第2回 【色眼ノ使命】―《黒幕》を探し出せ、《赤眼》に狩られる前に―/音乃 様 後編

続きです!

二章からになります!


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●35話 この回、いつか現代文のセンター試験に出ます。

 リアルにここだけで一時間くらいかかりました。


>晴天…、とは言い難い、ちょっぴり雲が陰っている火曜日の朝。首元を撫でつける秋風が少しだけ肌寒い。


キャラクターの心理を天気で表現するのはよくある手法で、読者に登場人物が悩んでいる事をここで示し、この後の展開を予測させやすくします。


>…そろそろ、マフラーを解禁してもいいかな……。


 あとからわかりますが、このキャラクターは如月です。一度読んだ後この文をもう一度読み返してみると、「解禁」の部分がとても意味を帯びてきます。色目族の使命的な物にちょっと疑問を持ちだしている如月はそのしきたりを破ろうとしている(つまり禁忌、解禁)のかもしれません。


>目的地は「学校」~~みんな、『私と同じように』重くもなく軽くもなく、メトロノームのように均等な足取りで、テクテクと歩いている


 学校をわざわざ強調しているので、世界にとっての「日常」を意味していると思います。そしてすぐ後に来る「同じように」は強調されているのでどう考えても「私(色目族)と皆は違う」と言う事を皮肉って逆に表現していますね。

 実は水無月だけではなく、如月も「色目族であること」に負担を覚えている、と言う事が間接的に理解できます。


>――私たちを空から見たら、アリの行列みたいに見えるんじゃないだろうか。黒い『点』がうぞうぞと、まるで、自分達の意思なんて無いみたいに、機械のように進行するだけの。


 如月の台詞です。これは明らかに色目族の事を言っていると思いました。使命と言うだけで、それこそ「自分達の意思なんて無いみたいに」妄信して遂行する。自分も換えの効くその中の「点」にすぎないと。

 そしてそのことを愁いていると言う事は、強い信念を持ちつつも、如月も「これでいいのだろうか」とどこか疑問に感じているのだと思います。恐らく深層心理でそう思っているだけで、自覚はしていない状態でしょうか。

(余談。それを自覚させるの主人公だとすると、過去が不明の異端児っぽい主人公が如月を守るために色目族の常識をぶっ壊していく、そんなストーリーもあるのかもしれないと想像させます)

 更に、これは二章のキーマンである不知火の心情も表しています。「親の刷り込み」により大事な友達を殺してしまった事、が「自分の意思なんて無いみたいに」とリンクしています。とても考えられている構成だと感じました。


>人は、人を、括りたがる。


 色眼族と普通の人たちを差別して欲しくない、つまり自分を自分として世間(または本家)に受け入れて欲しいと如月は考えている。と感じます。


>何かが『起きた』時に、その原因が『一つじゃない』なんて、ごく当たり前の事実から、目を背けて。


 何故かここだけが比喩もなくかなり抽象的で意味深ですが(作者が隠したい→重要なはず)、如月自身の事なのか、これから起こる不知火の事を言っているのか、その他かはわかりません。が、とりあえずは次の台詞を更に肯定する為の台詞に思えました(つまり本当に言いたいことは、次の台詞)。


>みんな同じように見えるアリでも、よくよく見てみると、一匹一匹が全然違う足の動かし方をしている――、なんて事に気づきもせずに。


 後から出てくる事実ですが、ここでは如月自身の失敗した過去、家から追い出されてしまった事への憤りを感じます。恐らく緑も赤も青も本部や本家みたいな物があって、末端の動き回る色眼族たちは使命を遂行しつつ、それぞれが悩みを抱えている。それに目を向けて欲しい、もしくはそう言った状況に強い理不尽を感じている、と言う旨かもしれない、と予想します。窮屈な状況を「解禁」したい訳です。

 またはこれから関わる不知火の行動に対する考えを暗に読者に伝えているのかもしれない、と思いました。考えたらマジでキリない。


>ちょっとでも前向きになるよう、さっきよりも少し太ももを上げて、行進する兵隊みたいにキビキビと歩く


 ここで如月は使命を全うする事に陰りがあったものの「行進する兵隊」=アリ、つまり「点」に意識的に戻ります。小さい頃からの教育は簡単に逃れられないと言う事で、これはあとの不知火にも言える事です(不知火は結局逃れられなかった色目族、その対比として如月は逃れられるのかもしれません)。


