中庭の少年
確か高校三年の頃。午後の授業中で、わたしが一番後ろの方の中庭に近い窓際の席にいたときだった。
わたしの通った高校は中庭を囲って校舎ができていた。あるとき、あいていた窓の外のそこに幼稚園児ぐらいの男の子が入ってきたのが、ちらと視界の端に窺えた。
事情は知らないけど、中庭には外から入れるところもあるのでそこから侵入したのだろうと思った。もっとも、わたしは子供が入ってきたことをみんなに指摘して騒ぐような性格でもなかったので無視していた。
そしたら、あろうことか少年はこちらに近寄ってきた。そのまま、わたしのすぐ横の窓の枠に肘と顔を載せて、にこやかにこちらを眺めだす始末だった。
それでも、わたしは前述の性向だし授業中だったので見て見ぬ振りを貫いていた。
早くクラスの明るい人か教師かが気取って対処してくれないかな、などと思っていた。
ところが、みななかなか気づかない。
変だなと感じ、どうして忘れていたのかわからないけど、たぶん学年が変わって教室を移動して間もない頃だったせいだと思う。
そこでふと、おかしいと悟った。
この教室は、一階じゃないのだ。
二階か三階、確か三階だった。中庭は一階にしかなく、窓の外は空中だ。
当然、「えっ!?」と思って少年の方を直視したが、その時にはもう彼は消えていた。
怖くはなかったが、驚かされた経験だった。
建物自体と関係があったかは定かでないが、そこはよその高校と統合されて、今は校舎自体がなくなっている。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます