お盆の神社

 小学校中学年頃のこと。

 お盆の夜に母方の祖父母の家に親戚一同が集まり、父とわたしを含む子供たちは肝試しと称して近所の神社に散歩へ出掛けたことがあった。


 目的地の神社は、ある長い直線の道路の突き当たりにあり、その道に出る横道はいくつかあって、かなり離れたところから出てきたわたしたちは、社に向かって真っ直ぐ歩いていた。

 ところが、神社の鳥居まで50メートルくらいの位置にきたとき。


 いきなり、神社が発光した。


 社自体は鳥居のさらに数十メートルほど奥の林の中にあり、鳥居は林の手前にあったのだが、木々の深くから鳥居を浮かび上がらせるような強い光だった。

 光の色は白で稲光くらいの明るさ。神社からのもののようで、雷鳴はなかった。他の音もせず、光だけである。


 ために光を浴びるや、わたしや従兄などは後ろを顧みた。背後から近付く車のヘッドライトなどが反射したのかと推測したのだ。

 しかしそこに車などなく、ヘッドライトやそれに類するものもなかった。そしてすぐに、再び神社のほうから同様の閃光が放たれ、わたしたちは紛れもなく社辺りが光っているのだと認めた。

 もはや、一行は神社に近付くのをやめていた。一番幼い従妹は怖がって大泣きするし、唯一の大人の父は酔っ払っているしで、ちょっとした混乱にさえ陥った。

 この間にも神社は同じ強さの発光を繰り返していた。回数は詳しく覚えていないが、一分ほどの間に十回くらいは光っていたと記憶している。


 結局光の正体は判明しなかったが、近寄らないほうがいいと判断し、わたしたちはやがてそこから道を引き返して家に帰ったのだった。


 あれが何なのかは2020年代初めの現在でも不明だ。

 この神社にはそれ以降もその前も夜にも度々訪れているが、あの現象は一度きりだった。お盆の夜には他に行ったことはないが、関係はあるのだろうか。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る