自転車のカエル


 高校時代は自転車通学だった。これは、二年か三年の朝の登校時のことである。

 高等学校の駐輪場に着いて自転車を降りると、ハンドルのところに雨蛙がこちらを向いて乗っていた。

 ほとんどさっきまで握っていた箇所だしそこまで走っていたので、そんなところにいつ乗れたのだろうとは思ったが、ごく普通のカエルのようだった。


 すると、そいつはわたしの方に跳んできた。

 わたしはそれを目線で追い、自分のお腹の辺りの制服表面にぶつかったカエルが、そのまま頭から消えていくのを目撃したのである。


 服の中に入ったか地面に落ちたのかとも思ったが、数分探してもどちらにもいなかった。下は疎らに草は生えていたが校庭の隅なのでほぼ砂地であり、見通しもよかった。

 見間違えか幻覚といってしまえばそれまでだが、これはわたしのこうした経験について様々な疑問を抱かせるきっかけとなった事例だった。

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