陳列棚と幽霊

 高校を卒業して専門学校に進学しても、奇妙な現象とは遭遇した。最も多かったのが幽霊のような者たちで、二十数回くらいは出会ったと思う。


 いくらかは幻覚だろうし、もしかしたら全部がそうだったのかもしれない。特に、陳列棚のある店内で会うことが多かった幽霊のようなものに関しては疑わしい。

 なぜかといえば、彼らはわたしが棚の商品を眺めているときに視界の端に現れて普通の人間と見分けがつかないのだが、店の籠を持っていたり商品を手に取って棚に戻したりさえすることがあるからである。わたしが棚から離れる際に、彼らとぶつからないようにそちらに歩こうとしたりしてその方を向くや消え失せ、初めて人でないと察するのだ。


 これで彼らがいわゆる幽霊のようなものなら、他の客からは籠や商品が浮いているように見えそうなものだし、防犯カメラにも映っているはずだろう。そんなことが話題になったとは聞かないので、彼らはまず幻覚だと思う次第だ。

 陳列棚がある店でよく見るというのも気になる。わたしは人が苦手なようなところがあるので、狭い店で客が大勢いることに対するなんらかの精神的なものが見せていたのかもしれない。


 もっともこれもちょっと不思議で、陳列棚がある店に出現する幽霊のような者たちは、専門学校通学時から卒業後の数年間だけ集中的に見たのである。その前後に、これといった心境の変化はなかったと思うのだけど。

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