第22回 プリムスの伝承歌-宝石と絆の戦記-  / 流飴様 後編

続きです!


●第9話 視察Ⅲ


>「今はかろうじで暮らせていますので現状維持を望む者もいます。何かを犠牲に行動することは難しいのです」


 村の人たちの内情なのですが、これはリアの心情にも繋がっていると思いました。よくある技法の他のキャラが主人公や別のキャラの気持ちを代弁するやつですね。

 リアも今は辛うじて暮らせているので強くなる事を夢見つつ現状維持していますが不満は確実に蓄積されています、ですが何かを犠牲にしてまで変えようとは思っていません。優しいので(健気!)。

 こうしてみるとここはちょっとテーマっぽい所ですね。襲撃を受ける事によりこの考えを変える事を余儀な超絶上手い。

 総論では書いていませんでしたが、この視察の話自体は凄く良くできているしキャラの深堀りなども出来るので、余計に勿体なく思います。物語のゴールに関する伏線を入れて何とかしたいと感じます(伏線がある場合このあと全然出てこないのでそこを改善、あと物語の20%までに非日常へリアをぶち込む問題などもありますが)。



>「長様。それはリア様に責任を負えということでしょうか?」


 この回中々秀逸な展開が続きます。未熟な主人公に責任を負わせる展開、成長を促す鉄板のお話。

 ただしこれが活かされる事なく襲撃でシ-クエルがながされてしまうので、この判断のせいで困難にあうリアを見たかった気もします(村人が密告の罪で貴族に酷い目に遭わされるとか)。



●第9話 視察Ⅳ、Ⅴ、Ⅵ


・この辺りのシーンの目的は貴族の悪行や街の声を読者へ知らせる為だと思いますが、酒場のくだりはプロットの進行に関係ないのでちょっと贅肉感が強いかも……。「革命派」と言う過激な、しかも伏線っぽいものが出てきますがそれも些か無駄な情報に見えます。

 ※酒場~水浴びのシーンを削っても物語全体に影響がない場合カットするか、物語に絡ませる要素を挟む必要があります。



>「……報告は以上です」


 ちょびっと細かい指摘が続きますが、ここは「優しいだけじゃダメ」的な試練をリアに背負わせるチャンス!

 なので報告してしまう少し前に報告するかしないかの葛藤シーン(シークエル)を入れるとこの三点リーダーにもぐっと重みが出るかなと考えます。ちなみに誤解のない様に言うとここは普通に良い場面なので悪しからず。



●第13話 手合い


>リア様。騎士団長様に日頃の成果を見ていただいてはいかがですか?」

>「僕はクラルスが手合わせしているところが見たいな」


 憧れの父親と手合わせが出来るシーンですがなんとここでリアはクラルスに譲ります。この少し前に

>突然の父上の提案に心臓がはねる。

 とあるので、これは巧みな心理描写が隠されている訳です。「こんな機会は滅多にない」とも言っているので、緊張しつつも憧れの存在と手合わせを願うのが今後王国を背負う騎士団長を目指すとしたら普通です。

 そこで強かにもクラルスに手合いを譲ると言うのは明確な「逃げる」行為、つまりリアはまだまだ「自信」がない訳ですね。目標そのものを相手にした時にどれだけ今の自分との差が開いているかと言う現実から目を背けた訳です。

 これは物語を通してリアが克服して行かなければならない内面の欠点であることを暗に示しています。内面を語ってしまうような無粋を避け、くどく描写しない所が活きていくる演出!こういうのは伝わる人に伝わればいいのです。


>父上と手合わせができなかったことは残念だが仕方ない。


 今の深読みを考慮するとここの気持ちは「実は手合わせせずにほっとしていた」可能性も考えると真逆の意味になるので面白い。



●第14話 親子


>水路やスクラミンの内情を調べなかった場合、クルグから誘導されていたのだろう。

>証拠がなければ裁けない。無理に強行手段を取ることはできないそうだ。


 正直特に気になる訳じゃないので面倒くさいクレーマーみたいな事を言ってしまいますが、なんとなくここは主人公を視察に行かせると言う作者の目的を思わせるような些かご都合感が残る展開に映りました。でも主観です!

