夢と現実でのリンク
小学校中学年の頃。
このときは夜、自宅二階の同じ部屋で家族と寝ていた。朝になると、わたしと父だけが部屋でまだ横になっていて、一階からは起きている家族による物音がした。
わたしは目を覚ましただけで、しばらく動かずにいた。父は隣で眠っている。
ふと、あるとき伸びをするように、一瞬両腕を上に挙げてみた。
途端。
ばしん! と寸分の間も置かず、片腕を父の片腕で叩き下ろされた。
ぎょっとして確認したが、父は目を瞑って普通に眠っているようだった。
それ以降動くこともない。
わたしは釈然としないまま起床した。父もしばらくしてから起きてきたが、何事もなかった様子だった。
ただ、父は興味深い夢(本人にとって。わたしにはとてつもなくつまらないのだが)を見たときにその内容をしゃべったりするのだが、このときもそんな話をしてきた。
それは、デパートのようなところで、家にあったぬいぐるみたちに追いかけられてあちこち逃げ回るとかいうもので、よくある荒唐無稽な夢に過ぎないように思えた。別に、怖いとかいう風でもなく、父はおもしろがっていた。
夢の話が、ぬいぐるみたちが飛び掛かってきたというところに到達したときだ。
「こうやって振り払ったんだ」
と手振りを交えた父の説明が、わたしの腕を叩き下ろした仕草にそっくりだった。
わたしは、ああそれで、と思った。
寝相のようなもので夢の動きを反映してしまったのだろうと。
父にも言ってみて、実際そのときは普通に寝ていたようなので、そうかもしれないということになった。
だいたい、わたしが腕を上げてから叩かれるまで本当に一瞬で、かなり注意を払っていなければできないような反射神経だったのだ。
しかし、後から疑問もわいた。
父の夢の長さはかなりのものだった。そのストーリーが、わたしが腕を上げるタイミングにちょうど重なるだろうか。
だいいち、父は夢の中でそれ以外にもいろんな行動をしたと解説していた。なのに、なぜあのときに限って動いたのだろうか。
就寝中の父が夢を反映して現実で動作した事例さえ、これを書いている2020年代初めまでわたしは他に記憶にない。
父の証言が真実なら、まるで夢がこれから現実で起きることを予期して構築されていたかのようではないだろうか。
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