act.14:大邪巨神バトル-ファイナルウォーズ-


 ミサイル眼魔邪巨神 ガンクロン

 頭剣乱舞邪巨神 ギロニアヘッド

 超再生獣邪巨神 ザンダラ

 結晶反射力邪巨神 プリズマエル

 超弩級岩塊邪巨神 イワサイガミ

 石化偽蛇獣邪巨神 メタデューサ


 髑髏巨神 スカルキング

 超古代竜旧支配者 ゴルザウルス

 大飛竜旧支配者 ジャンドラーゴ

 放射性鉱石旧支配者 ガボパゴス


 守護竜神 レア


               登場










 HALMIT帰還早々に、ウィンガーにレーダーを装着すべく、降着装置を開けたパンツィアに、


「わっ!?」


 ポコン、と何かが乗っかった。


「……??」


 てっきりちっちゃい石、と思ってそれを頭から掴んで見てみると、

 それは、この世界でおそらく初めて見るが、あまりに懐かしい生物だった。


 石のような質感の、翼の断面図のような、楕円を真っ二つに割ったようなフォルム。

 まさかと思って見ていると、正面らしき穴から頭が出てきた。


「……カメだ……!」


 そう、カメだ。

 実は、この世界では一度もカメは見たことがない。

 遅い物の例えでも、確か別の生物だったはずであり、

 カメは、転生して初めて今、見た。


「ちっちゃいな〜、君ぃ〜?

 子供かな〜?うふふふ♪」


 しかし、よく見れば亀なのにツノの様なものがある。

 微妙にカメではないのだろうか?


「おい、パンツィアちゃんよぉ!

 何突っ立ってんだ!?」


「あ、シドーマルさん!これ見てくださいよ、なんかスカルグラウンドで紛れ込んでたみたいで!」


 と、シドーマルにもこのカメを見せる。


「おっ!!カメじゃねーか!!

 縁起物だねぇ……というかここに来て初めて見たぜ」


「そっちにはカメがいるんですね」


「まぁな。

 もうちょっと大きいけどよ、ここの地竜ぐらいはある」


 へぇ、と言うパンツィアの手の上のカメをつつくシドーマルは、懐かしいものを見てとても楽しそうだった。


「ちょっと!サボってないで欲しいのだわ!

 ……って何この可愛い生き物〜〜!!

 初めて見たのだわ〜〜♪」


「何かな?竜種っぽいね?」「おや可愛いねぇ!」


 気がつけば、ジュゼェもピアースもコーヴも集まって、そのカメを撫でていた。



 カメらしきなにかは、適当なガラスケースに水と餌になる挽肉を入れておいて、作業を進める面々だった。


「案外、すんなりとレーダーが入れられたのだわ……!」


「本来は、ガトリングガン入れてる場所なんですけど、代わりに小型低出力の神光切断砲レイジウムスラッシャーを入れたんで、余裕ができましたね……よしっ!」


 ウィンガー機首と後部スペースのメンテナンスハッチを閉める。

 後は、計器の調整だ。


「そういえばジュゼェさん、ブレイガーO本体のレーダー取り付けは?」


 コックピットのシステムを自分なりに調整中のパンツィアが何気なく尋ねる。


「製造から何まで任せちゃったのだわ!

 この研究所は良いわね、人材が揃っている」


「人徳ってやつですかね?我ながら」


「ケンズォじゃこうはいかないのだわ。

 ただ、自動詠唱用刻印紋章コンピュータシステム担当の、あのエルフの子?

 げっそりした顔だったけど大丈夫?」


       ***


 自動詠唱用刻印紋章コンピュータシステム用作業場



「終わらないよぉぉぉぉぉッッ!!!

 こんなの無理無理無理ぃ!!」


「と゛ほ゛し゛て゛無゛理゛な゛お゛仕゛事゛持゛っ゛て゛く゛る゛の゛ぉぉぉぉぉぉぉぉぉッッ!!

