奇妙なくじ引き

 これを書いている2020年代初め時点まで、わたしはくじ引きでたいしていいものを当てたことがない。ただ一度だけ一等を当てたことがあるが、この経験がちょっとおかしかった。


 あれは小学校低学年の頃だと思う。

 どこかの観光地で祭りの屋台のような店が出ていて、そこでくじ引きができた。

 親からお小遣いをもらって一度引いてみると、案の定、それまでもよく引いていた下の方の等で、景品はなんてことのないスーパーボールだった。残念がるわたしに、これまでの人生でこのときだけ、父が笑ってふざけ、「悔しかったら一等を当てみなよ」と変な挑発をした。

 そこでわたしは母に頼み、もう一回だけ同じところでくじを引かせてもらうことにした。


 すると、それが本当に一等だった。

 景品は高級そうなロボットのプラモデルだった。わたしは父に向かって得意げに言ったものである。


「悔しかったから一等を当てたよ!」

 

 父は仰天して苦笑いをしていた。

 ちなみにこのプラモデルはやたら組み立てるのが難しく、途中で放り出して捨ててしまったと思う。

 もちろん、ただの偶然である可能性は捨てきれないが、超常現象に分類するなら奇妙な偶然の一致シンクロニシティ、に該当するのではないだろうか。

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