act.2:始動!ブレイガーO改造計画



「━━━━発射されたぁーッ!?!?」


「何やってんのぉぉぉぉっ!?!」


「……ん、ちょ、おい、戻ってきたぁぁぁぁぁっ!?!?」





『うわァァァァァァァァッ!?!?!』











 地下実験場に戻ってきた拳は、天井を突き破った瞬間に方向転換し、元の腕の位置へと収まった。


 仰向けに横たわったブレイガーOは自動的に腕を元の位置に戻す。




「…………えぇ…………??」




 その場にいたパンツィアの言葉こそ、皆の総意だった。


「これは……なんともまぁ珍妙で癖の強い武装だ……」


「格闘兵装……??いや射撃兵装、ですかねジャンさん?」


「不意打ち用にしては随分余剰な火力の上に使い勝手も悪そうだ。

 腕も無くなるだろうし、文字通り『奥の手』とでもいうべきじゃあ、ないかね?」


 とりあえず、とジャンは肩をすくめてから、ブレイガーOの頭の方向へ戻る。


「それよりも、もっと良い遠距離武器を仕込んでいる。

 あそこに今設置しているのが、私自慢の神光切断砲レイジウムスラッシャーだ!」


 顔に当たる部分が取り外され、目の場所へと、傘を逆さにしたようなパラボラアンテナと呼ばれる物がクレーンで下されていく。


「メーザー砲ですか?」


「いや、君もかつて見ただろう?

 神の光の再現品さ!」


 と、言った瞬間、突然その兵器が光り、全てを切り裂く光魔法が天井に穴を開ける。


「コラァ!?魔力を流したまま接続するなとあれほど!!」


 すみません、と作業員が謝り、それを見てからジャンは顔を戻す。


「すまない。だが威力は見ての通りだ。

 超合金スーパーオリハルコンですら、数十秒で斬り裂ける」


「次からは天井も超合金製にしないと……というか、一応オリハルコン製だったのに……」


 穴の空いた天井から見える日の光に、ついそう呟いてしまう。

 今日何度目だ……いやもしかすればこれからもっと増えるかもしれない。


「この他にも、腕には新たに回路から見直した超高熱火球砲プラズマキャノンが入っているし、」


 瞬間、バチッという音とともに腕が超高熱火球砲プラズマキャノンに変形したブレイガーO。

 驚いているうちに作業員がなんとか、どこかの線を断ち切って機能を停止させた。


「…………」


「……こほん。

 それと、現在肩部分には新たに、カーペルト様とアンナリージュ君以下錬金術師達が、誘導爆弾ミサイルを錬成して放つ新機軸の武器である、爆発魔法推進弾錬成機ラケーテンビルダーという兵器を仕込んでい━━━」



「今錬成するバカがいるものかよォ━━ッ!?」


 と、いう叫びとともに、パンツィア達の所にミサイルが飛んできて、危うく下敷きになりかけた二人が避けた間に落ちる。


「…………」


「…………と、このように、急ピッチで作業は進められている。

 武装組み込みは一日で終わるだろう」


「それまで、私生きていると思いますか、ジャンさん?」


「パンツィア君、私も今同じことを考えたよ」


「死にたくなければ二人ともさっさと出て行くか納期を伸ばすかするんだな!」


 と、今ミサイルがやってきた場所からアンナリージュがやって来る。


「アンナリージュさん、どうです?作業進捗は」


「順調だ!!バカのあぶり出しができた」


「アンナリージュ君、怒りすぎても美容の敵だぞ?」


「健康に気を使える状況なものかよ!!」


 ガンッ、とミサイルを蹴り、足を痛めたのかうずくまるアンナリージュ。


「……オレにはそのミサイルをポンポン産む錬成機を作るだけが仕事ではないからな……!!

 くっ……電装系用の合金も考えたほうがいい。

 この木偶の坊のオモチャは、まだまだ問題の方が多いんだよ!」


「オリハルコン系列で電装に有利な合金をですか?そこまでの出力をコレが?」


「お前のジジイは単純なやつだ!

 こいつの出力の為にわざわざ手塩にかけた反応魔導炉を2積んでやがる!!

 だがお陰で従来の回路じゃ負荷がかかり過ぎているみたいだと、そっち系の奴らが言っている。

 どうもプラズマキャノンを撃ったせいというより、戦闘で回路が焼き切れたのは、それまでの動きのせいでもあるらしい」


 なるほど、と二人は納得する。


「そうなると、冷却機も考え直さないといけませんね……空冷ファン式だけじゃなく、液冷も視野に入れないと」


「せっかく組んだのに、また武器を外すことになりそうだ」


「安心しろ、オレの頭じゃもう、回路用の特殊なオリハルコンのレシピは出来てる。

 武装の方も変圧器を噛ませれば今の回路のまま出来るとも思うしな……」


 と、その時、


「━━━ヴェーッヘッハッハッハッハッハァッ!!」


 なにやら聞き慣れた不気味な笑い声が聞こえてくる。


「天才は遅れてやってくるゥ!!!

 皆遅れて申し訳ない!!」


 何故か仰け反った姿勢で笑っている魔族の男……そう、クルツ・ダンがやってきた。


「来たか……!」


「パンツィアくぅん!!!

 君の設計したあのエンジンはァ……実に最高の出来だァ!!!」


「お前あの変態になにを頼んだ?」


「この世界で、人型の機械……自動人形オートマトンに一番詳しい人間は彼ですので、ブレイガーOのレイアウトを」


「そう!!だがァ……いくら神の才能を持つ私でもどうしようもないことがある!」


 いつの間にか近づいてきたクルツは、大仰な仕草でそう言う。


「関節のパワーを上げるには、新たな動力機関が必要だった……そう!!


 内燃魔術機関ジェットエンジンのプロであり、誰よりも動力に詳しい君の力が必要だったァ!!」


 ビシ、と指さされるパンツィアは、なんだか気恥ずかしくなる。


「あはは……それで、現物はクッキードさんの工場で?」


「ああ……コレだとも」


 運ばれてくる、巨大な関節用の動力機関。


「これは?」


「超合金スーパーオリハルコン製『噴流稼働軸式内燃魔術機関エーテルタービンエンジン』です」


噴流軸式内燃魔術機関エーテルタービンエンジン!?』


「『純粋内燃魔術機関ターボジェットエンジン』に変速機を付けたんです。

 ジェットエンジンのパワーウェイトレシオでシャフトを回して動かすことのできるもので……


 まぁ、単純なパワーならばこれより良いものは大陸には存在しませんよ、この関節サイズの物の中では」


 普段は割と控えめなパンツィアが胸を張っているかのように自信を込めてそう説明した。

 皆、つまりそれは本当に言葉どおりの代物だと理解した。


「聞いておくがパンツィア、超合金スーパーオリハルコンは『block-07』か?」


「ええ、シャフト以外は耐熱性特化の『block-07』です。といってもエンジンの熱には流石に耐えられないので冷却機構も万全ですが……おっと。

 ただ、シャフトだけは耐久性が最も強い『block-13』に。

 理論上300万回転には耐えられます」


「念入りだな。こだわりすぎとも言うがオレは嫌いじゃない」

 

「彼女の拘り通りテストは良好だったァ…………後は……組み込めば終わりだァ……!」


「そっちは、任せます。

 私はウィンガーの方に戻りますので」


 遠くで爆発魔法推進弾錬成機ラケーテンビルダーのミサイル部分の調整をしていたカーペルトに腕で行くと示して、先に行かせるパンツィア。


「しかし、以外だと思うね。

 操縦席をウィンガーにするだなんて発想をそのままに君がするとは」


「この柱頭の言う通りだぞ?

 接続部もまぁ超合金製にするが、脆くはなるだろうからな」


 ふと、ジャンとアンナリージュの言葉に、パンツィアではなくクルツがクックック、と笑う。


「おい、ダン!いつにも増して不気味な笑いを上げてどうした?」


「いや、君たちも人間だと言うのに、人間に必要な機能をよく無視できるなと笑ってしまったんだよ」


 あ?と聞き返すアンナリージュに、さらに笑ってクルツが答える。


「クックック……と言うものがブレイガーOには必要じゃあ、ないのかな??」


 あっ!

 っと二人はようやく合点が行く。


「25mじゃ落下傘パラシュートも無意味ですしね。

 いっそコックピットブロックごと射出できた方がいい、と言うのが多分お爺ちゃんの考えです」


「質問いいかな?

 確か君は、それだと操縦系統が違いすぎて両立は難しいと言ったはずだが?」


「ジャンさん、

 それを解決するのも、『私達』の仕事です」


 では、と弾んだ足取りで、カーペルトを追いかけるパンツィア。


「……私達、か。

 まぁ『ライトスタッフ』が言うのなら間違いはないか」


 ジャンの言葉からややあって、パンと手を叩くクルツ。


「さぁ!!仕事に戻ろう!!

 我々の才能を発揮できる期間はあまりにの短い!!」


「おぉ、それがいいな」


「だな。

 おいさっきの腐れ脳みそ!!このオレが直々に指導してやるからこっちへ来やがれ!!」


 そうして、3人はブレイガーOの改修へ向かう。


 ━━━チュドーン!!


 …………彼らは、生き延びることができるか……?




       ***


 HALMIT山岳方面にある巨大なパンツィアの研究用施設、シャッターを開けて少し先、レシプロエンジンのウィンガーのある辺り。


「くとぅる〜〜……!!」


 頭だけしかない、と言われる種族がいる。

 名前をクトゥルー。名前の由来は鳴き声。遺伝子上近いのはイカ。


 今ここにいるパチェルカ・ヴィレッジもそんなクトゥルーの一人で、


 長い髪の毛の一部、おさげに当たる部分のように見える『触腕』で、舌を突き出したようなはしたない口を覆うようにしたまま震えていた。


「お願い……お願いね……パチェにその塩辛さんを返してね……???」


「ダメ。抜け駆けは良くないのです」


 真上にいるには、この国の守護竜神ことレア。

 手には、クトゥルー達の住む平野部の淡水性のイカを使った郷土料理の『塩辛』。名前通りのとても美味い物。


「だってね、だってね……私も知的なクトゥルーだけどね……我慢はできないの。お口が寂しいの。寝ずに設計図さんを引いて起きてまだ2時間さんなの」


 ぴょん、ぴょん、と頭だけの身体で跳ねて、自分の8倍はある大きさのレアの腕の中の物を取ろうと無駄とわかっても足掻く。



 そもそも、ここは本来研究施設なのだが、今は異常な光景があった。


 後ろでは、この辺りでは見ない服と顔立ちの━━━いわゆる、東方からやってくる蛮族のような切れ長の相貌の男が、まな板の上で新鮮な白身魚をひたすら切り刻んでミンチにしている。

 後ろでは、大柄な老人と小柄な老人が小麦粉をこねている。


 そこだけ見ればここは調理場だった。


「パチェルカ、言ったですよね?」


 ━━━ご飯が炊けたら、10分蒸らしたほうが美味しいって」


 ビクッと、震えるパチェルカの後ろには、炊飯器と言われる装置があった。


「ええ、言ったわよ!!!

 ブレイディア唯一にして最大の『お米所』の、ル・ルーイ出身として言ったわ!!

 何より、電熱器の改造でお米を美味しく炊ける機械を作ったのも私よ!!


 お米と塩辛は私達の『魂のおかず(ソウルフード)』さんよぉ!!」




「━━━だったらよぉ〜、パチェルカ」




 ふと、後ろで刻んだ長いネギ、発酵させた大豆調味料━━━彼の出身地曰く『ミソ』を底の深い皿に入れて混ぜ始めた東方出身の男が口を開く。


「シドーマル……!?」


「後、2ねぇか

 そんだけ待てば食えるじゃあねぇか……


 それも『待てねぇ』。


 お前はそう言いたいのか??」


 男━━━シドーマルに言われたパチェルカの目が潤み、顔が真っ赤になっていく。


「……あなたはこう言いたいのね……!

 普段は計測データをコンマ以下までピッタリと記録する私が……!

 『1分待てないなんて情けない』……!

 そう言いたいのね」


 ただ、無言でシドーマルはよく混ざった謎の料理を置く。

 瞬間、堰を切ったようにパチェルカが体全体から声を絞り出した。





「待てないわよッ!!




 目の前にあったかいあったかい炊きたてご飯さん!!


 こっちには我々のソウルフードさん!!


 こんな拷問じみた状態で『待て』ですってぇ!?


 あなたはこの世で一番辛い拷問に耐えろというのぉ━━━━━ッ!?


 クトゥゥゥゥゥゥゥッ!!?」


「…………」


 瞬間、シドーマルは炊飯器の蓋を開けた。


??


 ッ!!」


 むわっ、と立ち込める美味しい匂い。

 艶々に立った米達がひしめくこだわりの耐熱金属製の釜の中から、それをシャモジと呼ばれる大きなヘラですくい上げる。


「ふわぁぁぁぁ……!!」


「おぉぉぉぉぉ……!!」


「飯時に1分、2分なんざなぁ、誤差なんだよ誤差ぁ!!

 お前らも食え!!つーか塩辛をよこせレア!!

 ほらほら、食うぞ食うぞ!!」


 どんぶりという深ぞこかつ大きな食器へよそう白い宝石。

 立ち込める湯気はあらゆる香水すらドブの匂いと化すほどの芳醇な暖かい香りを含み、食欲は爆発する。


「では、この一つ一つ輝く白い宝石を作ったパチェルカのお父さんに、稲穂を育ててくれた大地、水、太陽に感謝を込めて、」



「「「いただきます!」」」



 東方に伝わるその言葉を皮切りに、全員『はし』と呼ばれる二本の棒のような食器で食べ始める。



 クトゥルー達の住む地域は、稲作が盛んである。

 歴史上、東方に近く、よく蛮族が攻めるのに通る場所だったことと、土や水の関係、機構が似通っていたせいや、その蛮族とクトゥルーが関わりあった文献もあるせいなのか、ともかく食がに通うようになったらしい。


 ともかく、箸の扱いや米の食べ方はクトゥルーと東方の蛮族は同じだった。


 巧みに指と触腕を使い、一口分挟んで切り取るようすくい、口に運ぶ。


 米の調理法で、そのまま炊くのはここら辺ではあまり見られない食べ方だ。

 ある種淡白すぎる米の味を、だが二人は楽しむ。


 いや、実際米には『甘み』がある。

 噛めば唾液で炭水化物が糖に分解され、ほんのりした甘みが確かにやってくる。

 そのかすかな甘みの淡白な味わいを楽しみ、


 口をニュートラルな状態にしてからの、塩辛。


 圧倒的な、ある種暴力とも言える塩っぱさが、しかし何か絶妙なコクとともにやってくる。

 コリコリしたイカの身の食感を楽しんでいるうちに、やってくる感覚。


 欲しい。

 しょっぱさをかき消してくれるあの味が、


 ━━━お米が、欲しい。


 そして欲望のまま喰らえば、再び味わいが変わる。

 あの尖った塩気は、程よく薄まり、米の食感と合わさり口と腹を満たす。


「し、しあわせ〜〜〜〜〜〜!!」


 パチェルカは吠えた。

 あまりの美味しさに、上品ではないがまるで実家にいるような感覚を思い出させる美味しさに、つい声がでる。


「かぁーッ!!故郷の米とはちょいと違うがそれがまた美味いッ!!」


「おーいしー……♪」


 ぴこぴことレアの頭の羽が動いて喜んでいる横で、ふとシドーマルは例の料理を取り出す。


「これも食おうや。『なめろう』ってんだ」


「「ナメロー??」」


 生食に特に忌避はない二人は、それを箸でつまんで食べてみる。


「「……むぐむぐ……


 うまっ!?!」」


「だろぉ!?本当は海でとれたてのやつだと良いんだけどよ、クロワッサンの坊主に臭くない生きのいい魚貰ったからやってみたんだよ!!」


「なぁにコレェ!?うまっ!ひたすらうまっ!!箸止まらない!!」


「しゃりしゃりむちゃむちゃ……なんだか不思議な食感です〜〜……♪」


「なめろう、ってのはな、俺らの国の言葉で『舐める』って言葉から来た名前でな……

 漁師が船の上でとれたての魚をすぐさばいてミソと和えたものよぉ。


 これがまた皿ごと舐めちまうほど絶品でよぉ!!

 だから「なめろう」っつうんだわ!!」


「ブレイディアが新鮮で臭みの少ない生魚が泳いでいたことに感謝するわぁぁぁぁぁ!!クッットゥルゥ!!」


「……はしたないけど舐めちゃえ……♪」


 この時点で、ご飯は一杯目が完食であった。


「ところで若者達ぃ??

 後ろで静かにしていれば、この哀れな老人達の分は無いのかなぁ〜〜??

 酷いよねぇ、コーヴくぅん?」


「全くそうだよねぇ、老人虐待だねぇ、ピアースくん?」


 ふと、背後で大柄な老人と小柄な老人がヌゥ、と出てきた。

 一瞬幽霊でも出たのかと思うほどの怖さだ。


「わ、悪かったって博士たちよぉ!

 わざとじゃねぇって、ほらよぉ……」


「クックック……食べ物の恨みは恐ろしいという言葉は君達のものじゃ無いか、シドーマルちゃん?」


「まぁこちらでもその通りなのだけどねぇ、シドーマルちゃん?」


「ちゃんは辞めろよ気持ち悪い……!」


 ケッケッケ、という不気味な笑い声で、渡された飯を食べる二人の老人。


「だがまぁ、ちゃんと私たちの分を残してくれた恩は返さなきゃねぇ、コーヴ君?」


「恨みが恐ろしいならば、食の恩は大きいというわけだねぇ、ピアースくん?」


 ふと、チーンという音が鳴り響く。

 老人達は、後ろの機械の扉をあけて、あちち、と言いながら……


「ほうれ、ブレイディアと言えばこれじゃあないか」


 ことり、と皿の上で湯気を立たせるピザを置く。


「ふぉぉぉぉぉ……!?」


「ふわぁぁぁぁ……!?」


「何練ってんのかと思ったら、ピザかぁ!?」


「君達は知ってるかな、味の濃〜い塩辛にチーズを乗せて焼くとどうなるか?」


「これがねぇ……いけちゃうんだよねぇ」


 そう言われれば食べるしか無いのが人情。

 皆熱々のチーズと溶けた塩辛の味と焼けた味が混ざったものを口に含む。




『うまーい♪』





「━━━なんでそんな美味しそうなことしてるのに私達を待ってくれないんですかぁ!?!」


 そんな彼らの場所へやってきたパンツィアは、悲壮感たっぷりにそう声を上げる。


「よっ、お嬢!速かったじゃねぇか!」


「だってご飯食べてませんもん!!

 朝からブレイガー改修の指揮やら何やらですよ!?」


「右に同じッ!!不敬罪で死刑にするぞ貴様らぁ!!」


 ぐー、とカーペルトも腹を空かせて叫ぶ。


「まぁまぁ、ちゃんと残しておりますとも元陛下。

 抜かりはないよねぇ?コーヴくぅん♪」


「そーだともピアースくん!

 さ、陛下もお口に合うかはさておきピザでもどうぞ」


「よぉしよし、これじゃコレ!

 宮廷料理や健康にいいものなんぞより今はこいつじゃよ!」


「パンツィアちゃ〜ん!あなたはご飯派よねぇっ!塩辛もあるわ〜♪」


「いやったぁ!!もうお腹空いてて死にそうだったんですよね!!」


 パンツィアも早速受け取ったご飯を箸でかっこみ始める。




「━━━それで、皆さん設計図はもう?」


 駆けつけ三杯という中々の量を食べたパンツィアはそう尋ねる。


「ああ。ちょっとばかしだけどよ」


 シドーマルはそう何やらお茶を濁すように言う。


「久々にわねぇ」


 パチェルカもお皿のかたずけをおさげ触腕でやりながらそう答える。


「悔いのない設計図は出来たが、果たしてパンツィア君が気にいるかどうかだよねぇ、コーヴ君?」


「そうだねピアース君」


 そういうや否や、老人二人は近くの移動ボードに設計図を広げる。


「うぉ……この形は……!!」


 それは、ウィンガーというにはあまりに前代未聞な、




「全翼機……??」



 ━━━だいぶ経るはずの過程をすっ飛ばした、凄まじい形状だった。



       ***

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