ビデオには入っていた

 おそらく、中学三年の頃のことだ。

 わたしはオカルト趣味なので、街中に、あるのかないのかわからない怪現象を探しに行くような遊びもしていた。

 これも、そのうちの一つだ。


 あるとき、親がいらなくなったとしてビデオカメラをわたしにくれた。古いテープ式のものである。

 まだ携帯電話も普及しておらず、今のように手軽に動画も撮れない時代だった。それからしばらくして、わたしと数人の友達はこのビデオカメラを用いて、何かを撮影しようと出掛けた。


 とりあえず、近くの神社を撮ってみた。撮影中は、特に貴重なものが映った風でもなかった。

 家に帰ってざっと確認してみても同上。不思議なものが撮影できたなどということもなかった。

 それでもこの頃は、動画を撮れるという機会自体が現在より少なかったので、わたしたちは満足していたと思う。

 その後。撮影したものをわたしが一人で観賞していたときだ。

 映像に変化はなかったが、音が奇妙であることに感づいた。


 神社の全景を撮っているシーンで、金属を擦るような奇怪な音色が録音されていたのである。

 おまけにそれが、当時流行していた呪いのビデオを扱ったあるホラー映画の効果音にそっくりだった。


 だからこそ偽物っぽいとも思えるかもしれないが、そんなものを意図的に録音していたなんてことはない。現場でも鳴っていなかったはずの音である。

 だいいち、問題の場面でビデオの中のわたしは何も聞こえていないかのように普通にしゃべっていた。怪音のほうがわたしの音声より大きいくらいだというのに。


 後になって、一緒に撮影した友人たちにこれを見せて聞かせてみたが、誰もそんな音が現場でしていたなどという記憶はなかった。

 あれはいったい何だったのだろうか。ビデオカメラ自体が当時でも古かったので、故障とかが原因という可能性もあるのだろうか。

 このときの映像と音声をどこかに保存しておいたかはよく憶えていない。

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