第14回 おしゃま少女ヒゲグリモー / オジョ 様
※企画内容にもあるようにこれは「分析→評価」の結果であり、決して作品を否定している訳ではないのでご了承ください。
「おしゃま少女ヒゲグリモー」 オジョ様
https://kakuyomu.jp/works/1177354054883715291
―――――――――――――――――――――――
1、物語の総論
・ターゲット
「魔法少女物が好きな十代男性」
と判断します。
魔法少女なので萌えに走るかと思いきやそんな事はなく、結構バトルにページを割かれていますね。おジャ魔女(古い)よりもプリキュアって感じです。
注目すべきなのはコメディ部分。言い回しが練られていて普通に面白い。
コスチュームが可愛い云々や、意中の相手とか女同士の葛藤で心理描写云々……と言う女性が好きそうな感じもありません(そもそも格好はヒゲ)。
ターゲットを男性と限定したのはそう言った少年漫画の色が強いかなと思った次第です。
・簡単な要約
「指揮者を目指している主人公が嫌々魔法少女(ヒゲ)に変身し、事件を解決していく物語」
まだ物語の途中ですが、このように要約させていただきます。
所謂巻き込まれ系主人公。嫌々ながら変身へ持っていく流れはちゃんと説得力があります。
・使い古された魔法少女物をどうアレンジするかと思ったらまさかのヒゲコラボ。ぶっとんでます(褒めてる)。なさそうでありそうでなかった組み合わせで斬新です。
戦闘もただのゴリ押しではなくきちんと戦略で戦います。欲を言えばもっと驚く頭脳戦を要求したくなるものの、能力の使い方は絶妙に上手く、ターゲット的に概ね満足の行くレベルだと考えます。
余談ですが、仮にもうちょい上の年代まで取り込むのであれば設定をもう少し詰めたり、技名を言わない、バトルに緊張感を出す、みたいな課題が出てくるんでしょうか(要らないお世話)。
・ストーリーは割りとシンプルな構成で、ほとんど無駄もなくサクサク進みます。作者様は何をどう見せるべきかを理解していて、読み手はかなり分かりやすいです。文章の勢いと要所に挟まる小気味良いギャグのおかげで飽きずに読んでいられる。
不自然に映りそうな部分もすぐフォローが入るので、疑問も残らない。
・キャラの出し方と掘り下げ方が考えられているなと思いました。
よくありがちなのが一気にキャラを出してしまい、全員の容姿を描写し、同時進行で色々なキャラを掘り下げてしまい「誰だっけこの子……」ってなるやつです(作者と違って、脳内に映像がない読者は何回か読まないとキャラの区別がつかない危険性)。映像作品やネームバリューがある作家なら良いんですが、ほとんどの小説には推奨できない(無料の作品が溢れかえってるwebなら尚更)。
その点、この作品は各章で主役キャラを変えて掘り下げるので、進め方がかなり丁寧。キャラ説明のためだけにキャラを出すと言う愚行をせず、ストーリーが進む中で出すと言う基本を心得ている。
(些か中盤は主人公より陽子の方が目立っている印象でしたが、まだ物語の途中なので何とも言えない)
・読者を飽きさせないように変化球を出して工夫している努力を感じました。
起承転結を意識した山、主人公への程よい困難、戦闘がマンネリしない様に二回目(正確には三回目)の戦闘にして既に大ピンチ、しかも主人公が攫われると言う中々面白い展開。
さらに世界観を大体説明し終わった後、ようやく真の敵へ持ち込むと言う繋ぎの上手さ。最初からヒゲvsヒゲにしない辺り、結構攻めてます。長期戦(五十万字超えるくらいの長編)を想定していたんですかね。