 ネギィ!?!」


「レイアムさん!!しっかり!!死んじゃダメなのぜぇッ!!!」


 この時、シャーカを筆頭とした自動詠唱用刻印紋章コンピュータシステム構築班は、地獄を見ながら必死に作業していた。



       ***


「本当に……申し訳ないとは思っているんですよ……」


 ズーン、と落ち込むパンツィアの背中をさするジュゼェだった。



 プゥーン、ビィィィ……ビィィィ……



 ふと、入れっぱなしだった通信機から、そんなノイズが聞こえ始める。


「ん?

 ハロー?一体誰ですか?」


 無線の周波数帯を調整し、アンテナの向きも変えながらパンツィアは尋ね返す。


「もしもし?

 間違い通信?」


 ビィィィ、とノイズが聞こえ、やがて何か聞こえ始める。


『━━━━すけ━━━━ちらはも━━━━━』


「…………」






『━━━━助けてくれぇっ!!

 こちら帰還中の竜騎兵部隊だッ!

 領内に突然邪巨神━━━』





 ズゥン、という爆発音が響く。

 直後、パンツィアの研究所施設の外の滑走路に、何か燃えた物が降り注ぐ。


「あれは……!?」


 息を飲む。


 アレは……燃え盛るアレは、さっきまで竜騎兵だった物だ。

 飛竜だったものが……燃えている!!


「まずい!

 出撃します!!」


「まだ調整終わってねぇぞ!!」


「機体と人が生きていれば調整は後でもできる!」


 ズゥン、という音に遅れて、ズゴンと頭上から音が響く。

 おそらく、天井に落ちた。


「……武装は一応補給しておいたぜ」


「さすがシドーマルさん!」


「ささ、僕たちは避難だ!」


「お嬢さんもこちらへ!」


「了解!頑張ってパンツィア!」


 パンツィアは急いでコックピットハッチを閉めた。


       ***


 ゴルゴーンの特徴を兼ね備えた邪巨神のルートを首都から逸らす作戦の一時帰投中、竜騎兵部隊は信じられない光景を見た。


「見ろ!HALMITの山側!!」


 ピシピシッ!


 空間そのものに、『亀裂』が走る。


 バリィィンッ!!


 当然のように…………空間が、割れた。



 ウキャキャキャキャキャキャキャキャキャキャキャキャキャキャッッ!!!



 現れた、『目』


 目、眼、アイ、瞳……無数の視線!!


 巨大な単眼の頭部から、全身がハリネズミのように突き出た突起の全ての先にまで、体表もどこもかしこも眼だらけの怪物!!




「なんていう不気味な邪巨神……!!」


「見てるだけで狂気に呑まれそうですね、姫様……!」



 ああ、とアイゼナは忌々しそうに答え、不気味な目の塊を見る。





 ウキャキャキャキャキャッ♪


 一瞬、偵察がてらに動きが緩やかになる竜騎兵部隊を、不気味な邪巨神は不気味に笑って見る。


 瞬間、全身の『目』が一斉に飛び出す。


 まるで、タンポポの綿毛のように、祭りの花火のように、



 ━━━━ブレイガーOの武装の一つ、


 爆発魔法推進弾錬成機ラケーテンビルダーのように。





「総員逃げろぉぉぉぉぉぉッ!!」



 アイゼナの指示に全員が全力で回避運動を取る。

 だが、指示を出した アイゼナだけが回避が遅れる。


 発射された目のような槍のような物━━━ミサイルは、アイゼナの乗るラインの至近距離で爆発した。


「ガッ……!?」


 一瞬、上下がわからなくなる。


 鐙に自分が固定されている仕組みでなければとっくに振り落とされている。


「ライン、起きろ!!しっかりしろ!!」


 ラインは、羽ばたこうともジェットブレスを足から出すこともなく、目をつぶったまま空中を回る。


「……すまん!!」


 アイゼナは、無詠唱で初級雷魔法をラインの首筋に撃つ。


 ギュワァ、と鳴いて飛び起きたラインは翼を広げて姿勢を戻し、足にある生体ジェット排気部分から燃えるような勢いで炎を出して地面すれすれで飛行を再開する。


「大丈夫か!?すまない」


 一瞬、非難の目で主人の方向を見たラインは、直後驚きの表情で勝手に急旋回する。


「何……!?」


 直後、燃え盛るなにかが落ちてくる。


 通り過ぎつつもそれが、撃ち落とされた竜騎兵なのは分かった。


「こちらアイゼナだ!!

 生きている者は死ぬ気で高度を下げろ!!!

 繰り返す!!

 生きている者がいるのなら死ぬ気で高度を下げろ今すぐに!!!」


 無線ですぐさま退避を指示し、避けきれなかった同胞の炎を避ける。


(クソッ……!!

 堕ちているのは、恐らく……まだ新兵じゃあないか……ッ!!)


 竜騎兵隊の隊長という肩書きを持つ者として、アイゼナは深く自分を恥じた。

 だが、焦って何かしようと粋がれるほど、アイゼナは取り乱すこともできない。


「姫様、生きておられますかッ!!」


 ふと、ススだらけのピナリアが後ろから追いつく。


「そちらも骨を拾う心配をしなくて良さそうだな!!

 生き残りは!?」


「まだ分かりませんが、今リリウムを残存兵のカバーに!!

 それと、私は運良くHALMIT側で、連絡を入れたので……きっと誰かは来てくれます」




「━━ああ、

 どうやら来てくれたらしい」




 ふと、二人の頭上に、空気を切り裂く甲高い音が響き渡る。


       ***


「早く高度を下げなさいなっ!!

 二度も同じことを言わせないでッ!!」


 はい、と言ってようやくショックから抜け出した新兵が高度を下げるのを見て、凶悪な『目のミサイル』を避けて再び進み始める。


「全く!!わたくしがお守りをして差し上げなければいけないだなんて、どんな身分の子達なのかしらッ!!」


 悪態をつきつつも、彼女の駆る飛竜の動きは周りの新兵たちとは明らかに違う。

 狙いを付けづらく、狙われてもうまく振り切り、確実に味方に近づく。

 一人に近づき、怒鳴ってでも高度を下げさせるまでの飛行も、先導もかなりの腕前だ。

 さすが再編時に隊長になっただけのことはあった。


「早く下がりなさい!!グズでもそのぐらいできるはずでしょう!?」


「は、はい!!」


「まったく、ヒルダのようにもっとフレンドリーに言えばよかったの?……でもこれで最後……!」


 しかし、安堵した一瞬に、あの不気味な視線がこちらへとやって来る。


「しまっ……!!」


 しかし、その時、ミサイルを貫く光あり。


「あれは……!?」


 爆風や熱波をくぐり抜けたリリウムの背後を、黄色い翼が空気を切り裂く。



       ***


「使えるじゃないか、小型神光切断砲レイジウムスラッシャー!」


 ガトリングの代わりに付けた小型神光切断砲レイジウムスラッシャーでミサイルを撃破し、華麗なバレルロールで高度を下げるパンツィア。


 ピーピーピーピー!!!


「うぉ!?」


 しかし、すぐにミサイルが背後に迫り、広報警戒レーダーによってなんとか気づくことができた。


「このぉっ!!

 私のジェットウィンガーを舐めんなぁぁッ!!!」


 機首を垂直になるまで上げ、一気にフラップを開き大減速。


 いわゆる、『ブカチョフコブラ』をこの世界で初めて行い、ミサイルの目の反応速度を超えてミサイルの背後へ回り、急速に機首を下げてミサイルを撃ち落とす。


「どうだっ!!この運動性!!」


 恐るべきは、パンツィアはこの運動で気を失っていない事だ。

 流石は、普段から空に己の全てをかけているだけはある。


「ってうわァァァァァァァ!?!?!」


 が、直後やってきたのは、文字通りの『雨あられ』のミサイル達だった。


「流石にこれはキツイじゃんかよぉ、もぉっ!!」


 それを、ジェットウィンガーの運動性能の限りを尽くし、誤爆させ、時に撃ち落とし、数を減らしつつ逃げていく。


「助けに来たけどど、これじゃあ救助が欲しいのはこっちだ!!

 超合金って言っても喰らいたくはない!!」


 爆風に煽られた航空機の『中身』は外と違って無事ではないのが故の判断だった。


 さて、どうするか?


 と、考えたその時、救援は意外なことにやってきた。


 ズドォォォンッッ!!


「えっ!?」


 突如、あの目の化け物に巨大な『火球』が着弾する。




 ズゥン、という足音共に、白い巨体が姿をあらわす。

 背中の片翼、竜の顔に頭から生える翼、


 クォォォォォオォォォォォオォッ!!


 レアが、戦いの始まりを告げるよう咆哮した。


       ***


 髑髏大地へと続く荒野。

 そこを進む四つの巨大な影。


 マルティナ国に現れた、雪の結晶のような邪巨神、


 コードネーム、プリズマエル


 醜い顔の毛むくじゃらの人間のような邪巨神、


 コードネーム、ザンダラ


 100mはあるかという岩のような体表の屈強で巨大な邪巨神、


 コードネーム、イワサイガミ


 蛇のような触手を頭から生やし、全体的にゴルゴーンのような印象を受ける邪巨神。


 コードネーム、メタデューサ


 4体は、ゆっくりと髑髏大地へと進んでいく。



 ふと、嵐の壁の一角が盛り上がる。


 ボフン、という音と共に、3体の巨大な体が現れる。


 長く伸びたトサカのような頭部を持つ旧支配者、

 

 人呼んで、ゴルザウルス


 巨大な翼を広げる超大型飛竜旧支配者、


 ジャンドラーゴ


 そして、見たことのない、4足歩行でその頭部を殻のようなもので隠す旧支配者。


 この3体が、荒地に躍り出る。





「おいおい、聞いてないんだけどぉ!?

 数が多いじゃん!?」


「だからって逃げるな、ガボパゴスのくせに」


 途端、怯えたようなその4足の旧支配者、現地の名前を『ガボパゴス』というそれが逃げ出し、尻尾を隣のゴルザウルスに踏まれる。


「痛ってぇぇぇっ!!

 もうヤダ、オイラおうち帰る!!」


「おいおい、こんなの呼んで俺様の戦いの相方務まるのかゴルザウルス〜?」


 と、隣にいたジャンドラーゴがゲシゲシとガボパゴスを叩き嘲るような表情を見せる。


「こんなの以外に戦える奴はいない!

 スカルキングは、ギドラキュラス相手に力を温存すべきだろう?」


「ふっ!老人の老人の時代の怪物なんぞ、この俺様の翼にかかればイチコロだっていうのに、なぁんでお前ら雑魚のお守りをしなきゃあいけないのかねぇ?」


「そうだよぉ〜、こっちのジャンドラーゴがいれば十分じゃんかよぉ〜!!

 群で一番強い奴なんだからよぉ〜!!」


「お前なぁ!!臆病なのは知っているが、こういうのは頭数が必要なんだぞガボパゴス〜!!」


 ギャアギャア、言い争いをするように吼えたてる旧支配者群。


 そこに、グワッハッハッハ、という笑い声が投げかけられる。




「見ろよ、弟!現地の下等生物がドングリの背比べをしているぞぉ!!」


「ザンダラ兄さん、笑ってやるなよぉ〜!これから殺されるのに可哀想だろぉ〜〜??」


 笑うザンダラの横で、なんだかのんびりした鳴き声を上げるイワサイガミ。


「ククク、にしても驚きだなぁ。

 現地の生物っていうのは、もうちょっと頭の悪い物だと思ったのだが……姉さんはどう思う?」


「どうでもいい、メタデューサ」


 キュワァァ、というメタデューサの鳴き声に、アァ〜〜、と甲高い音を結晶の体から出すプリズマエル。




「おぉい、原生生物共〜〜?

 戦うっていうのなら無駄だからやめておけよ〜〜?」


 ズンズン、と唸りながらイワサイガミが近づく。

 明らかにこちらの全長の2倍はある相手に、3体は顔を上げてそのゴツゴツした顔を見る。


「知ってるか〜〜?