そして行進を続けようとした先に――


>…『水無月』…、『葵』くん………。


 主人公が現れる訳ですね。この演出は粋すぎです、見ていて震えました。如月の悩みは主人公が止めてくれる、もしくは主人公に頼ろうとしている事がここで示されています。


>一人呆けたように立ち止まっている『私』を、訝し気な目でチラッと横目で見やりながら――、しかし一瞬で興味を失いながら、『アリ』達が、行進を続ける。


 つまり、他のアリたちは主人公には何もできないと思っていて、頼ろうともしない訳です。如月だけが主人公を信じて、頼り続ける未来を想像させます。


 でも、ここからがちょっと不穏です。


>烏丸くんと水無月君のペアは、立ち止まっている私とどんどん距離を離しており、吸い込まれるように『校門』をくぐっていった。同じような『色』の制服を身に着けた、幾多の『アリ』達と同じように


 如月は追いつくことなく、信頼をなくしたはずの「烏丸」が主人公と「一緒」に「どんどん距離を離して」、「校門」をくぐるんですね。

 校門は入口であり「出口」でもあるので、何を意味するのかで解釈が全く変わってくるのですが……主人公は如月を置いて「烏丸」と共に日常へ戻ってしまうのかもしれません。または如月ではなく、かつて自分の心の支えだった友達と、色眼族を変える旅(死?)に出てしまうのかもしれません。ここはかなり想像が膨らむ場所です。楽しすぎ。


 ここで「同じような色」と来ます。烏丸も実は「青眼」であり、二人が青眼族を率いて赤眼族と戦争でもするのかもしれません。全ては如月を救う為に……だととしたら胸熱です(深読みしすぎ)。


そして……


>――ハッ、と我に返った私も、慌てて『アリの行進』に混ざって、歩みを再開させる。行進を乱さないように、他の『アリ』達と歩幅を合わせながら――


 ここが難しい所です。上記の解釈のまま行くならば最終的に如月と対決するような事になりそうだし、「――ハッ、と」とわざわざ前置きが書かれていると言う事は現在の状況(つまりアリの行進)に帰って来た事を表しているのかもしれません。まだ主人公には力がないので「他のアリ達と同様に」如月は歩かざるを得ないのです。



――と言う、二章開幕から畳みかける様に暗喩がオンパレードでした。この回は短いようでかなりの情報量です。


●36話

・須磨ですが、ここまで引っ張ると完全に伏線なので(取り巻きも含め)後で必ず何かあるだろうな、と読者は予想します。気になるんで出してください!


・「…居るなら、すぐに返事してください、ええと、次……。」

 余談ですが私は学生時代この点呼の時間が無駄でめちゃくちゃ嫌いでした。完全に戦争の名残ですし「見ればわかるのに呼ばなくてもよくない?」とずっと思ってました(どうでもいい)。

 と言う訳で、名前を呼んだ時に返事がなければ目視で確認すると思うので、このセリフはちょっと違和感があったのですが、もしかしたら名簿が席順に書いてないだけかもしれないですね。(新人ですし)


・クスクスと笑うクラスメート達の嘲笑が――聞こえて、来ない。


二章に入り、日常だった「学校」から完全に「新しい世界」へ来た事を示しています。タイミングも簡潔さも、巧い一文だと思いました。



●37話

・>「…そういえば、水無月君は幼い頃の記憶が無くて、ご両親の顔を覚えてないのだったわね。」


 ここはちょっと説明的すぎるのと、コンビニ弁当だよ、の返しとしては飛躍しています。「そういえば、ご両親がいなかった……わね」くらいが自然だと思います。


・>…ホントは、誰かに聞いてもらいたかったのかもな。隣に座る、あまりにも『無防備に生きる』彼女の姿を見て、この子なら、自分の事を『知ってもらいたい』って、思ったのかも…。


一章の終わりの「気付き」をここで自覚しますね。結構重要な自覚なので、欲を言えばもう少しドラマチックなシーンの方が良いと思いました(戦いの終わり際とか)。


・プチトマトの『赤』が目立った野菜サラダ が――、


二回も「赤」強調され、そしてそれを体内に取り込んだ。もしかしたら赤眼の誰かが「仲間」になる事を隠喩しているのかな、と予想します。そうではないにしろ、赤眼が関わってくることは明白だと感じました。