その中で一つだけ気になった点が。
後で設定が出てくるのか分かりませんが、怪盗アリスと牧島博士が人外すぎるのでその説明はあった方が無難かなと思います(実はビアードの仕業等)。一般人でも十分強いと、ビアードのヤバさが軽減してしまうので勿体ないと思いました(博士単体でビアードと良い勝負しそう)。
●主人公について見て行きます
・キャラクターには欠如や加害があり、その回復や逃避のために物語が進んでいきます。
外面上のもの→ヒゲグリモーをやりたくない
内面上のもの→指揮者になりたい
と言う訳で、外面上はヒゲグリモーをやりたくない(加害)ので、必死に拒否する(逃避)。が、やらざるを得ない方向へストーリー向かっていく訳です。何回か読み通した結果、高田のこだわりレベルの細かい所を覗けば無理やりな所は見られませんでした。
キャラの成長的には、徐々に自主的にヒゲグリモーになろうとして行き、ラストはヒゲグリモーであることに誇りを持つ、と言うのが定石でしょうか(ベタだけど)。
内面上のお話ですがこれは私がこじつけただけで、あってもなくても良いです。一応参考文献ではあった方が良いとされます。あと、キャラクター文芸で大賞を取るような作品は内面の成長を大抵描いてます。
例えばツバメは指揮者になりたい訳なので、コンクールなどで有名な人に「才能がない」みたいな事を言われてがっつり落ち込む。そんな時に音楽や指揮者に関連した敵みたいなものが出てくると、内面の葛藤と絡めやすいですね(そう言う敵を今後用意していたら聞き流してください)。
そうやってヒゲグリモーの事件(外面上の問題)に関連しつつ、内面の描写があると物語に深みが出ます。
そして、その場合のプロットは数倍面倒くさくなります(実体験から来る主観)。
・魔法で一つ気になったのは、如何にファンタジーな設定とは言え半径二キロの雑音(恐らく何万はある)から任意の音声を聞き分けるのはさすがにご都合的に映るかな……と思いました。科学的に可能だとしても、直観的に。
ただターゲットやこの作風を考えるとそれを気にするのは無粋かもしれない。
余談ですけど、能力がジョジョ8部主人公のスタンド「ソフト&ウェット」っぽくてジョジョ好きとしては楽しい(ただの感想)。
●敵に関して
外面上の敵は主人公をヒゲグリモーにならざるを得ない状況にするキャラクターですね。アリスや教授や、その他諸々。
内面はそれほど描かれていないので明記できませんが、楽器の練習ができないと言う意味では外面上の敵に加え陽子とかも含まれるかもしれません。
現時点では妖精の戦いに巻き込まれることに関してのみが敵になると思いますが、今後この物語が主人公の内側に切り込んでいくかは未知数なので、その時は新たな敵が出現する事を予測しておきます(音楽関係なので、加代とか)。
敵に触れたので一応ラスボス(最終的な壁)についてですが、定石では序盤から出ている可能性が高いらしいです。
意外性を狙えて且つ不自然でないならばウィスカーか、加代って所でしょうか。内面云々がなければ普通に敵の妖精の誰かと言う事になりそうですが、一応物語に出てくる全てのキャラ(ラスボス含め)や設定、小道具は序盤に出されているのが理想的とされています。
勿論めちゃくちゃ長い作品とかあるので一概には言えません。
●キャラの役割について
主人公にとっての各キャラクターの役割です。
ウィスカー……依頼者。賢者
陽子……支援者
加代……支援者?