 水路の事を報告しているなら民を苦しめて(待たせて)までわざわざ主人公を向かわせる女王に思えませんでした(心苦しいとは言っているが)。

 報告が正しければ確実に証拠はあがるのでこの女王であれば自分の子供の成長の前に民を救う為、迅速に別の視察団を派遣しそうな印象です。読み取り不足だったら申し訳ない……。

 


>「……リア。自分が王子だからといって決められた道を進む必要などありません。あなたが自分でしたいと思ったことをやってみなさい」


 母の台詞ですがやはり「自分で能動的に行動する」と言うのがリアの越えるべき自分の欠点ですね(テーマ)。

 ここまでお膳立てを受けているので、恐らく終盤はその方向に変化する事はほぼ間違いないでしょう。



>母上との抱擁はいつぶりだろうか。甘えてはいけないと思い、親と子のふれあいを無意識に拒んでいた。


 物語は主人公や成長、変化するものです。これはその変化前の片鱗を表す非常に重要な文章だと考えます。親離れ、自立する(抽象的な意味も含めて)と言うのは古今東西の物語で語られる鉄板の命題。

 ここでは自立しようと頑張っているが、やはりまだ母親の愛情が恋しいお年頃と言う事を示しています。背伸びをしているリアの等身大な可愛い所が垣間見えて感情移入できるし凄く良い。



●第15話 隣国Ⅰ


 少しキャラについて参考文献から。

1、キャラクターは多すぎるよりは少なすぎる方が良い(理由はキャラの掘り下げが困難、文字情報なので読者が混乱するなど)

2、全部のキャラは「そのキャラがいないと物語が成り立たない」くらいの役割が必要(居なくてもなんとか成立するなら要らない)。


 と言われています。


 さらにもう一つ「今後長い間クルグが出てこない」と言う事を考慮します。


 これを踏まえた上でアシジュとロゼの二人ですが、後々まで見ても必ず物語に必要かと言われると……居なくても成立する可能性が高いのでもう少し物語の本筋に絡ませるか役割を合体させる等を採用すると無難です(第6曲以降に出てくるなら聞き流してください)。

 その上でクルグの事を考えると、客観的にはここで新キャラ二人を投入するよりクルグを再登場させた方が無難かなと考えました(クルグが視察のみのぽっと出キャラになると彼がいなくても物語を回せてしまう)。

 ※良いとか悪いではなく、あくまでこれは参考文献からの私なりの例です。


 ちなみにアシジュとロゼですが、ここでリアに好意的ではない騎士達であれば「いらない」と言われている不遇設定を存分に活かせます。ですがクルグ同様にリアを厳しく扱う訳ではないので、ストーリーが割と順風満帆に見えて対立要因が少ない原因になっている気がしました。

 

 これは余談ですがアシジュ・ロゼ→アンジュエール・ロゼ?でワインから取ってるのかな~と思いました。

 関係ないですが名前の由来の続きで、クラルスはラテン語で「光り輝く」とかあるそうなのでこの小説のモチーフである宝石になぞらえて付けたのかなと予想します。



●第16話 隣国Ⅱ


>実際、亜種族を見るのは初めてだ。僕と同じくクラルスとロゼも驚いた表情で去って行く兎を見ていた。


 ここまで数万文字読んできて、全くの新情報「亜種族」が出てきます。これは今後の伏線なのでしょうがさすがに後ろ過ぎるかな~と考えます。その理由は以下のものです。

 ご都合主義を避けるために物語に出てくる全ての情報(キャラ、設定、小道具など)は全体の20~25%くらいまでに出せばよいとされそれについては当てはまっているのですが、この「亜種族」と言う人間以外が居る設定はかなり世界観に影響します。

 これは個人的な話ですが、数万文字読んだら大抵世界観は確定しているので「プリムス」の世界観に浸りつつリア達と旅をしていたらいきなり「え、そんなのもいるのか」と現実に戻されました。

 場所で言うと遅くとも視察の段階くらいで情報を出す方が無難かも。スクラミンでマリを襲った「狼型の野獣」を亜種族に変えるだけで危機感や対立の予想が相当変わりますし、世界観と期待が膨らんで読み進めるのも更に面白くもなると考えます。



