窓の外に

 小学校中学年の頃、父方の実家の他県に住む曾祖母が亡くなったときの話だ。

 もともとわたしの家系は父方も母方も、こうした奇妙な経験をしている人がけっこういる。曾祖母は、そんな父方の家族の中でも特にいわゆる霊感が強い方だったらしい。

 就寝中に幽体離脱を何度も行い、遠くに住む自分の家族のもとに幽体で会いに行ったりしてその先で認知され、現実では離れた場所にいるはずの双方の証言が、示し合せたでもなく後からぴたりと一致するとかいう出来事を起こしたような人だったと聞く。


 そんな曾祖母の葬儀のために、父の実家に泊まったときだ。


 夜。わたしが居間でテレビを観賞していると、歯を磨くために洗面所にいた父が、「変なのがいる」と呼んできた。

 行ってみると、父は洗面所にあった表に通じる曇りガラスの窓を指していた。見ていると、確かに窓の外のすぐそばを白い物体が高速で往復するのである。

 それは数十センチの白い布のようなシルエットで、窓の前だけを時折右に行ったり左に行ったりしているのだ。


 場所は二階で、そんなところを地上から移動できるような足場はない。夜だし鳥のようでもなかった。三階もあったが、あんな物体を往復させられるような細工はし難い位置だし、家の中から悪戯をしている形跡もない。

 なにより、わたしたちが正体を確認しようとタイミングを計って窓を開けても、白い物体は見当たらないのである。何度試みても無駄だった。ただ閉めているときのこの窓の外だけを、そいつは往復するのだった。


 結局、どうしようとも正体を確認できそうにないので、やがてわたしたちは観測をやめた。朝にはもうそれはいなくなっており、後に現れたという話も聞かない。

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