痕跡との一致
小学校高学年か中一のときのこと。ちょっと汚くて恥ずかしい話なのだけど、それでもいいという人だけお読みください。
その頃、あるアニメで夜寝ていた主人公が目を覚まし、二階の自室窓からおしっこするシーンを見て、楽そうだなと思ったことがあった。
そして冬。
わたしはこんな風にオカルト好きで信心深いので、夜中にトイレに行きたくて目覚めたときに怖気を震うことがあった。加えて、冬季などは寒くてあまり部屋から出たくないときもある。だから、そういうときは件のアニメみたいに二階の寝室から外にして済ましてみようかとも思っていたことがあった。
かくして、ある夜中に尿意を覚えて起きたときに、実行してみた。
しかし、いざ普通に地面までおしっこが届くような窓があるかと思うと怪しく、向かいの家なども気になった。万が一、近所の人に目撃されたら嫌だなと、別な窓に向かった。
そこはベランダがあり、手すりで囲まれているので隠れられるし地面まで続く排水口もある。わたしは夜喉が乾くのでサランラップをしたコップ入りの水を枕元に常備していたし、それで流させばいいと閃いた。
こうして、ベランダで用を足して水で綺麗に流して手も洗って寝た。
ところが時期は冬。日が昇ってもその跡が乾くことはなかった。
それを家族が確認したのだからめんどうである。
ベランダには屋根もあるのに昨日までなかった妙な跡ができたので、家族は「こんなところを水漏れするようになったの?」と疑った。地元は雪国で降雪はしょっちゅうあったから、融けた水がどこかから漏れた可能性も疑ったのだろう。
けれども昨日まで一切なかった跡だ。まもなく家族はわたしに、「ここからおしっこでもしなかったか?」と冗談めかしてはいたが図星な指摘をしてくるに至った。
わたしはなんだか情けなくて、「し、知らない」などと、とぼけるばかりだった。
ところが家族はしつこい。二、三日くらいこの跡についてぶつぶつ言うので、〝嫌だなうるさいなさっさと忘れてほしいのに〟、とわたしは強く思ったものだった。
すると、家族は納得したかあきらめたかのように、あるときからピタリと何も言わなくなった。
なんでだろうと確認してみると、ベランダにまだわたしが用を足して水で流したのと同じ痕跡があった。
何日も経てば、さすがに乾くはずだ。
屋根つきのベランダとはいえ吹雪や風雨ではそこに水が入って濡れることも稀にある。最初は偶然それで濡れたのかなかとも疑ったが、冬だろうがそうしたことがない晴れの日ももちろんあるし、これまでそんな跡ができることはなかった。
無論、完全に乾いたときもある。
それでも、雪が降ればまたそんな風に同じ跡ができる。
春になり跡が完全に消え、翌年の冬になると、やはりそのように跡が現れる。それはこれを書いている2020年代初めの現在まで続いている。
どうやら窓が結露して、そこの水分がそういう風に流れているらしいのだが。この一件がある以前まで、そんなことは一度もなかったのだ。
おわかりだろうか。
わたしが二階の自室ベランダにおしっこをした日から、それと全く同じような痕跡を残す結露の水の流れが出現したである。
もちろん偶然そういう風になる時期が一致した可能性もあるだろう。けれども超常現象なら、シンクロニシティのようなものなのかもしれない。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます