宏観異常現象

 これは厳密にはわたしの経験したことでもないが、印象に残っている出来事だ。


 宮城県仙台市在住時、ある晴れた日の昼過ぎ頃。

 わたしは青葉区から泉区にちょっと入ったところにある大きな道路の隅を自転車で走っていた。

 途中、歩道を歩いていた小学校低学年くらいの男児と女児四人くらいとすれ違ったのだが、子供たちは東の空を指差して「リュウだ、リュウだ!」と嬉しそうにはしゃいでいた。

 周りの歩行者などは無反応だった。


 何のことかとは思ったが、おそらく龍か竜にでも似た雲でも見つけたんだろうななどと軽く考えてわたしは彼らが指差す先も確認せず、単に微笑ましい光景だな程度に思って通り過ぎた。


 この後、一週間も経っていなかったと思う。


 2011年3月11日、東日本大震災が発生した。


 大地震の前触れなどとして動物が変な反応を示したとか地震雲と呼ばれる特徴的な雲が現れるといった科学的には未確認な現象を、宏観異常現象こうかんいじょうげんしょうという。


 被災した後になってこのことを振り返って、もしかしたらあの子供たちが見たリュウとは、そういう地震雲か何かだったのかなと思った次第だ。


 あるいは本当にリュウみたいなUMAか何かだったのか、同じ光景に出くわして空を確認した人、もしくはあの子供たちに話を聞いてみたいものだ。

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