重要人物と思われるキャラだけピックアップしました。めちゃくちゃシンプルです。簡単に言うと依頼者は依頼をする人(物語が動き出すきっかけになる人)、賢者は物々交換で何かくれる役割で、支援者は文字通り支援してくれる役割です。
ウィスカーの物々交換は言わずもがな、ヒゲと能力です。
見方によっては陽子も物語的に依頼者になるかも(厄介事を運んで来る)。
第七話もまだ途中なので、今後別のキャラが新しい役割を担う可能性は十分ありますね(ナツとか)。
●物語の流れ
・ほぼ全てと言ってもいい物語が、主人公のいる「日常(失われる運命)」から非日常に行く事で動き始めます。
この作品で言うとウィスカーと出会う所ですね。この猫と出会い、ヒゲグリモーと言う非日常に突入していく事となります。
最終的には日常に帰って来るのが定石ですが、ヒゲグリモーとして活躍し、その役目を終えた時に彼女がどんな成長をしているか、見物です。
・非日常に出た時、主人公の行動に対して制約やタブーがある事が定石です。
ウルトラマンで言う三分しか戦えないとか、必殺技は一回しか使えない、とか言うあれです。
この作品の場合は能力が微妙に使えないとか、見つかってはいけないと言う事でしょうか。ですが上手くカバーできていたので、ウルトラマンみたいに「決定的にヤバイ」感じではなかったような気もします。一日一回しか変身できない、みたいな制約があるとより厳しい困難を用意できたかもしれません。
が、そんなものなくても適切な困難を用意できていたのでこれは別にスルーしてよい提案かな……M気質の読者なら欲しがるかも。余裕があれば組み込めたらよいかも、と言うレベルです。
・最終的に目的を達成した場合、何かが失われる事が定石です。
今の感じで行くと外面で言えばヒゲグリモーとしての任を解かれて、何かを失う。内面で言えば指揮者の夢に近づける事で、対価を支払う感じになるかなと思います。
これは具体的にも象徴的にも発展させられるので、この物語が今後どう転がって行くのかはわかりません。最新話ではウィスカーが居なくなる予兆がビンビンに出ているので、今後に期待大です。
●その他
構造は中々に面白く、細かい事を除けば申し分ない気がします。過去の私の書評を見てもらえば分かると思いますが総論でここまで辛口コメントがないのも珍しいです。
そんな中、一つ気になったと言うか、物語の基本は抑えられているのでここさえ頑張れば再生数うなぎのぼりだと思う所があります。
それは、描写不足です。
圧倒的に小説感が足りません。自分で言っておいて小説感ってなんだよって思いますが……ただ、語りすぎるとただウザいだけなので、本当にあとちょっとでいいので心理描写や情景描写に気を配るとかなり変わると思います。
作者様は筋肉はあるのにその使い方を知らないポテンシャルお化けで、このまま埋もれるのは死ぬ程勿体ないと感じます。
私が数々のプロの書評を見てイラっとするのが「オリジナリティがない」みたいな超曖昧で適当な突き放した評価なので、こう言ったあまり抽象的な事を言いたくないのですが……。
じゃあどうしたらいいのと言われると、とりあえず自分が尊敬する人の本を手に取り、会話以外を軸に文章を見比べてみてください。恐らく描写不足を実感すると思います。
尊敬している人じゃなくても良いです、WEBで伸びている小説、世に出ている本、そう言う物(需要がある物)はもう少し地の文に気を配っています。絵と違ってどうせバレないんで、最初は書き方をパクってもいいかもしれません。
それくらい惜しい作品です。
総論は以上になります。
―――――――――――――――――――――
2、各論
●第1話その1
・最初、短く謎を残す丁度良い感じの掴みですね。プロローグに頼らない所が好感持てます。
・第一話なので普通なら主人公を主体に話を進めると思うのですが、ツバメ目線ではなく加代目線で話している事に何か意味があるのかなと思いました。例えば、
>私なんかそばにいなくなったって、きっとツバメちゃんは全然気にしないんだ。
みたいな台詞は、おそらく伏線なのかなぁと考えます。
最新話までで加代はほぼ活躍していないので現時点では必要のないキャラなのですが、この伏線っぽい話し方からして重要な役割になると思うのでその事に関しては今はスルーします。もし今後何もないのであれば何か役割を与えてあげる方が良いです。
●その2
>加代が口を尖らせる。
>「ついてるもん」
余談ですけど個人的に加代が可愛くて好きなんですよね……ヤンデレの波動を感じる。
>ナナちゃんの友達のお姉さんが、本当に見たんだって」ナナちゃんは、加代の家の近所に住む子で、幼稚園の年小さんである。
キャラクターの役割を「主役」「モブ」「エキストラ」に分ける考え方があります。エキストラは通りすがりの通行人のような役なので、名前も台詞も与える必要はないとされます。物語の贅肉になるからです。
