かくれんぼ
小学校高学年の頃。
夏から秋くらいに到る季節のことだったと思う。その日はわたしの家に家族が不在で、せっかくだからと招いた二人の友達AとBと共に、たった三人だけど家中を使ってかくれんぼをしようということになった。
時刻は夕方だった。
鬼のAが一階で数を数え、わたしとBは二階に隠れた。わたしは自分の部屋に、Bは隣の部屋に入った。
最初、わたしはまじめに隠れようとしたが、たった三人のかくれんぼという状況がなんだかおもしろくて、ウケ狙いで、あえて部屋の入口を開けっ放しにして屈み、頭に座布団を構えるだけというバカな格好をした。
ほどなくして階段を上ってきた鬼のAさえ確認できたが、こちらを見向きもせずに、真っ直ぐ隣室に向かった。
「B見っけ」
という声がして、おそらく真剣に隠れたであろうBが最初に発見されたのがまたおかしかった。部屋同士は近く戸も開いていたので、会話がよく聞こえた。
さらには襖の開け閉めのような音がして、
「安紗奈(実際はわたしのあだ名、以下同一)見っけ」
という歓声までした。いったいなにと勘違いしてるんだろう、と考えてわたしはクスクス笑っていた。
ところが、様子がおかしかった。
Bは、「ここに安紗奈はいないよ」などと、わたしを庇うような素振りをする。対するAは、こんなことを言った。
「嘘だよ。さっき襖をちょっと開けて、隙間から目が見えたもん」
家には三人以外誰もいない。ペットなども飼ってない。
じゃあいったい、襖から覗いた目とはなんなのか。
ゾッとしたわたしは、たまらず隣の部屋に自ら駆け込んだ。
AとBはわたしを見て唖然としていたと思う。Bも襖が開いて閉まったので、そこにわたしが隠れたと思ったのかもしれない。
もちろん会話は全部聞こえていたし、かくれんぼをするまで三人はずっと一緒にいたので、AとBが共謀でドッキリを計画するなんて暇はなかったはずだ。
三人で恐怖に戦きながらも意を決して襖を開けてみたりもしたが、やはりそこには誰もいなかった。
それからはもう家の中になどいられず、三人で外に出てやがてAもBも帰り、わたしは両親が帰宅するまで震えながら待ったものだった。
あの押し入れにいたという目は、いったいなんだったのだろうか?
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