●第17話 隣国Ⅲ


>「ウィンクリア王子。お待たせしました。どうぞおかけください」


 めちゃくちゃ関係ないんですけど私の中でガルツの声が鳥海浩輔さんの声で再生される(余談すぎる)。


>他に北の大国フィンエンド国のティグリス元帥


 少し前にもフィンエンド国が出て来たので、これは完全に伏線ですね。原石を宿しているらしいのでここが味方に付くか、敵になるか、第三勢力になるのか、面白くなる予感しかしない。個人的には最終的に第三勢力になる所が見たい(妄想)。


>ここまで来て引き返すわけにもいかない。僕はガルツ王子の元へ歩み寄る。


 リアの性格じゃ目が合ってしまったら「じゃ、これで」と言う訳には行きませんね。感じ悪いし。リアの内心「めんどくさ……」って思っていそうな所が伺えるシーン。



●第18話 隣国Ⅳ


>彼は僕の髪を少しすくうと口づけをした。

>「あ……あの……」

>「失礼しました。あまりにも美しい銀髪でしたので」


 ガルツが攻めでリアが受けですね(違う)。逆もありだが(黙れ)。戸惑うリアが普通に可愛くて困る。


>あまり他人に触れられたことがないので、どういう反応をしていいのか戸惑ってしまう。


 そのままガルツに身を任せればいいんだよ(違う)。

 冗談はさて置き、母親にハグされた時も驚いて身を引きそうになっていましたし、幼少期からふれあいが足りていなかった事が伺えます。周囲には煙たがられていただろうし、両親は恐らく公務であまりかまってやれなかった。セラも多分英才教育で時間は少ないだろうし。

 なによりも苦手と明言している得体のしれない相手、そして同性なので普通だったらちょっと拒否るボディランゲージをしそうなものですがリアは戸惑うだけです。愛情飢餓的な意味で深層心理に身体的接触を欲するものがあるのかもしれない。

 あ、ここにも父との手合いを避けた要因があるのかも。幼少期にあまり触れられてこなかった事で何かしらの自分を守る理由をしみこませていたら、過去の自分を守る為無意識に両親との身体的な接触を避けるかもしれない(深読みすぎる)。

 と言う、この一文だけで寂しい幼少時代を過ごした事がよくわかります。



>「ウィンクリア王子。民の平和を維持するために必要なものは何だと思いますか?」


 総論でも書きましたがここで二人の意見が割れます。リアは博愛、ガルツは力。もろに相反する対立思想なので面白い対比になっています。

 そしてその後の

>「同盟なんて書面上の約束事。

 が完全に伏線になっています。読者の不安を煽る良い配置。

 余談ですが博愛なら力を抱きかかえる事も出来るのでそう言うラストになるのかもしれない。



>「……僕にはガルツ王子の考えはわかりかねます」

>「……まだお若いですね」


 ここも中々クソエモい会話なんですね。何がエモいかと言うと、初めてガルツの人間性が垣間見えるからです。ここで間髪入れず「まだお若いですね」と切り返されればいつも通りの彼なのですが、間が入る事により初めて愁いと言うか躊躇と言うか、彼の「隙」が露になります。昔はリアのような考えをしていて、何かの事件をきっかけに価値観を改めたのかもしれません。


 そしてここで「ガルツは何故夜風に当たっていたのか」と言う疑問が浮かびます。酔いを醒ましていたと言えばそれまでですが、このシーンが象徴的なので彼も隣国を攻める事への多少の躊躇があり、それを夜風に当たって溶かしていたのかもなんて妄想します。

 そうであればあのタイミングで平和の維持に関しての話題をするのも納得が行きます(しかも意味深にその前に世間話や、沈黙している)。攻め入るこの王子ならどうこたえるか、それを推しはかると同時に心に響くような言葉を期待していたのかもしれません。

 なんて考えるとこの時にガルツに刺さる台詞を言えていたら襲撃も回避できた未来があったかも……。なんてことに気付いて後々軟弱な思考をしていた自分を責めるリアなんかが描写されるのも中々面白いですね(妄想が過ぎる)。



●第19話 神殿


 ファンタジー増し増しの中、宝石の設定&主人公への枷が決定付けられる超重要なシーンです。世界観が深堀りされ個人的にはお気に入りの所なのですが、物語の進行上ここに挟まれるのがちょっと不自然でした。いや、リア達にとっては隣国へ行ったついでにって感じなのですがメタい目線から見ると何故今ここでこのイベントが絶対に必要かの理由が薄い様に思います(ちょっと細かい)。