この考えを採用するならば、ナナちゃんは一瞬しか出ないエキストラなのでここの加代の台詞は名前を出さずに「近所で噂になってる」程度で情報を制限するとスマートに映ります(ちなみにこの作品ではエキストラに余計な情報を与えている事が度々見受けられます)。
>「じゃあ、私はこの後英会話があるから。バイバイ」
ツバメの台詞です。
ちょっと細かい指摘になってしまうのですが、物語に出てくる情報は全て物語のゴールに関係がある事が良いとされます。つまり全てが伏線、くらいの作品程質が高いと言う事です。
このシーンでは「英会話」と出てくるので、出来れば後で英語を喋らなければいけない重要なシーンがあるとこの会話に必要性を与える事が出来ます(後に出てくるのであれば聞き流してください……)。
逆に今後ない場合、次の指揮者の台詞を誘導する為のご都合的な台詞に映ってしまいます。
>「私もあんな風に沢山の人を操ってみたい」
ツバメの台詞ですが、彼女の性格が如実に表れている気がしました。たくさんの音を操るとか言いそうなところ、人を操ると言う表現に高飛車な感じを想像させます。
>夜の住宅街は人気がなく、等間隔に立つ街灯が、ツバメの影を引き延ばしてはまた縮めていく。
いいですねこの表現。ちょっと不気味な感じと言うか、静謐な街路地を歩いている所を想像させる描写です。
●その3
>「痛ってえ‼︎」
>デブネコの狭い額に、ツバメの手刀がクリーンヒットしていた。
恐ろしく早い手刀……俺で無けりゃ(以下略)
緩急をうまく使ったコメディシーンです。普通に笑いました。
●その4
第一話の長さ的に起承転結の承に入る部分です。この辺りで物語が転がり出すイベントがあると良いとされますが、きちんとバイオリンが盗まれる事でその目的が達成されています。
>「ツバメちゃん、モノモース見た?」
物申すと言う名前は普通に面白いのですが、これもこの後全く出てこないので、固有名詞は省いた方が無難かもしれません。
●その5
>本当の価値などまるでわかっていないに違いない。
>すぐに換金してお終いなのだろう。
盗品のバイオリンの事ですが、量産品ならまだしも一点物の盗品は売る時に足がつく確率が高いので換金は厳しい気がしました。海外のルートと後に語っていますが、そう言う筋の闇取引とかなんですかね?
●その6
>口ヒゲ あごヒゲ どじょうヒゲ
>チョビヒゲ もみヒゲ 無精ヒゲ
>くろ、あお、あかヒゲ ネコのヒゲ
なんかちょっと伏線っぽいな~と感じました。どじょうヒゲ(マオマオ)、無精ヒゲ(青木)なんかは出てきましたし、くろはツバメ、あかは陽子、と来ると次仲間になるのはあおヒゲを付ける女の子かな?……みたいな予想です。もし伏線なら上手いなと思います。
ちなみにこの辺が物語の中盤なので起承が切り替わった時のイベントと関連したイベントが起こると良い、とされます。まさに変身シーンがそれにあたるので、定石通りです。素晴らし。
●その8
アリスを見つけてから移動するまでがサクっと進むので好印象です。物語のゴール(バイオリンを取り戻す)的にここをダラダラやるのは避けたかったので。
そして上手い事能力の説明が終わった所で、この辺りが物語の長さ的に起床転結の転になります。アリスがまさかの男だった、って所でしょうか。
●その10、11
10で伏線を張り、見事11で倒しています。初回の戦闘とは言え力でごり押ししない所が良いですね。変身したからと言って楽に倒せるわけではなく、主人公への困難が適切でした。
●その12
転、からのクライマックス、からの結。って感じで物語は終幕をしますが、クライマックスが終わったらさっさと幕引きするのがベストとされます。
この作品の場合11のクライマックスでアリスを倒し、12でネタバラシと後日談を短く書いて、ちゃんとオチも付けて終わる。構成は実にエクセレント。
●第2話その1,2
第2話は割と説明回ですね。ツバメとウィスカーの今の関係や、ヒゲグリモーは何故女子中学生をターゲットにするかなど。
全体の物語のゴールを考えるとスピンオフ的な内容なのですが、正直私はこの話好きです。普通に良い話。
>「あんたのおでこ広すぎ。さぞかし固定資産税お高いんでしょ!」
秀逸な煽り合いの中でもここは特に洒落が効いてて好き。そしてツバメがでこキャラと言う事が判明しました。高田はでこキャラが好きなのです。
●その4
>2週間前、お喋りネコ妖精ウィスカーに出会ったツバメは、不思議な付けヒゲの力で魔法少女ヒゲグリモー1号「ヒゲエンビー」へと変身し(以下略
ここから約二十行に渡ってこれまでの経緯の要約が入りますが、読者は一話からの続きを読んでいるので要らない説明かと思います。話のテンポが落ちてしまう。
●その5
>「ツバメちゃんが言ってたやつ、ネットで調べてみたよ。確かに、最近市内での窃盗とか強盗事件、増えてるみたい。
加代ちゃん情報収集に関しては有能説!
