act.11:ロストワールド・スカルグラウンド









 気象操作旧支配者 ギガフラシ

 超古代竜旧支配者 ゴルザウルス

 大飛竜旧支配者 ジャンドラーゴ

 髑髏巨神 スカルキング


 登場








「くぁー、久々にちゃんと朝に起きれたわ〜〜……!」


 デウシアは、女神という肩書きを忘れる大あくびをして、雑魚寝していた廊下の寝袋から起き上がる。


「最近の寝袋凄いわね、普通に寝れるもの……あー、でもなんか全身が固まっているこの感じ……何千年ぶりかしらね……!」


 そう言って、近くのヤカンの中の水を直に飲んで、あられもない下着姿から、女神の神性が感じられない、作業用のTシャツにややくたびれたジーパン姿へ着替える。


 彫刻のように美しい身体のラインや絶世の美女の顔立ちが無ければ、どこかにいそうな女作業員そのままの格好だ。






「━━━━貴女、女神の体裁がここまで感じられない格好をよく出来るわよねぇ〜〜?」






「未知の大地くんだりまで転移してきて小言をいう女神よりマシよね、フィーリア??」


 す、と後ろに現れた女神フィーリアに対して、はいはい何時ものいつものとでも言いたげな態度で答える。


「もう貴女もここにいるのだし、『未知』ではないわよね」


「戦の女神は侵略の女神でもありって?

 自分のことながら神様って不便よねぇ?

 巨大な力があるくせに、制約、制約、とやたらに条件ばっかりで!」


「貴女は神が嫌いなのね」


 ふっ、と大仰に肩をすくめるデウシア。


「そういうあなた、最近下界の様子はちゃんと見てるのかしら?」


「ええ。目を覆いたくなったとしても、見なければいけないもの」


 ふと、フィーリアが悲しそうな顔で、あるものを渡してきた。


 それは、なんの変哲も無い、新聞だった。


「…………HALMITやここはある意味、」


 受け取り、デウシアは1面を開く。


「こう言った場所からは、遠いものね」




 見出しはこうだ。


『ついにこの世の終わりが来た!!』


 燃える街を笑うように見渡す、岩のような邪巨神の姿が大きく見出しに描かれていた。


 次の面も、『止まらない巨大な災厄』の文字。やはり被害の大きさを示す写真が載る。


 なんの変哲も無い新聞には、邪巨神の恐ろしい姿を写す以外の記事がない。


 それほどまでに……ここではない場所の被害は大きかった。




「私も地獄なんて場所には行った事無いけれども、もしもそこにいる奴にコレを見せたのなら自分の場所と勘違いするほどね…………チッ!!」


 グシャリ、と新聞を丸めて潰し、だいぶ溢れているゴミ箱へ投げる。


「そんなに怒らないで……我々は何もできないの」


「昔は出来たってのに!!