 質量って概念があるんだぁ〜〜。

 重ければ重いほど動かすエネルギーが大きくなるから、軽いものよりパワーも破壊力も上がるんだぁ〜〜??

 お前らチビに俺を倒せるかぁ〜〜??」


  ガツガツ、と明らかな知性を思わせるように巨大な腕の爪でゴルザウルスのトサカを叩く挑発を見せるイワサイガミ。


 対して、ゴルザウルスは黙って顔を睨むだけだった。


「……なんだよぉ、その目はよぉ〜……??」


 イワサイガミは、あての外れた反応に苛立った瞬間、ゴルザウルスは小さく唸った。





「お前…………アレだな、そう…………


 スカルキングが、調子に乗ってギガフラシを食った後の…………




 ウンコ、みたいな匂いだな、息が」



 ふん、と鼻息を強く当てるゴルザウルス。



 ━━━━グゴォォォォォンッ!!

 ━━━━キシャァァァァァッ!!



 瞬間、お互いぶつかり合う。


「誰の口がウンコだお前ェェェェェッ!!」


「お前だデカブツ!!

 腹からプンプンしやがるぜ、クソの煮詰めた匂いがなぁっ!!」


 瞬間、腹部に刺したトサカから、自慢の超振動波を放つ。


 数秒で腹部の岩のような体表も骨も粉砕され、内臓に届いた衝撃に驚き、100mもの全長の身体が吹き飛ぶ。


「グガァァァァァッ!!」


 ズン、とメタデューサの足元まで吹き飛ぶイワサイガミを見て、フンと鼻息荒くゴルザウルスが見下ろす。



「お前程度の『質量』、

 毎日、生まれてからずっと毎日、常に掘り進んで生活している!


 この場所に住む奴らを舐めるなッ!!」



 ━━━グァァァァァァッ!!


 ゴルザウルスの咆哮に合わせて、ジャンドラーゴとガボパゴスも吠える。


 ━━━グゴォォォォォンッ!



 対して、起き上がり、血反吐を吐きながらも怒りに燃えるイワサイガミを筆頭に、邪巨神達も進撃を開始する。


 こうして、旧支配者vs邪巨神の戦いの火蓋が切って落とされた。


       ***


 ウキャキャキャキャキャッ♪


 不気味な笑い声とともに、全身の目のミサイルを発射する邪巨神。


 クォォォォォォォッ!!


 しかし、それを物ともせず、竜形態のレアは進んでいく。


 この状態のレアの体表硬度は、硬い体表を誇る飛竜の中でも屈指の硬さである。

 一説によればスーパーオリハルコンの次に硬く、熱耐性は4倍近くもあるというらしい。


 つまり、痛みはあるがこんなミサイル程度ではビクともしない。


 クォォォォォォォッ!!


 そのまま、翼の無い側で体当たりをし、目の邪巨神を吹き飛ばす。


 ズン、とその重さから来る衝撃で土煙を上げながら倒れる邪巨神。

 そこへ起き上がらせる間も与えず、レアは追撃の3000℃のドラゴンブレスを吐きかける。

 一瞬で木々は焼け焦げ、大地は赤く染まる。


 かつて、人を滅ぼそうとした神々を、その巨体と炎で焼いたブレイディアの守護竜神にして、今も恐ろしい神話の残る『荒ぶる神』と評される『天の支配者』。




 それが、この姿のレアだった。




「強い……あの「ガンクロン」がこんな簡単に……!」


 パンツィアは、上空から邪巨神━━━名付けてガンクロンとレアの戦いを見ていた。


「ブレイガーO、出撃できないとはいえいらないんじゃ無いかなぁ……??」


 あまり言ってはいけなさそうなことを言いつつも、何があってもいいように上空で待機する。


 ケキャキャキャキャキャッ!!