●38話

・>『誰にも喋っていない』と言えば、嘘になる。

これは青眼族かどうかがバレているか聞かれている所。喋る以前に青眼を見られている時点で、喋ったかどうかを気にするのは意味がない事だと思いました。


・>たぶん、『烏丸』は『黒幕』の対象から外していい。

いきなり「黒幕」と言われるのでチクった事の方と、やはりスマホ事件も頭を過ります。ここでスマホ事件を同列に語らないのは不自然かなと思いました。


・閉眼の札の話が再び出る訳ですが、こんな便利グッズがあるなら青眼を殺さずにそれを使った方が世間的にも波が絶たない様な……と思うので、恐らく赤眼族には使えないか、数が圧倒的に少ない等の制約があるのかな、と予想しました。

 その辺りは誰かが気付きそうな物なので、説明を早めに入れた方が良いと思います。


●39話

・> …如月さんが……、『色眼族』が使う、『使命』という言葉の意味を、 僕は、本当に理解できているのだろうか。


 冒頭の如月のモノローグを彷彿とさせる台詞です。理解しようとする準備が主人公に現れました。ちゃんと回収しています。


・前回もこの回も、読者が知っている事を再び説明してしまう事が多く、テンポが良くないと思いました。

 例えば

>『色眼族』は、自分達の存在を隠している(中盤辺り)~~…終盤までほぼ全部カットしても問題ないくらいです。

>………改めて聞くけど、

 ここも改めて聞く目的があまり感じられないので、恐らくいらないかと思われます。


●40話、41話

・今更ですが、この辺の説明は喫茶店で出来る話なので、いま改めてするのは不自然かもしれません……。

 そして二章の長さ的に、そろそろ今回の敵が誰なのか明確にする段階です(文献より)


・ここで御子柴を登場させる目的がわかりませんでした。犯人をほのめかせたいのであれば登場シーンが長すぎますし、絡まなくても物語は進みます。

 この2話ともやはり省くべき説明が多いように思いました。(省くべき、と言うのは物語の進行に全く関与しない情報や読者の予想が付く改めて考えなくても良い主人公の推察等です)


●42話

・>不知火さんと僕の共通点といえば、『図書委員』。『図書委員』といえば、毎週金曜日に『定例MTG』がある。…そういえば僕は先週、風邪で学校を休んで『定例MTG』に参加できなかったんだ。なんか、律儀な不知火さんが週明けの月曜日、つまり昨日…、何か僕に伝えてくれたような――


 ここも、ちょっと説明的すぎです。読者は大体わかっているので結局目が滑る事になり、書く必要がなくなります。地の文は出来るだけ贅肉を落とす方が良いらしいです(文献より)



●43話

 >…ええと、僕は『青眼族』で、僕が『マイナス思考』に囚われると世界が崩壊してしまう危険があって、それを阻止するためにうちの学校に存在する…、と思われる『赤眼族』が僕の命を狙っていて、クラスのマドンナ『如月さん』は『緑眼族』で、『緑眼族』の使命は『青眼族』である僕を守ることで、如月さんはクールな孤高のマドンナだと思っていたら実はただのド天然で、クラスのトラブルメーカー『御子柴』は何かを知っている『ような』雰囲気を匂わせていて、同じ図書委員の『不知火さん』はなぜか僕の事を放課後デートに誘って、如月さんのおじい様はロリコンおじさんで、鳥居先生はテンションがやばくて―――


 前回のラブライブ!って感じで前回見てから一週間経っているならまだしも、連続で読む人が殆どなのでここは全部、カットした方がいいかなと……。

 できれば脳の整理と言う事であれば、もっと悩んでいる事を感情移入できる描写の方が良いと思いました。


>烏丸は、不思議そうな、疑うような、はたまた感心しているような…、よくわからない表情を浮かべながら


明かに様子が変なので、スマホ事件で開いた溝を埋めようとしていたのかな、と考えます。もしくは単純に主人公の「変化」を烏丸に見せるシーン(そして烏丸もそれを見て変化する)かなと思いました。だとしたら巧いですね。


>だから、僕は烏丸と友達で居られる。唯一の理解者として、一緒に居る事が苦にならない。――まぁ、こういう『関係』を『友達』って呼んでいいのかどうかは、わからないけどね。


