395542


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1、物語の総論


●ターゲットは


「漢詩好きな、十代~二十代前半の男子。ハーレム系ラノベ好き」


 と判断した上で見て行きました。

 漢詩と言う題材は珍しいと思うので、好きな人はすぐ食いつきそうです。逆にちょっと敷居が高いイメージなので苦手な人に読んでもらう機会は減りますが……。


●簡単な要約


「非凡な日常を妄想する主人公がのじゃロリ仙人と出会い、非日常を獲得する物語」


 と、要約します。

 後述しますが、主人公の内面の問題が詳しく描かれなかったため外面の依頼を追うのみの物語です。テーマが面白いだけに、ちょっと勿体ない感じはします。のじゃロリは大好きです(関係ない)。


●作品の命題(テーマ)


「退屈」


 題名にもあるように、これだと思います。主人公は非日常に憧れているし、仙人たちは悠久の時を死ぬ程退屈し、エンタメを求めています。皆が退屈し、戯れを求めている訳ですね。

 余談ですが仙人と言えば悟りを開いたやべぇやつ、みたいなイメージもありますがこの作品では飲食に溺れる仙人が多いです。厳しい修業を積んだと言うよりも人間(詩人)が不死になった事が大きいので、永遠に暇だったら……仙人達の振る舞いは納得いく理由になっていると思いました。

 余談ですが中国の詩人だけだったので、日本の詩人が出て来ても面白いのかなと思いました(六歌仙とか)。


●物語の為に漢詩を用いている(物語メイン)と言うよりかは漢詩の為に物語を用いている(漢詩メイン)部分がちょこちょこありました(特に第1話冒頭、第8話全体)。

 作者様の漢詩に対する熱や圧がめちゃくちゃ伝わってきます。李白の死因の伝説は有名ですね、情緒ある彼らしい死に方で私も好きです。ちなみに高田は酒が好きです(関係ない)。


 ただその愛故に物語的には少々不味い展開が多々見受けられました。

 何が言いたいかと言うと、物語を見せると言う目的より漢詩(中国詩人)の面白さを伝えたい、と言う事が先行してしまったストーリーだったような気がします。愛は盲目です(五月蠅い)。

 それが吉と出るか凶と出るかわかりませんが、漢詩に興味がない人には逃げられてしまう可能性は高いです。もしキャラクター小説、ラノベ小説としてたくさんの人に見てもらいたい場合は得策ではないので、戦略の練り直しが必要と考えます。

(中華ファンタジーって女性向けの後宮や妖怪、男性向けは戦記や妖術が覇権だと思うので、漢詩と言うパイオニア的な部分を狙うなら余計に)



●物語の構造


・プロローグは「あってもなくても別に構わない、できれば要らないもの」とされています。

 書くのであれば少なくとも二つ、抑えておく必要があります。


1、極短く、超重要な情報や伏線をスマートに出す

2、作者と読者、共通の理解が計れる超重要な謎を手短に示す


 せめてこのどちらかを満たしている方が無難です。

 残念ながら……どちらも満たせておりませんでした(結構長い上に専門用語がバシバシ出てくる)。

 と言うよりこの作品の場合はプロローグがなく、プロローグ自体を一話と言う解釈にすれば別にこの問題は関係ないですね。ただ、この書評の一番最後に詳しく書きましたがwebの戦い方としてのミスはあります。


 あと一応、プロローグで一番やっていけないのは、読者に「で、何が起こってるの?」と思わせてしまう事です。その観点だけで見て行くと、この作品のプロローグは興味を引く謎、と言うよりはただ意味不明な感じが勝ってしまっているように映りました。

 読者は我儘なので本屋ならその時点で棚に戻されるし、webだとブラウザバックの可能性が高くなります。

 上記2の「読者に共通の理解が計れる謎」と言うのはちょっとわかりにくいですが、我々の現実世界の常識で理解出来る事をやる方が良い、と言う意味です(勿論例外はあります)。


 ちなみにエピローグも基本的には蛇足になります。

 物語のクライマックスが終わったら、すぐに幕引きすることが大衆に受け入れられる物語においては定石です。

 エピローグを長々と書かなければならない場合、基本的には本文での描写不足や構造ミスと……言う事なので、プロットの時点で失敗している可能性が高いと思われます。



・2話、3話と続いて説明回があります。これは些か危険な構造でした。


序盤の進め方の順番としては、


1、短い掴みが終わり、天地人(世界観、場所、キャラ)を仄めかす

2、物語のゴール(主人公の目的)を知らせる

3、物語を転がす(ゴールに向かう最初のイベントを起こす)

4、細かい専門用語の説明に入る(一気にはやらない)


 どれだけ面白い物語でも説明は退屈に映るので、せめて3のストーリーが始まった後か同時進行が無難です。

 つまり、

こんな物語ですよ→説明

 が定石の流れであり、

説明→こんな物語ですよ

 の順番だと他作品との差別化の判断も遅れる為、読者に逃げられる可能性が高いと考えます。

 余談ですがネームバリューがある作家さんとかはこのあたりそんなに気にしなくても良い(読者に逃げられない)ので、狡くないですか?(ただの愚痴)