 しかしその時、あの不気味な笑い声とともにミサイルをで爆発させるガンクロン。


 瞬間、爆風でレアがブレスを吐くのをやめ、一瞬で真空状態になったが為に炎が消える。


 そして、ガンクロンは突如何処かへと大量のミサイルを放つ。


「え!?」


 上空で見ていたパンツィアは、目測で放物線の先を予測する。


 それは━━━━━


「まさか、HALMITの方向!?」


 反応が遅れた。

 迎撃に向かった瞬間には、数発がHALMITへ着弾し始めていた。


       ***


 ギリギリとザンダラの腕が、ガポパゴスの頭の殻を開けようと力を込める。


「なんだぁ!?変な殻で閉じこもりやがって根暗下等生物がよぉ!!」


「やめろよぉ!開けたらヤバイんだって!!」


「何がヤバイのか見せてみろよオラァ!!」


 瞬間、ガポパゴスが低く唸り声を上げる。


「そんなに中が見たいのかぁ……??」


 その時、殻と頭の隙間から、青白い光が漏れる。


 瞬間、ガパァと3方向に殻が開き、中の頭が露出する。


「どうなっても知らないぞぉ!!」


 瞬間、強靭な顎を持つ東部とともに、青白く光る体の模様と背びれのような器官が露出する。


 ━━グワァァァァァァァァァッ!?


 その光を浴びた瞬間、ザンダラの体毛に覆われた肌が焼けただれ始める。


「なんだぁ!?痛い!!光に当たったところが痛いぃ!?!」


 暴れるザンダラの足元で、同じく光に当たった草木が枯れ始め、燃え始める。


「死ぬんだぞぉ!!俺たちガポパゴスが殻を開いた時……みんな死ぬんだぞぉ!!」


 青白く放射される光でザンダラを徐々に焼けただれさせていくガポパゴス。




 ビュォォォォオォォォォォオォッ!!


 そのすぐ近くで、剛風とともにイワサイガミが小さな丘に激突させられる。


「はっはっはっはッ!!

 ゴルザウルス如きにやられるデカブツじゃあ、この俺様の翼の威力にも負けちまうかぁっ!」


 羽ばたきの突風だけで100mはあるイワサイガミを吹き飛ばすジャンドラーゴが、勝利の雄叫びを上げる。


「ちょこまかと!」


「死ねぇ!!」


 メタデューサのグァパッ、と開いた口の中から覗く目、プリズマエルの中央の赤い球体から怪光線が放たれて地面を焼き、草木を岩に変える。


 しかし直後、地鳴りとともに地面が隆起し、現れたゴルザウルスの頭突きでメタデューサが吹き飛ぶ。


「悪いなぁ!!俺は地面の中もテリトリーだ!!」


 邪巨神と旧支配者の力は拮抗していた。

 いや、3対4という状況にもかかわらず、旧支配者側が有利にも見える。


 このままでは遅かれ早かれ決着がつく。


 だが、その時、

 雲のない空の方角に雷光のような光が瞬き、空間に亀裂が走る。


「なんだ!?」


「おぉ……!」


 旧支配者達が驚く中、その割れた空間からジャキン、と鋭い刀のような物が現れた。


 瞬間、煌めく刃によって空間が切り裂かれ、それが現れる。



 ━━━ブモォォォォォォンッ!!!



 それは、頭部が東方由来の反りのあるとなっているような邪巨神だった。


 まるでサメのような顔を刀の付け根あたりに持ち、二足歩行しながら両腕のぐるぐるととぐろを巻いた刃の並ぶ部分を回して、避けた空間より現れる。


「新手か……!?」




 ━━ブモォォォォォォンッ!!



 まるで答えるかのように、その邪巨神は煌めく頭の刃を上げて吠える。


       ***


「騒がしくなってきやがった……!!」


 両腕を組み、静かに待つスカルキングが低く唸る。


 瞬間、巨大な地鳴りと共に、封印の山が爆ぜた。


「こっちも、ボチボチ『祭り』に参加すっかぁ?


 ━━━なぁ、ギドラキュラスさんよぉっっ!?!?」


 ━━キシャァァァァァッ!!!


 爆ぜる山、岩や土の雨を降らすその場所へ叫ぶ。


 ━━━キュルルルルルッ……!


 噴煙が収まっていく中、怪しい六つの光が現れようとしていた。



       ***

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