 語尾に嘲笑か諦めか皮肉のような破片を感じるのですが……ここは心の拠り所を如月に移した余裕なのか、やっぱりまだ烏丸と親友になりたい事への裏返しなのか、その両方か、複雑な感じがします。


>…『その他大勢』の一人として、


主人公の心情ですが、如月の事も入っていますね。



●44話

・>――実際、『命が狙われているかもしれない』状況下で、

 いや、そもそも完全に命を狙われています(普通なら犯人は殺させるつもりで先生にチクったのだろうと推測すると思うので)。

>突如『アプローチ』してきたのは、圧倒的に『不自然』だった。 

一度殺されかけてもいるしここまで警戒するなら別行動をとるのは軽率すぎる、と言うか不自然な気がします(これでは既に「のん気」を獲得している!)。


●45話

>「……もう、水無月君、遅いよ」

あーダメです、拗ねた感じで もう、とか言われると惚れてしまいます(絶妙な萌えポイント)。


>「もう!驚かせないでよ!」

拗ねた感じでm(略


46話

>「…えへへ、じゃあ、お言葉に甘えて………」

は?好き(語彙力)


 この後の展開、眼の奥の色を見る訳ですが、それだけならデートに誘う必要はない訳です(理由を付けて図書室に連れ込むとか)。でもデートに誘った。

 この辺りは不知火の過去を知っていると、「最後」になるかもしれないから本当に楽しんでいた可能性があるし、目の前に現れた相手が「青眼であってほしくない」と願うせいで時間稼ぎ(確認したくない)をしているようにも思えます。(つまり組織的なものから執行役として任命された可能性)

 なので微笑ましくもあり「アリが行進に逆らおうとしている」シーンなのかも、と思いました。

 関係ないけどおっとり内向幸薄キャラ(病弱だとなお良し)が大好物なので不知火に関してはフィルターがかからないようにするのが大変です(ほんとに関係ない)


●47話 この回めっちゃ好き(多分不知火が好きなだけ)伏線凄い。


> …壁を無理矢理でも壊してくれる、『サッちゃん』みたいな子は現れなかった。


 どこか主人公に助けを求めているようにも思えるシーンです。壁、つまり禁忌を無理やり壊す……?冒頭の如月と同様、主人公は色眼族に取って重要な働きをするのだろうなと思ってしまいます。


 主人公の目の中を確認した後、

>不知火さんはなんだか寂しそうな表情を浮かべていた。


 とあるので、やはり青眼であって欲しくなかった(もう誰も殺したくなかった)事が分かります。ここも二回読まないと分からない部分で、凄く良い伏線になってます。


そしてそのすぐ後に

>水無月君は、もし、『自分では無い、他の誰かになれる』としたら、どうする?


 と聞くので、不知火は「自分ではない他の誰かになりたい」訳です。

 つまり現状から抜け出したいと思っていて、でも完全に諦めている(主人公と言う希望を持っている如月との対比)。

 つまり不知火は「絶望」しているんですね。だからこそ主人公に曲がった聞き方をしてみる。「絶望に慣れている青眼ならどう考えるのか」と。


>僕は自分の事がそんなに好きなわけじゃないけど、違う誰かになるのは、なんだか怖い気がする。


自分を好きとは言わないが、主人公は「自分は自分でありたい」との旨を答えます。(これはこの物語のテーマ的にクライマックスでの伏線の可能性もあると思ってます)


 ここでは不知火は目線を外し、再びまっすぐと『宙』を見つめながら――

>「――私は、『サッちゃん』みたいな子に……」とまるで、『自分には何一つ当てはまらない』と言わんばかりに。


言う訳です。そもそも絶望しているので「私には無理だ」となっちゃうわけですね。


ここで一章最終話の、如月の台詞が伏線となって響きます。

>「…『悲しみ』に打ちひしがれる人に対して、周りの人が救いの手を差し伸べることができれば、誰も、『絶望』なんてしないはずよ。」


 主人公には不知火が何となく「悲しみに打ちひしがれる人」に見えているはずです。ここからどうやって手を差し伸べて行くのだろうな、と非常に気になる展開へ導きます。


●49話

>これが、『青眼の使命』ってやつだろうか。

 主人公も自らの枷を意識し始めているので、そろそろ主人公が本気で頑張ろうとする、目標に向かえるようなゴールが欲しいと感じました。


・まだこの御子柴のシーンは必要ないように思います。タイミング的にも今は不知火がメインなので、三章で関わるなら二章のラストか三章の最初で出すのが散らからずに済むと思います。(二章のラストで出て来たのが正にばっちりのタイミングだと思いました)


●50話

>果たして、『如月さん』の~~、この手紙の送り主の存在が成立しないんだ。


この辺りも数回目の説明で、読者も勘づくのでカットした方が良いかもしれません。


>――そして、『面白がる』という、愉快犯のようなニュアンス……なんか、そういう事しそうな奴が身近に居る気がしなくも――


ここも御子柴だろうなと予想が付いているので、わざわざ書くとテンポが落ちてしまいます。



●52話

>「………『赤』、『青』、『緑』…、『色眼族』の感情が大きく変化した時、その眼の色がそれぞれの『種族』ごとの色に染まる……、という話は、以前にしたわよね?」僕は力の無い所作で、コクンと首を縦に振る。――知ってるも何も、『身を持って経験している』。「………『色眼族』が持つ『色眼』は、普段はまっくろな『黒色』に覆い隠されているのだけれど………、その眼を近くでじぃっと覗いてみると、『水晶体』のその奥に、『色眼』の持つ『本来の色』がほんの僅かに光っているの。」


ここも同じような理由で、最後の方の「眼を近くでじぃっと覗いてみると、『水晶体』のその奥に、『色眼』の持つ『本来の色』がほんの僅かに光っているの」

ここだけで十分伝わるので、長いと逆に頭に入らない場合があるのでカットした方が良いかもしれません。


>「………『焦り』は、『絶望』の入り口。あなたには、何があっても、何が起こっても………、堂々と、すべてを『笑い飛ばす』くらいの、『のんき』さが、必要だと思うわ。」


如月の台詞ですが、「何があっても」の所が未来の主人公に何か悲劇が訪れる予感を感じさせる良い台詞ですね。(恐らく笑い飛ばせない状況が来て、最終的にはその強さを手に入れられるのかもしれない)


●53話

>「………何? 愛の告白、かな?」


そうです(直球)


 冗談は置いておいてここから終幕が始まる訳ですが、一章に山場が一つだと少ない気がします(文献より)。三章を含めると全部で十五万字近くになるので、文庫本一冊は終わるくらいですから、起承転結なら山場は少なくても三つ欲しい所です。


●54話

>まずいまずいまずいまずいまずい 堪えろ、堪えろ


 殺されかけているので、能力を出さない理由がちょっとわかりません。そして抗おうとするならやはり「もう一人の自分」がいると葛藤がしっくりきますね。


 あと少し、不知火が喋りすぎな気もします。公園で散々悩んでいる事は理解しているし、赤眼族っていう事と使命は読者も理解しているので、家族の話をほんの少しすればよいのと、最後に「さっちゃんは青眼族だったの」だけ言わせれば、殺した事を主人公が勝手に察すると思うので、そちらの方がスマートかと思います(文献の「語るな魅せろ」)。


●55話

>ああ、僕は今、『絶望』しているな


だから水無月君、簡単に絶望しすぎ!目の前の女の子が人殺しだと言う事実と、ヤバそうな相手が現れるくらいで絶望するのはまだ早いです。如月にも協力を頼んでいる訳で、絶望まで沈むのは説得力にかけてしまいます。



>「私たちは――『同類』だ。 ……って。」


 前の台詞から、この同類が「人間的」と言う事と「種族的」な意味を含んでいる事が分かります。主人公と全く同じ生き方をして来た訳です。

 これはよくある構図で、相手のエピソードが、もしかしたら主人公が「同じような運命を辿っていたかもしれない」お話を、主人公に疑似的に知らせてくれている訳です。

 そしてこれを聞く事で自分はかなり不幸だと思っていたのに「相手の方がよっぽど辛い」と言う事がわかってしまい、自分の悩みが浅く感じてしまう事にこのシーンの最大の意味があります。