・話が進まない。


 起承転結が明確ではない気がしました(と言うより、イベントが少ない?)。これはキャラクター小説だったり、大勢の読者に読んでもらうと言う目的があるとすれば……危険です。


 物語全体の25%くらいまではとにかく物語を、可能ならば主要キャラの感情移入も済ませられる方が無難です。

 細かい説明や世界観の設定などは多少分からなくてもストーリー(簡単に言うと人間ドラマ)が面白ければ読者は勝手についてくるので、まずはお話を進めましょう(と言っても専門用語が多すぎるのは得策ではありません)。


 ※ここで言う物語を進めると言うのは、主人公が目的(物語の明確なゴール)に向かって邁進し始めると言う意味です。

 更に、邁進すると言うその意味は、明確なゴールがあり、それを邪魔する敵が出てきて葛藤し、なんとか乗り越えたら再び敵が出て来て葛藤し……を繰り返しながら主人公が内面的に変化、成長していく過程です。


 この作品の場合、物語の半分を超える7話を終えてもはっきりとしたゴールは出ていません(読者へのゴールの提示は早ければ早い程良いとされます、遅くても全体の25%までに)。

 7話の時点で「主人公が仙人を目指す話らしい。でも何故そんなに仙人になりたいのだろう?」と言うまだ漠然としたゴールです。さらにタイムリミットや主人公を脅かす敵なども見受けられなかったので、緊張感に欠けてしまいました。

 せめて6話の子美襲撃イベント等を桃花源に来てすぐに起こすと動きがあり、テンポも良いかな~と思えました。

 


・物語に贅肉が多い


 ちょっと辛辣な言い方なのですが……。

 物語の本筋に関係ない部分、つまりなくても良い部分が多いと言う意味です。贅肉がたくさんあってももちろん構わないのですが、出版されている作品は極力スマートに仕上がっています(これもネームバリューがあると別です)。

 ゲームに例えると、本筋のストーリーとは別にミニゲームが合ったりしますよね、あれを少しやるくらいなら構わないのですが、ストーリーを攻略する為に進めるのではなく、そのミニゲームをずっとやってしまっている感じです(わかりにくい)。

 ちなみにその贅肉には「設定」、「イベント」、「会話」、「地の文」、「キャラの数」「小道具」など……物語に関する全てが該当します。

 どの部分が、何故そうなってしまうかは各論で触れています。



・ちょっとだけラストが駆け足過ぎるかもしれません。スピード感は出るのですが、序盤からラストまで引っ張ってきた大会(見せ場)なので、勿体ないかな~と言う風にも映りました。もうちょっと主人公のバトルを拝みたかった気もします。



●主人公について見て行きます。


・全体的な印象としては主人公感は薄く……成長が描かれませんでした。恐らくその原因は、目的に沿った作中での活躍がほぼなかったからだと思われます。

 活躍がない理由は基本的に物語が予定調和的であるため、亘に対する困難が弱くなってしまった事です(例えば、修行が上手く行きすぎてしまう。大会はシード。結構あっさり優勝、など)。

 仮にチート主人公がやりたかった場合、大抵は水戸黄門や序盤の北斗の拳のような流れになります(周りが酷い目に遭い、それをチートで助けて読者をスカっとさせる)。


 壁を用意する為にはキャラクターに欠如(加害)を与える必要があります。そしてそれを回復(逃避)する為にストーリーは進んでいきます。回復こそが物語のゴールであり、そこに行くまでのいくつもの困難が壁になります。

 更に、その欠如(加害)には外面上(ストーリー上)の物と内面上(心の葛藤)の二つに分けられます。


 例えば、

外面上→叶えたい夢がある(バンドでもスポーツでも何でも良い)

内面上→その夢は実は親の夢でもあった。そして小さい頃親に見放されていて、その夢を叶える事で再び認められたい


 こんな感じで

 この場合外面上は夢を叶えるストーリーが進みつつ、内面上では親との確執に触れて成長して行く物語が展開される訳です(ベタな例ですね)。



 これを踏まえて、亘の場合は

外面上→仙人になりたい、非日常的な世界で冒険したい

内面上→多分……ない?(退屈から抜け出したい?)