>できるかもしれないことをやらずに終わるよりはマシだとツバメは再び思った。
ツバメはツンツンしているイメージが目立ちますが、基本的には正義感溢れる良い子なんですよね。加代をいじめから助けたりするし、陽子を放っておけなかったり、ヒゲを失くしたウィスカーを哀れんだり。
それでいて苦労人なので、なんとなくですが溜息の似合うキャラクターな気がします。巻き込まれではなく彼女が自ら仲間の為に動く様になったら胸熱展開ですね。
●その7
>この先もヒゲの力で誰かを助けることができたら。
>とは思わない。
毎回オチが付いていて気が利いています。
ちょっと惜しいなと感じるのは、この事件に絡めてツバメの内面の変化や成長を絡ませる事が出来たら百点だったかなと思います。これで終わってしまうとこれからの本編の動きにこの話がほとんど不要になってしまうので、そう言う所で物語の主軸と関わらせて行けたらベストでした。
良い話だけに、勿体ない!
●第3話その1
・アンドロメダが聞き役となって博士が今何をして来たかの説明役になっていますが、アンドロメダ要るかな……?と感じます。物語上活躍する訳ではないので、彼女(?)が存在する必要を与えて挙げた方が無難かなと思いました。タコを動かす為のAIを担っているとか。
>「言っとくがの、アンドロメダ。ワシは悪事が好きなのではないぞ。おこないがことごとく法に引っかかるだけだ。
そう言えば博士の目的が出てこなかったように思います。何のためにロボットを作ったのか、納得の行く説明を描いた方が物語に説得力が増します。
●その2
>「なんかつまんないな。怪盗アリスは捕まっちゃったし、ヒゲ売りネコの話も聞かなくなっちゃったし」
そう言えばヒゲはまだたくさんあるみたいですし、ウィスカーの性格ならツバメに続いて他の女の子の勧誘を続けそうな物です。何故スカウトを止めてしまったのか、その理由が必要に感じます。
●その4
>「ヒゲか、いいな!アタシはヒゲが大好きなんだ」
>陽子は即答した。
最初の仲間が主人公とまるで違うと言う対比も面白いですね。頭脳派と感覚派、魔法タイプと格闘タイプ。ツバメが動かしにくいキャラだと思うので、動かしやすいキャラを登場させたって所でしょうか。
●その5
>無邪気な態度に忘れかけていたが、彼女はケンカ大好きの暴力少女である。
そう言えば最新章で出てくる女の子もヤンキーキャラで、ちょっと荒くれ者感が被ってますね。性格は大分違いますが。
>いつの間にか、Tシャツ短パン姿の陽子が隣に立っていた。
>ツバメの顔へ懐中電灯の光を向けている
まさかここが伏線になっているとは思いませんでした。小道具の使い方が上手い。
>今は9月なので、水泳の授業はもうない。
授業がなければ水も張ってないと思われるのですが、その辺はどうなんでしょう。学校によるんですかね。ちょびっとだけ違和感を感じます。
●その6
・ちょっと前と同じ指摘になってしまいますが、不良5人は今後出てこないので全員に名前を与えてあげる必要性は薄いです。結局誰が誰だかわからない上、そもそも5人も必要だったか謎です。
・ツバメ的には陽子をさっさと勧誘をしたいはずなので、プールで泳いでいる時に切り出さない事がちょっと不自然かなと思いました。
勧誘を始めたら不良たちが押しかけてくる……と言う方が進め方に説得力が出る気がします。指揮者の夢を見る展開が突然すぎるので、そこのシーンと置き換えてもいいかなと思います。
●その9
>「あれ。君はたしか、もう使わないんじゃ」