 信仰心を集められない自分が一番腹立たしいわッ!!」


 少しは落ち着こうと、デウシアは再びヤカンの水を飲む。


「プハッ……一刻も早く、髑髏大地こんなとこに向かってる奴らの秘密を暴かないと……ッ!!」


「しかし、なぜこんな場所に……あら?」


 ふと、壁の方を見たフェイリアがそんな声を出す。


「あらら……デウシア、こっちに来てちょうだいな!」


「はいはい、な━━━━」


 と、フェイリアの方へ一歩進んだデウシアの背後に、ズボッ、という音と共に何かが壁を突き破ってくる。


「うおわぁッ!?びっくりした!!」


「あらあら……外は大変ねぇ……?」


 フェイリアは、女神の千里眼で外を見ながらそう頬杖をつきながら呟いた。


       ***


『退避!!避けろアーシャ!!』


 ズンッ、と大地を抉るパワーで、黒い巨体が跳躍する。


『嘘だろぉぉぉぉ!??』


 紙一重で避けた竜騎兵の過去の位置を、巨大な腕が空を切る。

 避けたはずなのに凄まじい旋風で、近くの飛竜ごと煽られ地面へ落ちかける。




「━━━なんてパワーなんだ……!!」



 ジェットウィンガーから見ていたパンツィアは、それのパワーに驚愕するばかりだった。


 あの巨体が、まるでブレイガーOの如き動きをしたのだ。


 そんな常識外の事が、目の前で起こったのだ。


「何より、この邪巨神……!」


 グシャリ、と周囲の土を巨大な拳で握りしめる。


 元の世界の相撲の力士が、土俵に巻く塩か何かのように、こちらへ向かってそれを投げつけてきたのだ。


「うわっ!?」


 点ではない、線の攻撃。

 当然範囲は広く、こちらを安安と落とせる威力まである。


「コイツ……頭も良い!」


 とっさにくぐり抜けたパンツィアは、後ろの竜騎兵の心配もよそに突撃していく。

 ターゲットスコープを上げる。

 照準を見ながら、20ミリ回転機関砲を作動させる。


 カカカカカカカカッ!


 それの頭に当たった20ミリ弾は、いとも簡単に弾き返される。


「体表の硬さもかなりある!」


 ブォン!!


 巨大な腕をかわし、その追撃のたくましい尾の一撃もウィンガーは躱す。


『せんせーすっごーい!!』


「もっと凄いところ見せてあげますよ!!」


 通信のヒルデガルドの言葉に答えながら急上昇し、ある程度の高さでそのまま真下へ急旋回を行う。


「ぐぅ……うぅ……!!」


 暗転ブラックアウトギリギリの加速度Gに耐え、照準を合わせ別の武器を起動させる。


「喰らえッ!!」


 操縦桿のボタンを押す。

 作動した下部コンテナベイが開き、小型の爆発魔法推進弾錬成機ラケーテンビルダーを起動させ、ミサイルを放つ。


 ズドドドドドドドッ!!


 ━━━グワァァァァァァァァァッ!?


 今度は、効果があった。

 あまり誘導力は高くはないが、急降下しながら直線上で撃てば、意外と当たる。


「よっし!」


 苦しむ合間にもう一度反転。

 もう一度攻撃を叩き込む為に高度を上げ━━━━━━




 ━━━待つのだ、外の者



「!?」


 その時、その声が響いた。


       ***


「!?

 今の、脳内に直接……!?」


 それは、ドレッドノートの中にも響いた。


「ちょ、いったい誰よ!?!

 女神の頭に直接語りかけてくる無礼者は!?」


「落ち着いてデウシア!」


 木を砕く八つ当たりを見せるデウシアを諌め、フェイリアはその声に耳を傾ける。


       ***



 ━━━皆矛を収めてくれ

 ━━━王へ攻撃しないでくれ

 ━━━王はただ、侵入者に過敏になっておられるだけなのだ

 ━━━我らが王の怒りは、なんとかしてみせよう



「何……頭の中に直接……!?」


『誰だよ!?ボク達はどうすればいいんだ!?』


 パンツィアが思わず心情のままに呟き、通信機の向こうは混乱するほどの異常現象。


 それも……


 目の前にいるあの髑髏顔の邪巨神まで、辺りを見回してどうすればいいのか、と言った様子を見せている。


 ━━グワァァァ!!グゥルルル……!


 やがて、その邪巨神はそう短く鳴く。


「なんか言っているのか……?」


 ━━━王よ、どうかここは我らに任せていただきたい。


 また頭に声が響く。

 すると、目の前のあの邪巨神はボリボリ頭をかき始める。

 納得はいってないが……とでも言いたい顔がその恐ろしい形相に浮かんでいる。


「決まりか…………


 全員武装解除!!」


『えっ!?』


「向こうにはすでに戦意はありません!!

 武装解除して帰投です!」


『う〜〜……りょーかい!!』


 ヒルデガルドに連れられて、全ての竜騎兵はドレッドノートに戻っていく。





 ━━━先にある草原に降りるといい




 また声が聞こえた。


「どうも、誰かしらさん」


 パンツィアも、静かに反転する。


 ずっとこっちを見ている髑髏顔の邪巨神を見ながら、ウィンガーをドレッドノートへと向かわせていった。



       ***


「なぁ、素直に従って本当に良いのか?

 何か嫌な予感がするぞ?」


「こっちの魔王の言う通りよ。

 罠かもしれないじゃない」


 ずん、と魔王と女神の二人に迫られる。


「その時はその時。

 相手が引く以上、こっちが攻めるのはあまりにもよろしいことでは無い。


 ですよね、カーペルトさん?」


「うむ。

 ワシらは未知の大地の未知の住人に会う以上、そうそう武力的な事はせん方がいい」


 カーペルトがそう言っている間に、この下部格納庫に鈍い衝撃がくる。


『ドレッドノート、着陸完了。

 みんな出ても大丈夫よっ!』


 パチェルカの通信と同時に、パンツィア達四人以外の人間・亜人達が大きく騒ぎ始める。


「未知の大地のはじめの一歩だ!!

 どんな生物がいるか、邪巨神だけであんなにいたのにっ!

 すごい……すごい楽しみじゃあ、ないか!!」


「フン!!頭に直接話しかけるような何かの文化や歴史、神話には大いに興味がそそられる!!

 紫外線防護結界はしっかりとしている!

 サングラスも変えまで用意した!!

 フハハハハッ!!

 7時間は調べ物にそいつらを付き合わせて続けてやるわァ!!」


「魔法石の鉱脈見つけりゃ一発でパンツィア並みの金が手に入るかもなぁ!!」


「おぉ!夢が膨らむのだなご主人!!」


「私そのお金で新しいフライパンが欲しい!!」


「その調査に同行したら色々化石見つかる?」


「ハハ、はしゃグな、ハしゃぐナ」


 …………すでに全員フィールドワークの準備だけは万全であった。

 げっそりしているのは付き合わされている学生達だけ……南無三。


「さて…………ご開帳です」


 そこまで考えたところで、パンツィアは壁の操作盤を魔法で遠隔操作して、格納庫のハッチを開ける。


 ビーッ!ビーッ!ビーッ!


 黄色い警告灯が回転して、警告音とともに扉が開く。


 魔力灯の明かりではない、完全に空へ上がった太陽の光が差し込みはじめ、


「すまない走るっ!」


「あっ、貴様ァ!!」


 入り口である扉が下り切る前に、ジョナスが走り出す。

 ディードがそれを追いかけるのを皮切りに、待ちきれない魔法博士達や連れられた学生が走り出す。


「……こんな時まで、彼らも学者か」


 普段はストッパー役のレリックまで、まぁ同行した時点でといえばそれまでだが、モンスターそのものの強靭な体で大きく跳躍して外へ出る。







『うぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉッッ!!』



 外へ出た皆が、感動のままに叫ぶ。


 なんと広大な自然か。

 なんと……草原だけですでに驚くべき世界なのか。

 左を見れば、見たことのない地竜種……背中に板が何枚か生えたような種が、呑気に草を食べている。


「あれ全部……多分、私化石見たことあるぅ!!」


 ラフィールの叫びに、生物学者達は大きく驚きを叫ぶ。


「背中とか!!ツノとか!!

 すっごーい!!

 ここのいる生き物全部古代竜種だー!!」


「何ダって!?そレは本当カイ!?」


「流石に解剖して骨見なきゃはっきりはいえないけど……けどさぁ!!」


 ふと、頭上に影が現れる。


 直後、突風とともにあのジャンドラーゴが上を通り過ぎた。


『おぉ……!!』


 空を見上げると、はぐれたギガフラシのいる積乱雲にジャンドラーゴが入っていく。


 雷の光に照らされて、ジャンドラーゴに襲われるギガフラシが見える。

 数秒後、雲を突き破り、ギガフラシを捕まえて飛ぶジャンドラーゴが再び上を凄まじい突風を残して飛んで行った。


 視線をふと草原へ戻せば、大型の襟巻きが大きく傘のように広がる3本角の古代竜種が、地鳴りとともに現れたゴルザウルスに下から襲われる。

 そのゴルザウルスは、少し体調が小さく身体の各部が丸みを帯びている、いわゆる子供のゴルザウルスであったようで、初めて一人で狩ったエサを、森から現れた巨大なゴルザウルスに自慢するように見せた。