 こうなると判断します。

 内面上の欠如が描かれなかったため、仙人になりたいと言う動機が弱く見えます(見落としていたらすみません)。例えば非凡な力への強い強い憧れと理由がある、もしくはめちゃくちゃ嫌だけどどうしてもやらなければいけない理由がある、などあればわかります。

 

 なんとなく受動的に流される主人公もいますが、亘の場合は「未知なものに憧れている」と明言しているので、その納得の行く内面的理由があると良いと思いました。

 例えば学校でいじめられていると言う簡単な理由を与えてあげるだけでも「非日常への憧れ」は強力な説得力を得ます(ただしその場合は最終的にいじめに打ち勝つラストにする必要があります)。


 ちなみにドラゴンボールとかドラクエとか、内面上の葛藤がない物語もたくさん存在します……が、心理描写が武器の小説で内面上の物語がないのはかなり勿体ないと思います(もちろん例外もあります、コメディとか)。



 余談ですが仮に亘へ内面の悩みを与えるとしたら、テーマである「退屈」を掘り下げてあげる事でしょうか。

 憧れの非日常、桃花源に行っても現実世界と変わらない……と言う所まではめちゃくちゃ良かったので、これをもっともっと堀り下げ、「せっかくの異世界なのに、退屈で退屈でたまらない」、そして「修行をしても思ったより面白くない」と言う類の葛藤を入れられると、物語にさらなる彩りを加えられるように思います。

 、と言う事が定石です。



●敵について


 主人公の目的を邪魔するのが敵対者(壁)です。これは具体的でも、抽象的でも、象徴的でも構いません。

 外面と内面の敵がいるのですが、亘の場合は外面だけですね。目的は仙人になりたいと言う事なので、作中の壁としては辛い修行として描かれました。

 壁は困難であればあるほど面白く、破った後のカタルシスもあるので、とにかく主人公を困らせる事が重要です。少し前に書きましたが修行は結構すんなり行ってしまった為、見せ場が少なくなったように映りました。困難がないので、葛藤も生まれないと言う結果に……。

 もう一つは最後の大会ですが、結構苦戦しつつも割とあっさり終わってしまった為、いまいち盛り上がりに欠けてしまったように感じました。


 もし内面上をさっき書いた「退屈」として掘り下げるなら、世界そのものに対する不満だったり、楽しいと感じる事が出来ない自分、が敵になると思います。これであれば、仙人達と修行をしていく中で共に退屈への理解を深めていき、最後の大会で初めて「楽しい」と思える、そんな成長ストーリーが思い浮かびます(完全に余談)。



●各キャラの役割


 主人公に関わるキャラにはそれぞれ役割が与えられます。


師娘……賢者

フチ子……援助者

子美……援助者

長吉……贈与者、支援者、敵対者


 こんな感じですね。

 賢者は物々交換で何かくれる者(住まいをもらい、非日常を与えた)、援助者は無償で援助してくれる人(彼女らは厳密には無償ではないけど、亘が何かした訳じゃない)、贈与者は贈与物をくれる人(長吉は「助手」として自分を贈与し、亘を助けてくれる)。

 長吉は最後戦うので、役割が三つもあります。面白い関係です。 

 


●物語はキャラが日常世界から非日常へ旅立つ事で開始します。


・亘が桃花源に行くところが正にそれですね。

 細かい定石を話すと、日常が失われるときはちょっとした予兆が合ったりします(例えばミステリーで事件に巻き込まれる前に、テレビで殺人が起きたと知る等)。ようは軽い伏線ですね。

 この作品の場合漢詩の授業がありますが、世界観への準備みたいなものなので惜しいです。その授業中に「最近コンビニに変な幼女が出るらしい」みたいな会話をクラスメートとする、みたいな感じが妥当でしょうか。


・さらに日常が壊れる「動機付け」と「きっかけ」があると尚良いとされます。


動機付け……退屈だと亘は語っていた

きっかけ……師娘と出会う所


 こんな感じで当てはまっています。

 さらにこのあと主人公は一旦非日常に行く事をためらうものです。

 これについても、亘は最初冒険を拒否していたので良い展開だと思いました。

 ただ、そのあとがちょっとすんなり行き過ぎていて少し不自然でしたので、それは各論で触れます。



・出発後、主人公の行動に対して制約やタブーがあったりします。


 亘に関してはそう言った物がなかったので、例えば生きた人間が仙界をうろついていたらちょっと不味い事がある、みたいなルールがあったらイベントが増やせたかもしれません。



・最後は日常に帰って来ることで物語は終わります。ここで重要なのは主人公にとって元の場所は「どう変わったか」です。

 つまりどのように成長、変化を遂げたかが描かれます。

 亘は最後人間界に帰ってきますね。そこで先生が辞めたことを知り……と言う、特に何事も心理描写なく終わってしまいました。そして仙界へ再び冒険へ出かけます。

 ここはかなり勿体ない所でした!ここで何か「退屈」と感じていた冒頭と対比して、世界を眺める新しい価値観を描ければベストだと思います。



●最後に、些か主人公の技が多く、分かりにくい気がしました。

 読み慣れていない漢字(造語や専門的用語)と能力を結び付けて覚える必要があり、「あれ、この技はなんだっけ?」と何度か読み直しました(私の集中力が足りないだけかも)。通して読んだ限りでは強化するワザと素早さを上げるワザだけで良いような気もします。

 さらに八つの型も出てくる(この設定もあまり必要ない気が……)ので、過剰設定で扱いきれていない印象を受けます。

 例えば「超人的な身体能力」と「たった一つの必殺技」だけを極める、と言う目標の方がシンプルで物語的にも読者的にもわかりやすく、展開もしやすいのではないだろうか、と感じました。





 総論は以上になります!