>意地の悪い目つきで、付けヒゲを出し渋るウィスカーだった。
このクソ猫!笑
プールに入る事と服が吹き飛ばされるのはほんのりご都合主義の香りがしますが、それでも許容範囲の持っていき方ですね。どちらにしろタコを制する為にツバメは変身するしかなかったわけですし。
●第四章後編その1
・前編後編で分かれていますが、後編は陽子がメインだから分けたのでしょうか(それとも単に長かったからだろうか)。
前者の理由であれば分割のタイミングが微妙な気もします。攫われた時に後編へ入った方がキリが良かったかも。
>「ほらね!やっぱり幽霊なんかいないじゃない」
ツバメの台詞ですが、実は幽霊を怖がっていたとかだったら可愛げがありますね。
多分自分の正しさが証明されて嬉しかっただけだなのでしょう。
●その2
エイトアーマーの詳細な説明が語られますが、物語とあまり関係ないので細かい説明はカットしたほうがテンポ良くなります。
余談ですがこの世界感でロボの設定を組み込もうとするとオーバーテクノロジーである事などの不自然さも際立ってしまうので、さっと流す程度が無難かもしれません。
●その3、4
>「何だその格好。お前、ヒバリなのか?」
まさかこの名前間違いキャラが後の重大な伏線になっているとは思わなんだ。マオマオの時は思わずおぉと唸ってしまいました。
と言うかツバメとヒバリ(スズメも)って響きが似てないので、陽子が鳥つながりでわざと間違えている説。
>「てか、なんでアタシの名前知ってんだ?」
>「君のことは妖精の世界でずっと見守っていたモニャ」
>「まずいニャ!ツバメが捕まったモニャ!」
強敵であり、陽子も自ら戦うと言っているので、ウィスカーの性格からしてこの時点でヒゲを渡そうとするはずです。
ですが物語の進行上ここで陽子に変身して欲しくないので、攻防が激しく渡したくても渡せない、と言う描写があるとそのあたりの不自然感が解消されると思いました。
●その6
>「夜動くのには」
>「向いてないニャ」
ここでも変身したからと言って上手く行く訳ではないのが良いですね。きちんとこの能力が伏線にもなっているので面白い思います。
●ここから先は陽子のターンになりますが、良い意味でも悪い意味でも特筆すべきことはなかったです。
博士を見つけるまでと、戦闘シーンが若干長いような印象を受けましたが、あえて指摘する程でもない気もします。博士サイドの話は説明的なので要らないかな……とも感じました。
>「いや。今日のところはよすニャ。キミ達は体力も心も消耗しているし、向こうに何人いるかもわからニャい。これ以上の詮索は危険だモニャ」
その13で博士との決着を付けなかったので、どこかで出てくるのだと思います。敵か、味方か。第三勢力なら熱い展開ですね。さすがに今後一切出てこないと言うのはほったからしになってしまうので不味いですが……。
●第5章その1
>陽子が窓ガラスに右腕を潜らせ、内側の鍵を開けた、
割とどうでもいいかもしれませんが、全身通り抜けられるのであればわざわざ鍵を開ける事無く部屋に侵入すればよいのでは?と思いました。あえてやる必要も感じられなかったので。
●その3
>「ふうん。たったの数十騎で義経は敵を大混乱させたわけね」
>ツバメは細かな字をノートに並べていく。
この辺りの長々とした会話をわざわざ物語にのせるのであれば、この調べものを伏線として使用する方が良いです。そこで行われるシーンが物語上全て意味のないものになってしまいます。
●その4
>「ヒゲが付いてるよ」
>突然、学が言った。
中々上手い言い回しですね!
