act.21:死を呼ぶ超魔竜

 三首吸精邪巨神 ギドラキュラス

 ???

 髑髏巨神 スカルキング


             登場




「コレは……!?

 まさか……!!」




 ドレッドノートは現在、下部武装の破壊された大空戦艦と共に、戦火見えるほど近くまでやってきていた。


「ひでぇなぁ、100年前みてーだ……100年前で合ってるっけ?」


「言いたいことは通じている。別に細かい事は今はいい」


 窓から覗く光景に、テトラとディードはそう会話を交わす。


「そうか、そう言う事なんだな、じゃあ……スカルキングは……!」


「おい、ジョナスゥ!!

 貴様!!こんな状況で良くスカルキングの回収した肉片なんぞにお熱とはァ!!


 楽しそうで何よりだが、緊張感というものがないんじゃあないのかァ〜〜??」


 ディードの嫌味もなんのその、いつのまにか取り出した機械で近くの大きな細胞片からサンプルを取って何やら読み込んでいる。


「おい貴様、無視するとは何事だ?

 それほどのものなのかぁ、こんな真っ黒な肉が?」


「…………スカルキングが何の種類かようやくわかったんだ」


 ようやく、ディード達を見てそう呟くように言うジョナス。


「信じられないよ…………彼は……!


 彼は、『飛竜種』だ……!


 二重螺旋情報も、細胞サンプルも全てがそう結論づけている……!」


 なに、と流石のディードも顔色を変える。


「翼のない飛竜種なんぞいるのか……!?」


「ディード、君は専門家じゃあないから簡単に言えば、飛竜種の定義は『翼の有無』じゃあないんだ。


 飛竜種とは、体内に『生態内燃魔術器官ワイバーンジェットエンジン』を持つ竜種群を指すんだ。


 翼を持っていてもこの器官がない竜種は飛竜種ではないし、逆に翼がない飛竜種もいる」


「なんと紛らわしい定義だ!!飛ばずとも『飛竜』だと?

 その定義を作ったやつは誰だ!?」


「君が得意な歴史に残る先人達さ。

 さて、実はボクはこの細胞片を見てからずっと、そのことばかりが気になっていたんだ」


 ジョナスは、ややウェルダンな細胞片を見てそう言う。


「この焦げ方、敵の攻撃じゃああない。

 いや、敵の攻撃程度じゃこんな焦げ方はしないんだ」


「む?

 ……なるほど、ど素人の俺にさえ何が言いたいか分かったぞ?」


 ああ、と顔を見てジョナスは正解だと言うようにうなづく。


「これは、生態内燃魔術器官ワイバーンジェットエンジンの排気部分なんだ」


「しかし、奴はそんな飛竜種の排気部分らしきものは見当たらなかったぞ、遠目とはいえ」


「……ああ、だから、これは仮説なんだけど……」




「多分、全身が排気部分なんじゃねーの、スカルキング?」




 ふと、二人に背を向けて外を見ていたテトラがそう言う。


「驚いたな……!

 僕は今それを言おうと……!」


「いや……

 驚くンならなぁ〜〜……アレ見ろよぉ?」


 ふと、テトラがドワーフ種特有の褐色肌が青ざめるほどの引きつった顔で外を指差す。


「「?」」


 二人は、恐る恐る外を見る。


「「なぁッ!?!?!」」


 そこには━━━━━━━



       ***


 ズゥンッ!!

 真っ赤な炎が血管のように走る足が大地を踏みしめ、焼き固める。


 近くにあった木は一瞬で発火し、家の残骸のガラスはドロドロと溶け出していく。



 ━━━━グルルルル…………



 その太くたくましい脚を、

 その強靭な『飛竜種特有の外骨格』で覆った身体を、

 同じく硬く巨大な腕を、

 名の由来にもなった髑髏のような恐ろしい頭部を、





 ━━━キシャァァァァァァァッ!!






 スカルキングのその全身を、


 灼熱の炎が駆け巡り、吹き出し、覆っていた!








「なんだそれ……!」


 ブレイガーOの中、黄色いボディに炎の色が写るほどの異常熱源となったスカルキングを見て、パンツィアは呟く。


『━━━パンツィア君聞こえるかぁ!?

 こちらドレッドノートのジョナスだぁ!!』


 と、通信機から聞こえる声にハッとなる。


「聞こえます!

 戻ってきたんですね!?」


『それよりもスカルキングだ!!

 彼は飛竜種だ!!それも!!!』


「えぇッ!?!」




 そんな生物がいてたまるか!!



 正直な感想を打ち砕くように、燃え盛るスカルキングへ向かってギドラキュラスが赤い雷を放つ。


 キュルルルッ!!


 グルルルル……!


 しかし、放たれた三つの蛇のようなうねりのエネルギーは、スカルキングの手前で大きく四方に拡散し、地面や瓦礫を砕くだけの結果になる。


「うっそ……!」


 パンツィアはそれが、あまりの熱量のせいで空気との寒暖の差による壁が発生し、屈折率が変化したせいだと分かった。


 そして、スカルキングは大きく腕を振り上げる。


「何……!?」


 その瞬間、


 ただでさえ太い腕が、2


 ボォォォォッ!!!


 そして、突然燃焼量が大きく増幅した右腕を前に跳躍し、


 文字通り『爆発する威力で』拳を叩き込んだ。




 チュドォォォォォォォォォンッッ!!





「ぐぅぅ……!!操縦桿が……吹き飛びそう……!」


 踏ん張り、思わずマニピュレーターを顔の前にして踏ん張るブレイガーO。

 ギシギシと超合金製のはずのフレームが音を立てる。


(スカルキングは腕にも生態内燃魔術器官ワイバーンジェットエンジンがあるんだ……!!

 元々体格に不釣り合いなほど大きい腕はそれが原因……!!)


 キュルァァアァァッ!?


 そう結論づけている間に、ドシィン、と左側の顔と真ん中の顔左半分が消し炭になったギドラキュラスが倒れる。


 この威力!!


 フシュゥ、と口の端から炎の吐息を出すスカルキングは、さらに追撃として脚を落とす。


 単純な威力とともに、ギドラキュラスの触れられた部分は煙を出しながら炭化していく。


 その時、苦し紛れに残った二つの口から赤い雷を放つギドラキュラス。


 流石の至近距離では怯むスカルキングが脚を離した瞬間、素早く回転し手足を地面につけ、立ち上がる。





「この機を逃すかッ!!!


 爆発魔法推進拳ラケーテンファウストォッ!!」




 しかし、そこへブレイガーOの爆発魔法推進拳ラケーテンファウストが襲いかかり、大きく吹き飛んだギドラキュラスは再びスカルキングの方向へと向かってしまう。



 ━━━キシャァァァァッ!!!!



 その時、咆哮を上げたスカルキングが腕を体の前で交差させ、力を溜めて一気に解き放つように全身の炎をより燃え上がらせる。


 キュルルルァァッ!?


 キシャァァァァッッ!!!!


 吹き飛んで来たギドラキュラスへ突進。


 その体に抱きつき、まるで溶ける直前の鉄のような色へと体が変わっていく。







 ━━━━━━ドンッ!!!






 一瞬上がったキノコ雲とに遅れて、遠くまだ無事な街へも届く巨大な衝撃波が発生する。





「ぐぅぅぅぅぅぅっ!?!?!」



 当然、至近距離にいたブレイガーOは衝撃波と熱をまともに喰らい、吹き飛ばされないようにするだけで精一杯の状態で流石の超合金でも表面が熱波で削れていく。


「……?」


 一瞬、静かになったとパンツィアが空を見上げれば、そこはなんと真空状態のドームの中。


 背後を振り向いた瞬間、爆風が押し出した空気の壁が迫り、再びブレイガーOをコックピットを凄まじい衝撃が襲う。


「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁッ!?!」


 やがて、辺りを吹き飛ばした空気の津波は収まり、静寂がやってくる。


「…………」


 息を整え、ブレイガーOの頭部を動かすパンツィア。


 一瞬で街のその区画は全てが消え去り、まぁ元より復興が進んでいない地域だったとはいえ、もはや一から街を作るべき状態になっている。


「逃げ遅れた人は……?」


 さっき、爆発の前には逃げる人々も遠くへと言ったはず。

 どのみち、人影はない。


「ギドラキュラスは……!?」


 そして、パンツィアの視界に映る光景は、





 静寂の中心地、


 ズシィィィン!!


 そこで倒れる、全身から煙を上げたスカルキング。


 ━━━キシャァァ………グルル……


 その髑髏の顔に疲れ切った表情を見せ、大の字で大地へと寝転がる。


 その彼の目の前には、


 見事に炭化したギドラキュラスがそびえ立っていた。


 微動だにせず、真っ黒に、夜の闇よりも真っ黒に『黒焦げ』となったその体には、生命の息吹を感じられない。


「…………やった……!!」


 勝利を確信して、パンツィアは思わず呟く。



       ***


『おぉぉぉぉぉッ!!』


 当然、ドレッドノートの皆は大きく喜び沸き立っていた。


「ようやく、倒せた……!!」


「しっかし惜しかったなぁ!!

 あの髑髏頭に全部持ってかれちまったみたいでなぁ!?」


「フン!!

 過程や方法なんぞ、こだわれる状況でもなかろう!!」


 勝利に沸き立つ空気のまま、ドレッドノートはゆったり進んでいく。


       ***


「終わりましたな、陛下!」


 城から戦いを見ていたクレド以下大臣達や護衛は、安堵の表情を持って言う。


「…………」


 しかし、何故かクレドの表情は暗かった。


「……陛下?どうかなさいましたか……?」


「…………時に、今は何時だ?」


 と、突然クレドはそう尋ねる。


「はぁ……おや、もう真夜中を過ぎ4時近く……!」


「……やはりおかしい。

 アホガラスがそろそろ巣へ戻るはずだ。それが影も見えんとは……!」


 ふと、クレドは空を見上げてそんなことを言う。


「陛下……流石に鳥もこの戦いで逃げましょうぞ?」


「いや、私の知るアホガラスは、奇跡的なまでの鈍感な奴!

 それでいて、夜の世界を飛べる数少ない鳥だ!

 時間にだけは正確なそれが何故一羽も見えない!?

 やはりおかしい!」


 しかし、いくら鳥類学者と言えど、クレドの言葉は心配のし過ぎとしか周りは思っていなかった。







 ━━━━彼らの脇に、一羽の鳥が落ちてくるまでは。






『!?』


 その鳥は、血を一滴も流さず死んでいた。

 恐る恐るクレドが静かに触るも、目を見開いたままその鳥は動かない。


「これは、アホガラスだ……!」


 そして、再び空からアホガラスが落ちてくる。


「!」


 まるでせきを切ったように大量の鳥が落ち、そして今度は白の屋根で寝ていたはずの野良飛竜までが死んで落ちてくる。


「なに、が……?」


 ふと、クレドがふらりとバランスを崩す。


「いかん!!」


 と、魔術衛兵が結界を張り、大臣が慌ててクレドを支える。


「はっ……!すまん!」


「なんのこれしき……しかし、これは?」


 城の周りの草木は枯れて、動物は全て死に絶えていく。


 この現象はいったい……?



       ***


「う、ぐっ……!!」


 ばたり、と戦場から離れた場所の人間が力なく倒れ、やがて干からびるように死んでいく。


「お父さん!?お父さぁぁん!!」


「だめだ!!行くな!!」


 ちょうど、避難誘導をしていた魔術師兵が、結界魔法を展開して謎の現象からなんとか人々を守ろうとする。


 ……無論、全てとは出来ないが。


「なんだ、これは……?」


 その騒乱の中、空には不気味な光が波のように何処かへと収束していた。


       ***


 グ、ギ、ギシャアァァ……!!


 突然、疲れて寝転がっていたスカルキングが苦しみ始める。


「何……!?」


 突然の事態の中、ブレイガーOのコックピットの中で警報が鳴り響く。


「魔力流出警報!?

 超合金でも防げないほどの!?」


 いくら分子構造が結界魔法陣と同じといえど、防げない物もある。


 故に、ちゃんと対策もある。


「防御結界機能作動!つけといてよかった!」


 フゥン、と言う音と共に、警報も止まる。

 そして、ブレイガーOと共にパンツィアはこの事態の主を見る。





 空を波のように伝わる光は、ある一点へ収束していく。


 そう、黒焦げにギドラキュラスの真上に。


「アイツか……!やっぱるアイツ、生きてたんだ……!」


 キュルルルルル……!


 復活の産声と共に、6つの赤い目が輝き出す。


「そうと分かれば、答えは一つ!!」


 パンツィアは、目の前のスロットルレバーの赤いボタンを押し、思いっきり上へ上げる。


 胸部の魔導石水晶部に魔法陣が展開し、多大な熱量をチャージする。




極大炎熱魔砲ブラストバスターッ!!」



 口に出した呪文スペルと共にスロットルレバーを一気に下ろし、


 ビィィィィィィィィィッ!!


 凄まじいまでの熱の奔流が胸部より放たれる。


 超合金ですら溶かし尽くす熱量がまっすぐとギドラキュラスへと向かっていく━━━━━



 バサッ!


 その時、信じられないことが起こった。


 突如翼を生やしたギドラキュラスの周りに赤い稲妻がまとわりつき、

 その翼で自身を覆うよう動かした途端に稲妻が極大炎熱魔砲ブラストバスターを防ぎきったのだ。




「そんな……っ!?!」




 驚きも束の間、ギドラキュラスは炭化した体の一部を振り払うように動かし、地面へ四つん這いになる。




 キュルルルルルルルァァァッ!!!



 一つ吠え、竜のような翼を広げる。


 そして、メキメキ音を立てて炭化した部位を内側から押し上げ、その体に赤い筋のようなエネルギーのラインを走らせて、



 キュルルルルルルッ!!




 鳴き声をあげながら、


 を始める。





 半身の様だった左右の首が、内側から盛り上がる様に中央と同じ首の形になり、やがて三つとも長く太く成長していく。


 前腕は太く、地面を支える為の『前足』と化し、その二股の尾は延長すると共にその先には開閉するハサミの様な器官が生える。




「……何、それ……!?」




 ブレイガーOをはるかに超える体躯の、3つの首が上からこちらを覗く。


 それは、数日前ディードの説明したギドラキュラスの壁画の……もう一つの解釈。

 もう一つの姿。


 3つの長い首、4つの足で大地を踏みしめる、巨大な翼を持つ姿。




 ━━キュルァァアァァァァァッ!!



 全身を白い骸のような体表で覆う巨大な3つ首竜の咆哮。


 それは、『絶望』という言葉がとても似合う物だった。




       ***

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