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2、各論



●プロローグ


・冒頭からいきなり情景描写が巧みです。作者様が頭を捻って生み出した様子を想像させます。間の取り方も心得ている様で、会話に入るまでが長すぎず短すぎず、丁度良いように思いました。


・「掴み」としてはちょっぴり微妙です。アクションで動きがあるのは良いのですが、感情移入をする前の人物が必死になっていても後を引く効果は薄いと考えます(知らない誰かが交通事故に遭うのと、知り合いが交通事故に遭うのではハラハラ感が違うのと同じです)。

 そして修行のシーンは詳細にやりすぎたせいか掴みとしては割と地味なので、大会の絶体絶命のシーンを軽く書くくらいの方がプロローグとしてはインパクトがあるかもしれません。


・序盤から「師娘」と出てきますが、読み方は「しじょう」で良いでしょうか。

 ググってもすぐに出てこないくらいにはマイナーな単語だと思いますので、スピード感を失わない為にも最初くらいはルビを振る方が親切かと思われます。



>戴天山剣法第一手「犬は吠ゆ 水声の中(うち)」


 と出てきますが、冒頭で専門用語を出すと言う事はかなり重要な伏線に見えます(クライマックスの決め手とか)。ですがこの後ほとんど出てこないので、ここは技名(?)など言わせずにノックアウトされた方が無難だと考えます。



●第1話


・ここは冒頭から約三千五百文字の贅肉があり……テンポが悪く映るので、もっとスマートに書かなければ読者が離れていく可能性は高くなります!最初なので凄く重要です!


 まず、キャラクターには主役、モブ、エキストラと言う役割があります。


・主役は主人公格のキャラ。

・モブは物語でちょくちょく出てくる主人公以外のキャラ。

・エキストラは背景的な、描写で一瞬現れるキャラ(教室のクラスメートなど)。


 先生はモブと言うよりかはエキストラに近い役割なので、先生個人の説明は全部カットしても問題ないです。と言うより、この書き方だと明らかに先生が物語に関わる流れなので不自然です。


 更に李白と杜甫の細かい話も全て必要ありません。物語には関係ありますが、ストーリーの主軸に関係ないからです。見る限り完全に普通の授業になっていて、正直な所かなり退屈に映るかな……と思います。

 これは読者の漢詩に対する興味云々ではなく、教科書をコピペしただけなので目が滑る危険性があるのです。


 冒頭に窓の外の風景描写がありますが、先生の説明を省き漢詩の授業で二人が紹介されたと言うダイジェスト的に終え、授業中は主人公が退屈に苦しんでいる等の心理描写などを入れ、すぐにコンビニのシーンに映る、と言う方が読者に逃げられる可能性は圧倒的に減ると思います。



>何かを変えてくれる、いや、そのきっかけとなり得るような刺激的な出会い――それに他ならなかったのである。


 上記しましたが、このような主人公の悩みが冒頭に語られるのはナイスですね。この後旅立つ事への「動機付け」になるので。



>彼女の双眸はまるで夜空のようで、小さな星々が微かに瞬いているようだった。


 「澄んだ」みたいに安易な表現ではなく、このような素敵な比喩が良く出てきます。作者様は情景の描写がお得意なのだろうとお見受けします。



>使い古されたプロットの一つじゃないか。ありがちすぎて退屈を禁じ得ない、雨後の竹の子のように生えるラノベ的展開でしかない。


 これはちょっと細かい事なんですが、ラノベを読んでいる説明はあったので後半は良いものの「プロット」と言う単語を使う事が気になりました。

 彼が小説や、漫画、脚本を勉強しているのならアリですが、一般人は普通知らないと思われるので……「使い古された王道」等の表現を選択する気がします。



>追いすがる声。しかし僕は我関せず(以下略)


 ここから11行に渡って主人公のラノベ持論が始まります。物語に関係ない(読者にとって重要じゃない)上にスピード感が無くなるので、ここは贅肉の対象となります。まだ冒頭なのでスピードを落とす安全運転はまだまだ先です。



>一体いつからなのだろう?

>こんな喉の渇きにも似たようなおもいを抱くようになったのは。


 亘は最初この良い感じの葛藤を抱えているので、最後までこれを引っ張り、温め、クライマックスで解決する流れにすれば主人公の魅力がもっと増したかなぁと思います。



>僕は二の句を継ぐことができなかった。不審感がじわりとせり上がってくる。

>しかし僕の胸中では不審感が恐怖へと変換されていた。心は恐怖でじわりじわりと染め上げられ――


 私の読解力のせいもあるのかもしれませんが、この辺りの展開はちょっと……意味不明でした。

 要約すると「ちょっと変な子供が指定した場所の砂場に、大きな箱が埋められていた」だけです。普通なら「何だこの箱?」以上の感想はない気がします。

 ですがいきなり主人公は死体でも見つけたかの如く怯えだすので、何故そこまで怖がっているのかに説得力がなく、「少女を異質に見せる」為のご都合展開に映ります。


 余談ですが影のくだりは杜子春をオマージュしていてニヤリとしました。



>「ありがとうございます。しかしながらすももさま。私めの望みは金銭にはございません」


 礼儀をわきまえているとは言え、さすがに現代の高校生なので普通の敬語の方が自然かな~と思います(すぐあとに少しだけ変わりますが)。

 いきなりビジネスのメール口調が使えてしまうと違和感が残りますし、地の文と違いすぎるのでキャラが変わってしまったような感じもあります。親近感も沸きにくくなる気がします。



>ここで家族がどうの学校がどうのと渋ったりすれば、間違いなくバッドエンドがやって来る。僕は無言で何度もうなずいた。


 主人公の家族構成については何も語られていませんが、普通の家庭で育ったなら真っ先に気にする所です。ここをすんなり行ってしまうのはちょっとご都合的でした。

 例えば親と仲が悪いとか、虐待を受けていて家に帰りたくないとか、その辺りの動機づけが必要に思います。

 もしそうでないのなら、何日も仙界に居る時に家族の心配をしたりする描写が必要になってきます。



>ついに旅立つときがやって来た。さらば、代わり映えのしない平穏な日常。さらば、情報にまみれた俗世間。


 この展開でも構わないのですが、動機付けや伏線があるとはいえ、非日常受け入れるのが早すぎて予定調和的に映らなくもないです。なのでできれば嫌々ながら旅立つ方が自然に映ります。

 上記した家族の事があるのでそれを理由に旅立つか悩んでいる所、すももが無理やり連れて行ってしまうと言う流れの方が説得力出るでしょうか(すももは家がなく形式上でも弟子が欲しいと言う行動理由があるので、そこはきちんと説得力を持たせられます)。



>僕は素直に彼女の細い腰を両手で抱きかかえる。すると、甘くて柔らかな芳香が僕の鼻腔をくすぐった。


 そう言えばすももはどこで風呂に入っていたのだろうか……いや、絵馬でどうにでもなるか?

 余談ですが全然風呂に入っていなくて体臭酷い方がコメディになるしキャラも立つかな、とか思いました。呼び方が汚師匠(御師匠)様になるとか。フチ子も部屋が汚いからちょっと被るけど……。



>十歳くらいの幼女の背後から忍びより、その腰に手を回す高校生。そして顔をその背中に埋め――


 警察のひとー!こっちですー!



●2話


・幼女の膝枕だと……けしからん!代われ!(うるさい)

 ここで師娘が「いい加減に覚めぬか」と発言したので、少しの間膝枕を許してくれていたと訳ですね。ちょっとした優しさが垣間見えます。連れてきた罪悪感みたいなものが少しだけあったのかもしれない、と感じました。



>この子の別名は『謫仙人』っていうのよ。


 この言葉自体はそれほど重要ではないので、追放されたと言う事実をストレートに伝えた方が良いと思われます。これより前に陶靖節やフチ子、すももの本名などの新情報がばんばん出てくるので、出来るだけ削れるところは削った方が読者の混乱やブラウザバックを防げます。



>仙籍、網、緑林、『太白遺風』


 一気に専門用語を出し過ぎで、さらに出さなくて良いもの(瓢箪の名前等)専門用語である必要がないもの(網や緑林など)も結構あります。伏線でない限り全て贅肉になってしまうので、専門用語を採用しないと言う手もあると思います。



・総論でも述べましたがここでの説明回はまだ早く、物語が進みだしていないので「この作品は何がしたいんだろう」と言う若干退屈なまま文章を読み進める事になり、ちょっと危険です。



●3話


>これぞ非日常の世界だ。何せ自分は仙界に引っ越して、これから仙人になるための修行を開始するのだから。


 冒頭の服を着た時の亘ですが、ちょっと前に指摘した家族への配慮をこの辺りで書いておくと旅立つ時の違和感が軽減すると思います。



>二人は軽く数百年と言うけれど、僕には全く想像できない。


 主人公の修行の期間についての台詞ですが、時間の流れが違う設定もまだ知らない訳ですし、寿命についてツッコミを入れそうな物ですが……「仙人になる前に死んじゃうじゃないですか!」みたいな気付きがないと不自然に思えます。



・武術大会に出る話までは良いのですが、このちょっと後の修行に関係する掃除洗濯をしているシーンまでに、フチ子の食い扶持の話、フチ子の別称、郵便物の受け取り、三人での特に伏線はない会話、と言う場面が続きます。

 この辺りは主軸に関係なく話が進まない展開になりますので、出来れば短くするかカットして良い所に映ります。

(例えば伏線であるフチ子の本名は2話で仄めかされていますし、この網や緑林が物語に強く関わってくることはない、など)



>「五柳先生」とはフチ子さんの別称であるらしい。


 小説は視覚的情報が無いため、伏線でない限り呼称は統一する方が無難です。二つ名的な物は本当に混乱しか生まないので登場させる事へのメリットはほぼありません。


・コンビニでこの日常っぽい桃花源に慣れてしまった説明が入りますが、達観している感じが出て葛藤としては面白くないので、ここでもっと亘が桃花源に対し嫌気がさすような描写が欲しい……かもしれません。