 すると、なんとも優しい鳴き声で、巨大なゴルザウルスは自分の子供に頬ずりした。



「まさに、失われた世界だ……!」


「生命ノ神秘が見エる……!」


「━━━ゴルザウルスの色が違う」


 ふと、そんな声が場に響く。

 いつのまにか近づいていたパンツィアが、その言葉を言い放っていた。


「なんだって?」


「確かに違う……あそこの個体も、あそこのも全部……!」


「うむ。余も遠くから見ていた。

 確かに色が違う」


 同じく、こちらへ来ていたネリスもそううなづく。


「なんていう事だ……では、もしや彼らはゴルザウルス種の中でも微妙に種が違うのか……!?」


「体表の色ガ違うトハ、食性や生態ニ違いガアると言う事カ……」


 生物学者達が唸る中、パンツィアはあのゴルザウルス達を見る。

 そこには、ただただ生物として平和、とは言えないが平穏な生活を送るゴルザウルス達がいる。


「……なんで街に現れたんだろう」


「え?」


 パンツィアは、どうしてもそんな言葉が漏れる。


「…………ただ平和に過ごしていれば、私がブレイガーOで倒す必要は無かったんだ。


 あのゴルザウルス達は、言ってしまえば里に出てきた飛竜とか、熊とか……


 ……倒す必要があったけど、倒したく無かったな……こんな光景見ちゃったら……」


 パンツィアの言葉に、皆が顔を曇らせる。

 そのことを、失念していたかのように。


「……彼らも、」


 ふと、ジョナスがなにかを言いかけた瞬間、


 ━━━ウホォォォォォォッ!!


 そんな鳴き声とともに、ポコポコと不思議な音が聞こえる。


 皆が一斉に振り向く。

 森の方角、くらい木々の間から、何かがやってくる。


 飛び出してきた黒い影。

 ザッザッザッ、と素早くこちらへ移動してきたそれは、


「え?」


 パンツィアには、見覚えがあった。


 特徴的な、前の『腕』もつかった歩行法に、黒い毛並み。

 大きいが、毛むくじゃらのそのサルのようなシルエットは、人間と同じ霊長類。


 いつのまにか周りを取り囲んだそれらは……


「ゴリラだ……!?」


「ゴリ……何??」


 ここは異世界、竜はいてもゴリラはいなかった。

 いや、平均で2m近くの彼らをゴリラというべきだろうか?

 いや、それでこそそれらを言葉で言うならば……ゴリラ以外に表現をパンツィアは出来ない。


「未知の亜人か……!」


「え?」


 ふと、ディードの言葉に彼らの姿に気づく。


 毛の色がよく見れば後で付けられた様な色であること、

 ピアスや羽飾りといった物を見にまとい、その大きな腕で槍や剣を持っている。


「……まさか、」


(━━━客人達、怯えなくともいい)


 再び、頭の中に声が直接響く。

 瞬間、ゴリラのような彼らをかき分け、一人の白い毛並みの、頭に大きな髑髏を被った者が現れる。


(我らは、君達の目的を知っている。

 それ故に迎えにきた)


 そのゴリラは、パンツィア達の前に立ちあがり、大きく腕を開く。


(ようこそ、君らが『髑髏大地』と呼ぶこの場所へ!

 我が名は、ジェロニモ。

 我らは「大きなビッグフット

 君達が探す物を知る者達だ!)


「ウホォ━━━━━━━ッ!!」


 ウホォ━━━━━━━ッ!!


 ジェロニモ、と名乗る毛並みの白いゴリラ……もとい、『ビッグフット』と名乗る彼らが一斉に吠える。

 そして、その厚い胸板を叩きポコポコと音を立てた。


       ***


 鬱蒼と茂る森の中、

 その中に彼らの集落はあった。

 あの平地で見たテントのようなものが、森の一角で隠れるようにあちこちに立っていた。


(君達が、理性的に我らの招きに応じてくれたことを感謝しよう。

 これは、我らの飲み物だ、疲労が取れる)


 ジェロニモと名乗ったビッグフットは、配下らしきもの達に指示を出して、何やら茶色い飲み物を渡してくる。


 並ぶたつは、パンツィア、カーペルト、ネリス、ジョナス、その肩にラフィール、そしてディード。

 皆、とりあえず飲んでみる。


「甘っ!?」


「甘ぁい!!」


「なんだこれは!?」


 皆、恐る恐るだった割には、その味に驚き、舌鼓を打つ。


(これ……もしかして……チョコレート……いやココアだぁ!?)


 一人、味に思い当たるパンツィアは別の意味で驚いていたが。


(気に入っていただけて何よりだ。

 これは滋養強壮にもなるクァクァオラの実のタネを乾燥させすり潰し、余分な油を抜いて砂糖と家畜の乳に混ぜたものだ)


「ほう?そちらは農耕もやっているというか」


 と、ディードの指摘に、ジェロニモもニヤリと笑う。


(我らは、君らにとっては未知の存在だ。

 君らほど発展はしていないが……いわゆる文明、文化、そう言ったものがないわけではない。

 先祖代々よりずっと紡いできた歴史が、生活があるのだ)


「俺は……おっと失礼した。俺の名はディード・ブラッドフォード。この学者達の中ではいわゆる他所の文化や文明、歴史を調べるのが得意なものだ。


 何が言いたいかというと、私は個人的に君らのそういうものに興味がある」


 ほう、とで言いたげに、ジェロニモはウホ、と短く泣く。


(学者……私のようなシャーマンに似たものと聞いているが、ある程度調べるものには個人差があるのか)


「我々の場所では、機械、いわゆる我々の乗ってきたあの大きな鉄の塊を作るのが得意な学者、外の生物を骨の髄まで調べるのが得意な学者、そしてこの俺のように、文化や歴史を調べるのが得意な奴がいる」


(ああ、それはある程度は知っている。

 『魔女』に教わっているのでな)


「魔女……?」


 ふと、ジェロニモの言葉に、パンツィア達は疑問符を浮かべる。


(ああ。ちょうど、今来たところだ)


 と、


「━━━━あー、はいはい大丈夫なのだわ!だから降ろすのだわ!

 もう、大きいからってその持ち方はレディに失礼なのだわ!」


 ふと、面が騒がしくなり、ほどなくテントの入り口の布がバサッと勢いよく開けられる。


 全員の視線がそこに向くと、





「…………まぁ〜……!!

 本当に来ているのだわ〜……!!」




 なんと……少なくともパンツィアと同じような格好の女性が立っていた。

 つまり……


「人間……?」


「半分は。もう半分は夢魔なのだわ」


「爺ちゃんと同じ……!」


 思わず、その金髪を両脇で結んだ髪型の女性にパンツィアが呟いてしまう。


「あら、珍しい!

 でもあなた人間よね?魔力の質で分かるのだわ」


「ええ……養子で……え、そんなこと分かるんですか?」


「……おい、パンツィア」


 ふと、そんな声が隣のネリスから聞こえる。


「ネリスさん、どうか……」


「ふぁっ!?!ネリス!?あの雷竜の娘ぇ!?!?」


 と、名前を言った瞬間、女性が驚く。


「知ってるんですか?」


「むしろなんで人間と仲良く座っているのだわ!?」


「阿呆!余に聞いたのだ!!

 そしてパンツィア……こやつ、お前の関係者だぞ!!」


 え、とパンツィアも女性も驚く。


「おい、貴様!

 ここにいるちっこい奴の名はパンツィア・ヘルムス!」


「ちっこくな……いや相対的にはちっこいけ……」


 ふと、そう名乗った瞬間、顎が外れそうなほど大きく口を開けて驚く女性。


「……え?」


「え?」


「なんでケンズォと同じ……あ、あー!?」


 そして、ガバッとパンツィアの肩に摑みかかる女性。


「あんたあのケンズォの!?」


「爺ちゃんを知ってるんですか!?」


「知ってるもクソも、なのだわ!!」


 な、とパンツィアもその言葉に驚く。


「じゃあ、あなたもしかして……!?」


 はわわわ、と震える女性は、やがて唾を飲んで答える。




「私は、ジュゼェ・ヘルムス。

 1000年前に色々あってここに落ちてきたのだわ」



       ***

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