・今回の事件もツバメの巻き込み方が巧みでした。
●陽子sideその1
主人公ではない方の話が長いのはどうなのかと思いますが、陽子のぶっ飛び具合が分かる回でした。
正直な所ツバメサイドの続きくらいから書いた方がテンポ良いので、陽子サイドを一から書いてしまうと些か読むのが怠い感じはします。話が進まないので……。
●車を止めると言う目的だけでその3、4、5、6と四回もかけてしまうので、今までのテンポ感を考えるとちょっと長い気がしました。第5話はとにかく陽子サイドが長いので、少しカットしてわかりやすくした方が読者が離れていく危険性が減ると思います。
更に更にこの陽子サイドその6からside by sideの最後までずっと戦闘シーン(章の約半分がバトル)なので若干飽きるかな……と感じます。
●その7
>「だって、ある程度は痛めつけた方があとで抵抗されないでしょ!最悪、君が死んじゃったって、ウィスカーの戦力を削ることになるし......。ねえ、全部説明しないとダメ?」
これまでもこれ以降もですが、マオマオの会話が説明的すぎてちょっとご都合的に映ります。小説では映像作品と違い会話で説明をしてしまうと安っぽくなるので、ここは別の手で知らせると良い気がします。
●side by side その1
ここですぐに話を進めればよかったのですが、陽子を探すところからになってしまいます。この章で三歩進んで二歩下がる展開を二回繰り返したため、かなりスピード感は落ちた気がしました。
●その2
>「あなた、まさか」
>「そのまさかだよ。はじめまして、僕は......」
>「沼のヌシ⁉︎」
>「そうだ!僕こそが沼のヌ......、違う‼︎なんだそれは⁉︎」
ここでぶっこんでくると思わなかったのでクスっとしてしまいました。
ツバメ天然疑惑。
●その3
>この場に味方は1人もいない。
腕っぷしの強い仲間が敵になると言う王道展開ですが、ここでも良い感じで困難が待ち受けていますね。主人公が上手く行かないようにするやり方が巧いです。
と言うか初めての仲間が共闘よりも先に仲違い(?)って言うのも中々珍しくて面白い。
この後一応正気に戻しますが、マオマオ自体が強いので一難去ってまた一難と言う展開も良いですね。
●その7
>「まずは諸君、任務ご苦労だったニャ」
>瞬間、ウィスカーの脳天にツバメの拳がめり込んだ。
今回もクライマックスのあとはすぐに幕引き、小気味良いオチを付けて終わるのでやはり作者様は引き際を心得ていると感じます。
・欲を言えばもう5章も終わったので、そろそろ主人公の内面の成長を描いていく話があると尚良い気がしました。
●6章、7章も読みましたが、6章は物語の構造的には言う事がほぼ被るだけ、7章はまだ中途半端なので割愛します。
個人的には青木がどの勢力になるのか、めちゃくちゃ気になる所です。博士と組んだら面白そう。
各論は以上になります!
―――――――――――――――――――――
3、作品の強み(弱み)や個性だと思う所(主観多め)、及び雑談。
・物語の構成やキャラの魅せ方は完成度高いです。表現の方法などの細かい所は気になりましたが、企画の趣旨ではないのであえて書きませんでした。とは言え題材は斬新だし、コメディ部分も面白いし、PV数はもっと行って良いはずです。
もしかしたら題名にインパクトが足りないのかもしれません。作品独自の固有名詞だと惹かれると言うよりは「?」と言う印象が強いと思うので。題名に入れる程のおしゃま要素も少なかった様に感じます。
・物語的にはまだまだ中盤だと思うので(敵幹部っぽい奴がまだ三人いる)、今後を楽しみにしております。
―――――――――――――――――――――――
以上です!
最後に再び申し上げますが、気に食わない所があったら「高田はわかってないな……」くらいに思って頂けると助かります。もしくはコメントにてご指摘下さい。
オジョ様、素敵な作品をありがとうございました!
次の第十五回は、吉野川泥舟 様の「ダメ仙たちと退屈な僕」を拝見させて頂きます。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます