金縛りと痣
これも宮城県在住時の体験、この出来事は当時ブログを書いていてそこに記録していたので日時がはっきりしている。2010年6月23日のことだ。
午前中、金縛りを初体験した。身内には経験者がいたが、わたし自身は初めてのことだった。
この日は朝早く目覚めたのだが、すぐに座椅子でまた少し寝てしまった。すると夢を見た。
たまに行くデパートに夕方出掛ける夢だった。買い物を済ませて外に出ると予想以上に暗くなっており、早く帰らねばと思った。ところが身体が望む通りに動かず、晦冥も異常に深くなっていく。
気付くと、わたしは見知らぬ二十代前半くらいの女性と一緒に、彼女の部屋らしきところにいた。明るさは朝方くらいだ。
わたしは敷物の上で右向きに横になっていて、女性は起きている。部屋の備え付けの電話が鳴り、女性はそれに出た。
わたしは夢の中で寝た振りをしていた。そしてその電話が、最近女性のもとに掛かってくる呪いの電話だと知っていた。
音声を聞くとまずいのだが、女性は受話器をわたしの左耳に当て、呪いを肩代わりさせてきた。受話器からは、「うぅ……あぁ……」という、唸るような若い女の声がした。
そして自室で目覚めた。
背もたれが動く椅子を倒してそこに右向きに横になり、手を目前に置いていた。夢で寝ていたときと同じ姿勢だ。自分の部屋はいつもの様子だった。
ところが夢の電話の声が、相変わらず左耳に聞こえていた。
やがて自室は、震度三ほどの勢いで揺れだした。
さらに、横に置いていた右手の手首から肘にかけて、焼け爛れたような青い痣が広がっているのを目にした。そんなものはわたしにないはずだった。
恐怖よりも、夢の終わり方や日常の悩みに加え、こんな災いが降り掛かることに怒りが沸いた。
だから怒鳴ろうとした。しかし、声を出せなかった。
満身も動かない。――金縛りだった。
女の声と部屋の揺れは徐々に大きくなっていく。それでも気力を振り絞ると、なんとか発声できた。
「バカにするな!」
そう怒鳴ると同時。
腕の痣は消え、女の声も揺れも止み、身動きできるようになって飛び起きた。
夢の内容は概ね支離滅裂なので単なる夢なのかもしれないし、科学的にも説明されている金縛りの要因なのかもしれないが、目覚める感覚は確かに一度しかなかったので奇妙だった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます