階段に座っていた

 高校二年か三年の日の夕方、わたし以外に家には誰もいなかった。

 学校から帰宅して一人廊下を歩き、リビングに向かおうとしていたときだ。途中、横に二階への階段があるのだが、その前を横切った瞬間である。


 階段の三段目くらいに、何かがいた。


 それは全身真っ白でつるっとした質感の、猿のような姿で屈めた膝の上に両肘を乗せ、上に伸ばした両手の平を開いてそこに顎を乗せており、この体勢で三〇センチくらいの身長。痩せていて、ただの黒い丸が二つ、目と思われる位置にあるだけのものだった。

 階段は横にあるので視界の端に見たのだが、はっきりと覚えている。


 時間にして一秒半ほどだろうか。

 リビングに向かうつもりだったのでわたしはそれを横目に見ながらも階段を通り過ぎてしまい、すぐ疑問に思って踵を返して階段を覗いたが、もうそいつはいなくなっていた。

 一瞬で視界の端ということで、見間違えや錯覚、幻覚などかもしれない。

 しかも後から、祖母の家にあった置物に似ていた気もした。まあその置物は五センチくらいの緑色で、特に印象に残っていたわけでもないのだが。

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