 参考文献では物語の展開はドミノ倒しのように前の出来事が次の出来事に関係する様に動かなければなりません。ここのイベントは最初でも視察の時でも構わないので、重要な話ですしここで挟むのは些か遅い気がします。

 次の重大イベントである襲撃が来るからそろそろ入れとこう、と言うような作者様の意図がバレる読者にはバレますし(違うにしてもそう予想する可能性がある)、人は物語の構造に意外と敏感なのでそんなこと考えずに読む人にも説得力に欠ける展開に映る可能性があると考えます。

 何が言いたいかと言うと勿体ないと言う事です。この確実に入れなければいけないシーンが少し雑に投入されているので、入れるべき時に入るともっと感動を呼べるような気がしました。素敵なシーンなだけに余計にそう思う。



●第20話 真実


 この辺りは知らなくても半ば予想は出来たと思いますが、やはりあらすじで知ってしまっていたので驚きと言うか、感情の起伏はあまりありませんでした……。

 ですがこれで最後にリアは「これからどうすればいいのか」と言う新しい葛藤に苛まれます。ずっと受け身だった彼にようやく能動的に行動を迫る展開がやってきました。これでちょっとした物語のゴールが見えるので、やはり前話含めこのイベントはもう少し前に欲しいかな~と思います。出来れば視察前でしょうか。



●第23話 夜会Ⅰ


>僕は自分の意志で何もできないまま、国の操り人形として生涯を終えるのだろうか。


 さぁ非日常の始まりが近づく中、ようやくリア自身が立ち向かわなくてはいけないテーマであり葛藤に触れました。これを変革していく物語なので、インサイティングシンシデント(非日常に飛び込むイベント)が起こる直前にこれを入れるのは上手い!と言わざるを得ません。

 さらに二週目以降に気付く事ですが事件への悪い報せ的な伏線になっていました。これは最初気付かなかったです。



●第25、26、27、28話 転機Ⅰ~Ⅳ


・良い意味で何も言う事はないです。ベリースマート。長さもちょうどよく、緊張感がずっと続く素晴らしい展開。ここから完全にリアは非日常へ。

 客観的に見るとここからが第二幕に入って行くように見えるのですが、一応参考文献では全体の20%くらいに第二幕へ突入するのが理想とされます。まだ全体の長さは決まっていないのでこれが遅いか早いかは分かりませんが、完全に二幕へ入った感じが分かるのは良い展開です。


・ここで原石の力を発揮するのは何となく予想出来ましたが、何処で使うのかな~とワクワクしながら読んでいました。襲撃のシーンかと思いましたが違いましたね(ていうかバレるから使えないですね)。誰かを傷つけるのではなく癒す(守る)為に初めて発動するのはリアの性格からしてとても説得力がありました。


・一つ懸念があるとすれば、今まで登場した騎士団が出てこないのはかなり不自然に映ります。つまりクルグとシシジュ。読んでいて早く来てー!助けてー!って感じでヤキモキしました。

 ここでロゼのように出てこないとなると、彼らがスパイだったとかそう言う設定が後に分からなければ「何故出てこないのか」の理由が付きません。

 リアルの話なら何処かで戦っていて偶然出てこれなかったのだろうと言う予想で済むのですが、物語は全てに必然性がないとご都合主義になってしまうので注意です(後々出てくるのであれば聞き流してください)。



●第30話 金剛


 斎主から神託的な形でアイテムを授かりますが、ここで一応キャラの役割について話しておきます。

 主人公やその仲間に物を授ける役割のキャラを賢者や贈与者などと呼びます。賢者は物々交換で、贈与者は無償で提供してくれたりします。この二つに共通する事は必ず感情的に納得出来る理由があって何かを授けると言う事です。

 例えば賢者だったら千と千尋の神隠しの湯婆婆(名前と仕事を物々交換)

 贈与者だったらわかりやすいのは友達や家族や仲間で、愛情故に何かくれたり自分を助手として差し出します。

 個人的な理由が何もないのにアイテムを授ける場合はただの予定調和になってしまうのであまりよろしくありません。この斎主が実はクラルスにゆかりのある人物だったとか(村の生き残り等)星影団とつながりがあったとかバックグラウンドを書く必要があります(後で出てくるならOKです)。


●第31~35各話ひとつづつくらいのなので纏めて。


・第二幕に入ると新しい目的(セラを救う)新しい武器(ダイヤモンド)、新しい仲間(星影団)が手に入る事が定石です。この辺りはそれを無駄なく進められていて凄く読みやすかったです。


・クラルスが既にダイヤモンドを使いこなしてしまうのでここも困難が薄くなる要因の一つです。使いたくても中々使う事が出来ず「リア様をお守りしたいのに……!」みたいな葛藤を彼に与えた方が面白くなるし燃えると考えます。

 その場合自分の不甲斐なさにリアを星影団へ一時的に任せ単独で修行するなんてイベントがあると熱いですね(妄想)。私がクラルスの物語でもあると言ったのはこう言う所です。


・それとなくクルグやアシジュに触れるシーンがあったのはグッドでした。これがないと混乱しているとは言えリアの彼らに対する想いがそうでもないような印象を受けてしまうので。


・この区間はリアの「甘さ」を克服する第一歩のシーンだと伝わってきました。しかもきちんとアクション(星影団への勧誘)からのシークエル(リアクション)の流れでしっかり悩ませてから決断させたので説得力のある彼の「変化」として映ります。ここ凄く上手い。



●第36話 始動Ⅰ


>正体が露見しないように給仕人の正装に、だて眼鏡をかけた簡易的な変装をしている。


 構造の事とは関係ないので一応突っ込もうかどうか迷ったんですけど、これは一読者として書きますね。

 一般人に姿が割れていないとはいえミステイルにはバレているので簡易的な変装で人前に出まくるのはちょっと狂気の沙汰に思えます。それじゃなくてもどこでバレるかわからないのに危機感がなさすぎる気が……。せめて物品整理なり品出しなりの裏方を任せる方が自然な気がしました。

 給仕をやることが超重要な伏線になっているのならまだアリかなと考えます(それだとしても二人はイケメンで目立つのでやっぱり迂闊すぎる気がしますが……)。


●第37話 始動Ⅱ


>「護衛はいいとして、王子のほうは置物以外に役に立つのか?」


 ルフトが良い感じに対立キャラになっていますね。このまま引っ掻き回すのかと思いきや普通に善良なのでそれはそれで良キャラです。魔法の師匠キャラでもありますね。師匠キャラはよく死にますのでちょっと心配。リュエを身を挺して守って……とかありそう。


>星影団に入団したからには彼に認めてもらいたい。


 キングof健気。何よりも自分から行動を起こそうとするのは変化の兆しなのでこれは必須イベント。


●第38話 始動Ⅲ


>スレウドとルフトには慣れるの時間かかったのに、リアとはもう仲良しなのね」


 善の特性を持つ主人公の特徴として動物や子供に好かれると言う物があります。まさにそうなっていますね(リアが動物に嫌われるのは想像できないが)。

 余談ですが逆にそう言った主人公が動物や子供、霊的なものにやたらと嫌われる場合違和感が発生するので伏線に使えたりします(つまり意味もなく嫌わせたりできない)。


・敵が大国に~と言う緊張感から若干失速しだした所で拠点の移動と言うスパイス。長編ではこういうのが大事ですね。高田も一応小説を書いたりするのでわかるのですが、特に第二幕は読者の関心を維持し続けるのが一番面倒くさ……もとい、大変なところだと思います。



●第40話 忠誠


 結婚式の回ですね(違う)。

 割と重要な回、と言うより唐突に入って来たシーンに思えるので何かのフラグにしか見えなくて怖い。

 読み進めると一応このあと何もない訳ですが今後も関係が変わった事をもっと周囲が驚くとか力が強くなるとか目的がないと、何故今のシーンをこのタイミングで挟んだのかと言う謎が残ります(戦争前の決意表明?)。

 ちょっと前と重複しますが「ここでやらなくても良いシーン」になっている場合、プロット上意味のある場所を探す必要があると考えます(素敵な場面なのでより映えるシーンにするために!)。


●第41、42話


 リアの天然ひとたらしぶり(言い方)がわかるこの二話、キャラが深堀りされていて好き。是非クラルスサイドも見たいですね。星影団の面々に感情移入させておいて戦争への懸念を更に上げる事もシーンの目的かもしれませんが、成功していると感じます。



●第43話 作戦


>この戦いに負ければ星影団は戦力を失ううえに新拠点も奪われてしまう。再建はかなり厳しくなるわ」


 対立で一番大事なのが「負けたら何を失うのか」で一番いいのは全てを失うと言うのが定石ですが、これは正にそうなっていて緊張感が高まる状況です。

 ただし一個だけ気になる所が。


>「リュエールさん。星影団の兵力はどのくらいですか?」

>「今の時点で一〇〇〇に満たないわね……。


 繰り返しますが困難は大きい程面白く読者が「勝てるのか!?」と思う事が大事です。約千vs千八百だと実に微妙な数字(勝てそう)なのでもっと極端が良いかもしれないと考えます。

 例えば奇襲が成功した桶狭間の戦いだと五千vs四万五千(諸説あり)、地の利を生かしたスパルタのテルモピュライの戦いだと七千vs数十万(諸説あり)なので桁違いです。両方少ない方が勝ってます。史実でこれなので小説では更に絶望的なくらいがインパクトを残せると考えます。



>「リアも私と同じ指揮が執とれるようにしましょうか。万が一私が指示を出せなかったときのためにね」


 良いお膳立て!まだまだ受け身なところがありますが、リアの成長の目的ドストライクな展開です。これは期待。


●第44話 二人


 一人称のデメリット炸裂で主人公以外の場面を見せる事が出来ないってやつですね。二人の会話を聞いてしまうと言う展開は王道ですが自然に挟めた気がします。



●46話 戦いⅡ


>「ミステイル軍! 僕はここだ!」


 ここでばっちり今までのお膳立てが効いています。優しく戦いに向かない性格をしている彼が初めてと言っていい主体的な行動。初見ではよくやった!って感じで気持ちが良かった。

 魔法は使わずに(と言うか使ったらバレる)自分の力だけで立ち向かった事に相当意味があるように思えました。


・この辺の戦記感が「プリムス」のコンセプト(売り)。しかもバシバシ前面に出せるレベルです。


●47話 露見


>「早めにわかったほうがいいだろう」

>「ルフト! 少しはリアのこと考えて!」


 唯一である仲間内の対立要素ルフトが重宝されるとこです。いい働きしやがるぜ(誰)。

 引っ掻き回す損な役周りですがリュエを心配したりと憎めないキャラにしてあるのが上手い所。嫌われ役(悪役)へ好感を持たせる技に「動物を救う」とか「涙もろい」とかありますが、「誰かを守ろうとする」と言うのもその一つですね。


>リュエールさんの黒い笑顔が怖い。ルフトさんはいったい何のお仕置きをされるのだろうか。


 えっちなやつですよね?(違う)


●第48~51話


 この辺りで魔法の説明はグッドですね。ここまで読者を引き付けていれば最後まで読むと思うので多少の説明展開はあっても大丈夫かと思われます。説明は読者が気になってから説明すると説明に感じないとされます。

 余談的に、ご存知かもしれませんがこれを冒頭からやってしまうとアウトでした。ストーリーが進む前の説明は御法度ってやつです。


 最後に次の目的を設定して次章へ。良い終わり方だと考えます。





各論は以上です!



――――――――――――――――――


3、作品の強み(弱み)や個性だと思う所(主観多め)、及び雑談。


・宝石をファンタジーのモチーフにした所と戦記の組み合わせがこの小説の武器ですね。さらに「陸に上がった河童」と言う技がありますが、主人公がそれに当たります。戦記と言う壮絶な物語の主人公が心優しい少年で過酷な選択を迫られて行く。物語で一番変化しそうな性格を主人公に据える素晴らしい採用です。


・些か各キャラクターが善人過ぎる気がしますので、もう少し癖のあるキャラ(二面性のあるキャラ)を投入してもいいかもしれない。


・ターゲットをもっとニッチに絞ってもいかもしれない。作品の空気的にいっそのこともっとBL要素を入れるとか(横暴)。


――――――――――――――――


 以上です!


 最後に再び申し上げますが、気に食わない所があったら「高田はわかってないな……」くらいに思って頂けると助かります。もしくはコメントにてご指摘下さい。



 流飴様、素敵な作品をありがとうございました!




 次の第23回は、柊月 様の「ノア」を拝見させて頂きます。

 

 

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