>「緑林へいらっしゃいませ、こんにちは! ポイントカードはお持ちでしょうか?」


 ここは長吉との出会いが目的のシーンなので、店員との数行に渡るやりとりはカットする部分になります。「ジュースを買って店を出た」だけで済ませて次に進ませましょう。

 何よりも店員はエキストラなので会話を与えてあげると言う「優遇」は勿体ないです。



●4話


 ここも要約すると長吉の紹介と絶技の話だけなので……些か贅肉が多いように思います。話が進まず、物語の主軸に関係する会話も殆どありません。

 特に削るべきと感じるのはフチ子の呂律の回っていない台詞です。一、二回なら可愛らしいで終わるのですが、後半は常にそう言った台詞からのその注略、と言う流れが多く、やり過ぎに映りました。



●5話


 ここはすぐに修行のシーンへ行くべきだと思いますが、これまでのダイジェストや非日常に対する今までと変わらない心情を吐露する地の文がちょくちょく入ってしまいます。そう言った部分は話が進まないだけなので……カットして良いと判断します!



>「ししし、師娘! 見え、見え、見えました! く、蜘蛛です! 拳骨くらいに……!」


 総論でも書きましたが、上手く行き過ぎなのでちょっと面白みに欠けますね。

 上手く行かない場合は葛藤やイベントが起こるのでそのシーンに意味が出てきますが、簡単に成功してしまうのであれば修行のシーンを細かく書く必要がありません。物語の主軸関わって来ない可能性が高いからです。

 結局は「修行が始まり、上手く行った」と言う物語的に動きのない映えないシーンになってしまうので、テンポ的にはダイジェストで終わらせないといけなくなります。勿体ない!



>目の前にいた相棒は真っ二つとなってその屍を宙に舞わせていた。

>言葉が詰まる。

>「ああ、相棒……っ!」

>僕はそう絞り出すので精一杯だった。


 このあと何事もなく修行に戻ってしまいますが、空中で蜘蛛が真っ二つにされたら「えっ!?」ってなりません……?

 恐らくもうちょい感想や動揺があるはずです。次の相棒二号が切られた時にようやくそれを思い出したように呟くので不自然に映ってしまいました。



>ああ……! これが傘立てみたいなのから出てきたものじゃなかったら……!


 待ち望んでいた武器が……!と言うシーンです。

 主人公の眼鏡にかなう品が出てくるとつまらないので、こう言うちょっとしょぼい感じの登場をするのは良いですね。



>これを剣訣と呼ぶ。

>型の変化も八種しかないということだった。


 亘が習う剣訣や八種類ある剣の型ですが、ほとんど出てこないのでこの設定もいらない……ような気がしなくもないです。何回か通して読みましたが、せめて八種ではなくて四種くらいで十分だと思います。

 読者に覚えさせる設定は少なければ少ない程、際立ちます!逆に多ければ多い程影が薄まってしまい存在意義がわからなくなります。

(私も物書きの端くれなので、詰め込みたい気持ちは痛い程わかるんですけどね……)



●第6話


 桃花源に来、修行も始まりちょっと落ち着いたので何かイベントが欲しいな~っという所で子美の襲来です。これは凄く良いですね。

 ただしこの文字数の時点でほぼ物語の中盤なので、ここまで持って来るまでのタイミングがちょびっと遅いように思います。

 プロット的にはせめて三話くらいまでにここまでの展開にするとテンポも良くなり読者が読み続けてくれる可能性が上がると考えます(一応文字数で確認したところ私が指摘したところの贅肉を削り、説明をもっと後回しにすれば可能です)。



>「うっさいわね! アンタ程度、腹マイナス八分目でも何の問題もないわ!」


 マイナス八分目はキャラクターにあっている面白い表現ですね。ちなみに高田は腹ペコキャラが好きです(どうでもいい)。



・子美と長吉の戦いは凄く良かったのですが、ここのシーンの目的はそれで達成されているのですぐに終わると尚ベストでした。

 終盤の長吉の言い間違えや弁当のくだりは伏線もないのでカットするか、別場面でやる方が戦闘の余韻も残ります。仮に長吉のキャラを掘り下げる為にやるとするならば、また別に長吉メインのシーンを短く作って詰め込む方が場面の目的がわかりやすいです。

 


●7話


・ここの7話約半分に渡る序盤の絡みや、マジカル☆プリズム・リターンズのくだりは削っても物語に支障がない(支障がないように持っていける)ので、要らないかなと判断します。物語を進めるにはいきなり修行へ行った方がテンポも良しです。



