不吉な初夢

 2000年代中頃。これは予知夢とシンクロニシティの複合のような体験かもしれない。


 わたしはあるとき二年連続で同じ神社に初詣に行き、一年に一回ずつ、そのときしかおみくじを引かなかった。そしてどちらも大吉だった。また後の方の年の一月一日には、大吉を引いた人は良い初夢を見られるというお札をもらえた。

 わたしもそれを戴いたのだが、見た初夢はこんなものだった。


 母と祖母が、死んだ母方の祖父の仏壇の前にいる夢だった。そこには掃除機があって、それが破裂するのである。

 掃除機の外側を構成するプラスチックが熱で溶けたもののようになって母と祖母に振り掛かり、二人は病気になった。

 祖母に至っては、身体のある個所に特徴が出る症状を示した。


 嫌な気持ちで目が覚めた、悪夢だったのだから。

 初夢が悪夢というのは、これを記している2020年代初めまで唯一の経験である。

 前日のお札の件があったので、「初夢はどうだった?」と家族に訊かれたが、正直に良い夢ではなかったと内容を明かしたと思う。


 そしてその年。

 母と祖母は実際かなりの病気になり、祖母は夢と同じ個所に夢と同じ病状が出るものだった。母の方は外見には症状が出ないものだったので、そういう点ではこちらも一致していたのかもしれない。


 前述の通り夢のことは話していたので、家族は予知夢ではないかと驚いたものだった。

 ただ、夢が実現するまでの期間が長いし、大吉やお札や初夢といった、大抵いいことに繋がりそうなものを悪い予知夢に結び付けるのは関連性が薄い気はするので、やはり偶然かもしれない。


 さてさらに次の年。前年そんなことがあったのでおみくじを引く前に悩み、一人の参拝客に先を譲ると、その人は大吉、次に引いたわたしは中吉だった。

 吉凶の善し悪しの順番は神社によって異なるが、大吉に続いて中吉が善いとするところもありわたしはそう思っていたので、はっとしたものだった。

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