 定石通りに行くと、この事は主人公の中で尾を引く出来事になるはずです(価値観の変化のきっかけになる)。

 そう言う意味でも、不知火は主人公を成長させるために欠かせない重要な敵キャラだと思います。



>……水無月君と、ゆっくり話してみたかったからだよ。フツウに、君の事を知りたかったんだ。


 これはあかん。高田泣いちゃう。


>………ねぇ、水無月君………。………私と、一緒に―――死んで―――


 ここの「私と一緒に死んで」にルビを振るなら間違いなく「助けて」だと思います。

 ねじ伏せて貰う事で殺さずに済む言う免罪符と、似ている自分を受け入れて欲しいと言う事です。あえて主人公と不知火の違う所をあげるなら境遇と、不器用だったと言う所ですね。


●56話

>――今度こそ、『ダメ』………か。


 前話であれだけ不知火がお膳立てしてくれたので、ここは諦める様な描写は良くないと思います。怖い、逃げたい、でも不知火(境遇の違う自分)を止める(助ける)んだ!くらいの気持ちがあると気持ちいいし、もっと盛り上がると思います。

 そうすれば一章と比較して、かなり積極的に「影の自分」を求める事になるので、内面的な変化も描けることになります。


 如月が助けに入るのですが、如月に「協力して欲しい」と言うのはそう言う事だと思うので、途中諦めてしまうのは余計不自然な気がします。


●57話

>「――思い出したの。」

 このタイミングで思い出すのはちょっと不自然なので、どこかで如月と不知火が日常の会話をして仄めかしておくと、すっと入ってくると思います。


>「………『火』を操る『赤眼』の名家――、『不知火家』……、あなた、不知火家のご令嬢だったのね」

 これも、このタイミングで気づくのはちょっと遅いと思いました。赤眼がクラスにいるかも、と言う話をしていたので……それこそ名家であれば真っ先に「クラスに不知火っておるやん怪しいやろ」と疑う描写が必要になるかと思います。


●58話

 如月との戦闘が始まってしまいましたが、やはりこれだけ似ている敵キャラを主人公が倒さないのは勿体有りません。一章と全く同じ展開なので、敵を二人用意するとか如月が拘束される等、何だかんだ安全地帯にいる主人公を無理やり引っ張り出す必要があります。

 そして二章も終わるのに主人公が一回も戦っていないのはちょっと勿体ぶりすぎる気がしました(これまで主人公の活躍が皆無なので……)


・結構何度か「終わった……」と主人公は絶望っぽい事を言っていますが、能力は発言しないのかなと思ってしまいます。


●59話

>幽霊みたいに生気の無かった不知火さんの『赤眼』に、『動揺』という名の『鈍色』が混ざる。

 如月がさっちゃんの担当だったと言うだけで、動揺するのはちょっとよくわからなかったです。不知火が如月の友達だったなら動揺しますが、如月がミスった話をしているだけなので「それで?」で終わる気がするのですが……。

 実はさっちゃんは青眼族ではなかった、くらいのインパクトが欲しいと思いました。

・動揺を誘うだけなら(誘えていない気もするのですが)さっちゃんの話がちょっと説明的すぎるような……孤児になった理由とか、如月身の上話はこのシーンでする話ではないと感じます。


●60話

>救いを求めるように、『とめて』と、叫び声を上げるように、弱々しく、たどたどしく、『善悪』の判断が未だついていない、子供のような眼で―――

 冒頭にもあった如月の迷いの理由が完全に現れました。使命と言う理由だけで人を傷つけたくないと言う事です。

 そして善悪の判断が付いていない……と書く当たり、これを良しとするか悪とするか、どちらにも転ぶ可能性があると言う事を示唆していると思いました。誰が誰の敵になって行くのか、考察しがいのある文です。


>彼女が……、如月さんが、壊れてしまいそうで……。そう考えたら、怖くて怖くて、仕方がなかった。


 主人公の描写です。先程、どこかで書いた分析がモロに現れています。主人公の「大事な物」が壊される事については、めちゃくちゃ行動力を発揮する事実がここで回収されます。

 不知火の話と一緒にやるのはかなり濃くなる内容です。


●61話

>「なんとなく、気づいてたけど………、ホント、バカみたい………。」


 不知火の台詞。自覚はあったが、と言う事だと思いますが、いきなり悟り出すのは少し腑に落ちないので……同じ境遇にあった主人公の喝的な物と、その彼に完膚なきまでの敗北を与えられるとかイベントがあると説得力があると思いました。


>「………『ありがとう』……、ね、水無月君………、如月……、さん、も。」

 負けた事で死ぬ事への理由が得られたと言う事だと解釈します。つまり色眼族は「死ぬ事さえ」自ら選べないくらい洗脳、教育をされている事が分かります。恐ろしい。


>『僕』や、『彼女』のような『孤独な』人間が陥りがちな、『歪な思考回路』。…彼女は、きっと、――たがっている………。

 これは主人公が過去に「自殺しようと思った事がある」と言う事で、この辺の深い闇は追々語られると思いますが、気になる所です。


●63話

>――『おすそ分け』――

 必殺技的なものはそういうものがある事を早めに読者に知らせておく(できれば全体の25%までに)必要があります(文献より)


>「………あなたが、屋上から飛び降りて……、いや、『その前』から、水無月君が、『空』に向かって駆け出していたの。それを見て、私、『あ、水無月君助けなきゃ』って………。勝手に、身体が動いていたわ………、空中で、水無月君の身体を掴んだ時、あなたの顔がチラッと視界に映った。そして――。」


 さすがに説明的すぎて、不自然な気がします。次の台詞を考えると、ここは全部要らなくても大丈夫な気がします。


>彼女の『黄色い』笑い声。

 これ、めっちゃいいですね。このシーンにピッタリな表現。黄色、つまり緑でも赤でも青でもない色。これだけでどこにも属さない感情と、和解と、トラウマから一時的に開放出来た事の表現だと思いました。


しかも赤(不知火)と緑(如月)って混ぜると「黄色」になるんですよね……。作者様は恐らくこれを暗示しているのだと思います。二人はここで完全に混ざったと。


>「……なんか、もうどうでもよくなってきちゃった………。」

 どうでもよくなっちゃった、は先頭の時も言っていた台詞ですが、まるで違うニュアンスになって対比になっているのがわかりました。彼女が完全に変わったと説明する文章にもなっていて、巧いと思います。


・不知火、もう現れないと言いつつ味方として出てきそうですね



●64話

>「………何ボーッとしてんだ。さっさと終わらせようぜ。」 ――終わらせるって、何を………?「………何をって、『掃除』だよ、『掃除』


・何故納豆なのか、を考えましたがやはり「腐っている」事がインパクト強いので、腐っている何かを掃除する、と言う意味合いでしょうか。

 するとやっぱり主人公と烏丸が手を組んで色眼族の「腐敗したしきたり」を「掃除する」未来の暗喩のように思えます。(完全に主観)


>自分達の見える世界『だけ』が全てだと信じてヘラヘラ生きている『黒眼』も、


 もしかしたら一般人も巻き込まれる事を意図しているのならば、先生が自暴自棄的に見えるあの体育館での行動も理解できます。そこまで考えての伏線だったとしたらヤバすぎです。一杯食わされた気分になります。


> 僕は、『夢』の世界から抜け出す方法なんて、知らない。


 完全に今ある状況を何とか打開できないかと悩む主人公が伺えます。(できれば完全に不知火を救えなかった事、等の葛藤がきっかけだと良かった)

 そしてそれを手助けするのは如月ではなく……


●65話

>―『夢だから』

主人公がずっと思い込む事で納得させてきた「仕方ないから」の言いかえに聞こえなくもないです。それをようやく自分から抜け出そうとしている。


>『意識』の外側にいる『僕』が、今思考している『僕』の事を、――何かから、『逃がそうとしている』?「夢の世界に閉じ込めようとしているんじゃ』


 これは間違いなく「青眼の自分」敵であり味方であるもう一人の自分で、やはりないがしろにして置けない問題だと気づかされている気がします。


>あらゆるオブジェクトが『腐食』した、『退廃』の、世界。

やっぱり自分の中の深層心理みたいですね。


 御子柴的には相応しい登場シーンだと思うので、彼女を始めてがっつり出すタイミングはここで良いかなと思いました。(文献。そのキャラはそのキャラに一番相応しい舞台で出さなければならない)


●66話

>――『楽園』を望んだのは、君じゃん。


 お前いつまで逃げてんねん、って感じの喝を主人公が入れられたように感じました。


>……『孤独』って、最強だよね。哀しくも、つらくも、寂しくもならないもんね。


これは明かに皮肉で、主人公の(不知火の)彼らなりに必死に選んできた生き方をここで侮辱されます。


>そんなもの、それこそ………、『死んでいる』のと、何も変わらないじゃないか―― …そう、思っているつもり。自分に、ウソは吐いてないと思う。…でも、何故だろう。――その思いを、言葉にして吐き出す事を、『身体が拒否している』


 一度拒否して自分の生き方を肯定しようとしますが、「こいつの言う通りだ」と自分で気づいてしまいます。そして「拒否」と言う事は自ら変わろうとしている。

 そう思うようになったのは如月や不知火との出会いがあったからで、きちんと内面的に成長を遂げている事をここで示している訳ですね。


>水無月君が『ホントウに』大切にしている人なんて――ヒトリも、『居ない』もんね~~~~~?」


 つまり、主人公はこれくらい色々な人に色々な方法で背中を押されないと踏み出せない訳です。エヴァのシンジ君並みにじれったい性格をしていますが、生い立ちや境遇を考えれば無理もない訳で、これでもかと言うくらい突き落とされるのは主人公の務めでもある。

 頑張れ水無月。これくらいやられれば、次にいきなり能力を使いだしても説得力十分です。


・御子柴は須磨のように「悪党」ではないですが「悪役」をかっている訳ですね。多分絶対味方(望み)。


・夢の世界、つまりもう一人の自分とめっちゃ話せるチャンスでしたので、ここはがっつり登場してもらえると展開的にも良いと思いました。


●67話

>天から、神々しい程に『黄色い』一筋の光が差し込み、

黄色、と言うのがまた出てきました。もしかして青眼に対して赤眼と緑眼が共闘するのか……?なんて思ったりします。



・一章同様に二章もですが、クライマックス(物語の山、不知火との戦闘)の後がちょっと長すぎる気がします。物語の山が終わった後はすぐに終わるのが余韻も残り、美しいとされています(文献より)







 各論は以上となります。

 三章も読みましたが中途半端すぎる為(分析の意味が余り無いため)、切り良くここまでとさせて頂きます。どうかご了承ください。(続きは気になるので、個人的に読み続けさせていただきます)



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3、作品の強み(弱み)や個性だと思う所(主観多め)


・作品ジャンルはホラーになってますが……ホラーではない!かなり勿体ない気がします!

 多分PV数があまり伸びてないのもジャンルの所為で、現代ファンタジーにした方がぐっと伸びると思います。

 王道ですし、毎日投稿、しかもそろそろ二十万文字行くので、多分最初からやっていたら少なくとも二万PVにはなっていたかな、と……(少しの統計と経験則と多大な主観)


・とにかくさりげない伏線がヤバすぎです。二回くらい読まないと分からないものが散りばめられているので、二回目に「なるほど~!」となる事が多くて、楽しいです。


・いわゆる能力ものなのですが、変に技名を言う系ではなく、バトルも比較的少ない、キャラで魅せて行く系の現代ファンタジーです。能力は題材に過ぎず、ボーイミーツガールに重みを置いているので、かなり一般受けするかなと思いました。


・各論でも絶賛しましたが、作者様はキャラには意識させず、でも内面は変化していく過程、しかもそれを明記せずに読者へ伝える。

 これを何度もやってのけるので「は?天才かよ……」と正直思いました。くださいそのセンス。


・まったいらな水面に小石を投げ入れるかの如く、声を発する。

 無機質に鳴るメトロノーム音のように、点呼と応答だけがつまらなそうに教室に響いた。(7話)

 椅子取りゲームで流れる音楽が止んだみたいに、ぐるぐる回転していた思考が、静止する。(31話)

 など、地の文に目を見張るものがいくつもあります。純文学並みにエモい事をいきなりぶっこんで来るので「おぉ……」と唸るシーンが何度もありました。



・作者様はきっと「ネタを挟まないと死んじゃう病」です(褒めてる)。




――――――――――――――――――――――



 以上です!



 個人的に不知火好きなんでまた出してください(小声)


 何度も申し上げますが、素人の分析や評価なので……気に食わない所があったら「高田はわかってないな……」くらいに思って頂けると助かります。




 音乃 様、素敵な作品をありがとうございました!







 次の第三回は、大木 奈夢様の「私を小説家に連れてって (私小連 : ししょうれん) ―― 十八日間のラブストーリー ――」を拝見させて頂きます。

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