>そして、ついに――戴天山剣法の第八手までを完璧に覚え込むことができたのだ


 ぇえっ!?もう覚えちゃったの!?と言うのが初見の感想でした。もうちょっと会得までに困難を用意してあげましょう、その方が亘を応援したくなって感情移入も成功します。



・「牛肉白酒」の話が後半あります。このエピソード自体は好きですし悪くないのですが……ここもシーンの選択ミスです。ここに挟むべき話に思えません。


 物語は起承転結を通してしかるべきタイミングでイベントを起こす必要があります。大まかにいうと起と承の間、全体の半分の辺り、転の部分、終幕直前のクライマックス、の四つが定石です。これはさらに単独で起こるのではなく、

 この作品の場合、最初から最後まで通して、こう言った子美の話のように単発的な日常のイベントがポツポツ起こるばかりなのでで……残念ながら物語が転がっていませんでした。



●8話


 正直な所、この八話は序盤の内功のくだり以外、丸々カット……するくらいの校正が必要に思いました。



>「中華ではな、官吏登用試験に『詩作』があったのよ。(以下略)


 ここから原稿用紙約二枚分(行数だと二十四行)に渡って子美と長吉の仲が悪い理由を説明しています。会話だけなのは悪くないのですが、明かに詳細に語りすぎ、長すぎです。重ねて言ってしまいますが、これでは物語が進みません。


 説明の台詞全てに物語の主軸と関係あれば別ですが、ないので……せっかく書いたのに読者の目が滑ってしまい読んでもらえません。

 作者の「二人を説明しよう」と言う思惑が余りにも前面に出過ぎています。もしくは公募に出すのであれば下読みに文字数稼ぎと思われかねません。

 この長い説明の部分は「詩の作り方が正反対だったのじゃ」と一言で終わるので、その他の説明は全てカットすべきシーンです。

(これは総論で述べましたが「ラノベっぽいエンタメにするなら」での指摘です。詩人を紹介する事が目的の物語なら間違っていないかもしれません)


 ちなみにこれは白居易の代表作の説明も同じです。物語的に削除するべき所です。せめてあっても良いのは武器の説明くらいでしょうか。


 その後仙人のランクの設定はあってもなくても良い話なので……この長々とした説明は読者にとって設定資料を読まされているのと一緒でちょっと退屈です。



 余談ですが「超怪力にして双鞭の使い手が楽天なのじゃ」と聞くと、封神演義の聞仲の宝具「禁鞭(金鞭)」を思い出しました(原作ではなく藤崎竜の方)。



●9話


>霊的因子。ファンタジー的な設定を匂わせる単語に出会ったのも久方ぶりだった。


 物語の設定、キャラなどは全体の25%くらいまでに全て出しておく必要があります。理由は二つ。


1、後々に新情報を出すとご都合的に映る。

2、一から説明が必要な場合テンポが落ちる。


 ちなみに25%までには出すだけで細かく説明する必要はありません。隠しておきたい場合は存在を仄めかすだけで大丈夫です。もしくは情報を小出しにする。

 と言う訳でこの霊的因子とやらは後半に初めて出てきてしまうので、この単語を序盤に軽く触れておく方が完成度は上がります。

 さらに物語終盤で長々と説明が入ってしまうので、スピード感が失われています。ここも勿体ないポイント!



・この回も修行回ですが、前回と同じく修行をしているだけなのでプロット的には同じことを繰り返している事になります。物語が進行しているようで進んでいないのです。

 なぜそうなってしまうかと言うと、イベントが起こっていないんですね。

 ちなみに起こすべきイベントは主人公が成長するきっかけになったり、何かしらの困難に突きあたり、それがクライマックスへ繋がって行くシーンです。ちょっと抽象的で無責任な指摘ですが……。



>連理比翼


 比翼連理は聞いたことがあるのですが、連理比翼とも言うのですね。元は漢文なので、返り点がつくとかそんな感じです?(高田は理系だったので漢文の知識があまりない)



●10話


 主人公はシードな訳ですが……この展開はこの作品で一番不味い所だと言えます!物語的にデメリットしかない展開なのです。


 シードになってしまった事で今後生まれるようなイベントがある、と言う伏線でもないので、予選を描くのが面倒だったので設けた……と思われてしまう大変危険な設定です!

 何よりも、総論でも述べましたが一番書かなければならない主人公への困難をわざわざカットしています。


 そして主人公が出ないなら予選も……何のためにやるのかわかりません。最初から本選で問題ないです。

 と言う訳でここは亘に予選から頑張らせるべきでした。せっかく物語を通してずっと修行して来たのに、見せ場がなくなってしまいかなり勿体ない!仙界へ生きたまま来た事によるチートとかを駆使してここで活躍を描くだけでももっと面白くなります!



>僕は軽功を駆使して、桃花源を走り回った。


 亘は一服盛られていた事にショックを受けて飛び出しますが、今まで家事代行と修行のみで内面の葛藤がほぼ描かれてきませんでしたので、ここでいきなり内面的な話をされると……とても感情移入が難しいです。

 そのせいで、亘の言いたい事は分かるのに「何故いきなりそんな感情的に?」と言う印象が大きく、ただの情緒不安定に見えてしまいます。



・10話の後半も説明回となっています。本来であれば起承転結の転、クライマックス直前の大盛り上がりでこのまま物語最後まで突き抜けて行くぞ~!と言う場面が必要ですが、動きのない説明が原稿用紙約十枚分(四千二百文字)も続いてしまいます。

 もう少しスマートに行くか間接的に知ってしまうような展開の方がエレガントです。


 そしてもう一つ言ってしまうと、フチ子を二重人格にする事により物語に何も影響がないので(必要性がないので)素面の状態のフチ子で良いと思います。


 更にここで感情的に出て行ってしまったのにもかかわらず、師娘からのフォローが何もないと言うのも不自然に映りました。



●11話


>左手で木の刃をそっと撫でてみる。手のひらが少しだけ熱くなったように感じた。


 決意を固める熱いシーンなので、ここは謝りに来た師娘から直接聞く方が説得力あるかなと思いました。


 余談ですが亘と師娘のプライベートな絡みがもっとあってもよかったかもしれませんね。幼女と戯れるシーン……ごほん、もとい、二人の絆が深まるシーンをもっと見たかったです。



●12話


・準決勝からの決勝戦で、流れは良いと思います。最後のクライマックスの為に何か伏線があるともっと盛り上がるので、それが用意できると良いかもしれません(世界を滅ぼすレベルのラスボスが出てくる等)。


・ここで序盤からの疑問が発動するのですが、長吉が亘に対し病的にまで惚れ込んでいる事に説得力が薄いと思いました。惚れている事への納得出来るシーンがなかったように思います(見逃していたらすみません)。


・ラスボス(?)である長吉を最後は師娘が倒してしまうので、物語通して決定的な主人公の見せ場がありませんでした。ラストは修行を頑張った亘に倒させて、一つくらいは格好いいところをあげてもよかったように思います。


・クライマックスは作品で一番盛り上がる所です。作品のテーマや作者の言いたい事、書きたい事、魅せたい事の集大成が描かれる所でもあります。

 この作品であれば長吉の暴走を止める所だと思いますが、万人の心に刺さるような激熱な展開かと言われるとそこには届かないかなと思います。

 テーマは「退屈」とわかりやすく出せているので、それに絡めて心が揺さぶられる様な主人公の行動、台詞、信念が津波の如く押し寄せるように書く事が出来ればエンタメとして大成功かなと感じます。


・あとこれは個人的な感想ですが、長吉は別に悪いことした訳じゃないので重傷を負ってしまって可哀想かな……と思います。

 悪役がいなかった事も盛り上がりに欠ける要因の一つになっているのかもしれません。人気のある作品は敵がはっきりしているし、その敵もキャラが立っている事が多いです。



●エピローグ


 総論でも似たようなことを言いましたが、くらいの気持ちで書いた方が良いです。クライマックス以降は長ければ長い程作品の質を落とします。

 ちなみにこの作品のエピローグは約八千六百文字(原稿用紙二十枚以上)あります。明らかに長すぎなので、せめてこの十分の一くらいに収めるのがベターと考えます。


 例えば帝との会話、その後の仲間内の会話、仙界の娯楽の話、人間界に帰るまでのくだり、このあたりはカットしたりかなり短くできます。

 「退屈」がテーマなので仙界の娯楽の話と、長吉の容態を至極短く述べてから亘を下界に下し、新しい価値観を得る(成長を見せる)と言うだけで十分かなと思いました。



>帰省。確かに僕の頭の中では、下界――故郷のことを思い起こすことが多くなっていた。


 故郷を思い出すくらいに恋しいのであれば、これまで一度も触れてこなかった事への不自然は否めません。いきなり戻りたがるとご都合的に映るので、ちょっとした事故などで下界に降りてしまう、などの方が説得力を増す事ができる……かもしれません。




各論は以上になります!


―――――――――――――――――――


3、作品の強み(弱み)や個性だと思う所(主観多め)、及び雑談。


・題材的には唯一無二を誇っています。作者様は漢文の知識が豊富そうなので、エンタメとして成功できれば絶対的な地位を確立できそうです。


・情景描写がかなり旨いです。所々地の文が息切れしてしまう所はありますが、基本的にはレベルの高い物になっています。


・恐らく公募用に書いたとは思うのですが、webにはwebの戦い方があります。

 これは勿論作者様の自由ですので、戦略を決めるのは自由です。ですがより多くの人に作品を見て欲しい場合、改善を意識した方が良いかもしれません。


 その改善点と言うのは一話一話が長すぎる事です。web小説はスキマ時間にサクっと見れる作品が良く見られる傾向にあるようです。

 一話の文字数は大体3千~5千、これが短いか長いかはわかりませんが、読者がその量に慣れている中で、比較した時にあまりにも長文だと読み続けてもらう可能性は当然低くなると思います。


――――――――――――――――――――


 以上です!


 最後に再び申し上げますが、気に食わない所があったら「高田はわかってないな……」くらいに思って頂けると助かります。もしくはコメントにてご指摘下さい。



 吉野川泥舟様、素敵な作品をありがとうございました!





 次の第十六回は、めがねびより様の「マグネティックマン」を拝見させて頂きます。

 

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