ブレイガーO -異世界で作られたスーパーロボット-

来賀 玲

◇第1章「驚愕のスーパーロボット誕生」

プロローグ:空にそびえる鋼鉄の城

-古代竜邪巨神 ゴルザウルス 登場-






 ……ズゥン………



 ━━キャァァァ!!

 ━━助けてくれぇ!!

 ━━うわぁぁぁぁ!?!


 ……ズゥン!



 ━━ァァァァァァァァァッ!!



 ズゥンッ!!!!!




 街が燃える炎に照らされて、



 ━━━━━グォォォォォォォォォンッ!!!



 ドラゴンのような、それでいて明らかにドラゴンとはいえない、三日月のトサカのような頭を持つ怪物が吠える。


 神話の竜が、はるかに小さく見える程の大きさ。小山が動くとはまさに、かの姿そのもの。


 一足で家を一つ、尾の一振りで通りが二つ、更地になり崩れ落ちる。


 慌てて走る人間やエルフ、そう言った小さい生き物を嘲笑うように、足が動いた拍子に飛んだ瓦礫をぶつけて命を奪う。




 それは、巨大な恐怖のカリカチュア。


 この世のものではない、生きた恐怖そのものだった。




     ***


「はっ!はっ!チビ達!!急いで!!!」


 今、自分より幼き命を守り走る、街のパン屋の娘ティオも、その恐怖から逃げていた。


「これが終わったら、いっぱい仕事があるんだから!!まずは釜を作り直さなきゃ!!次に街にある小麦を集めるの!!!そんでパンを焼いてみんなに配る!!」


「姉ちゃん後ろきてる!!」


「振り向かない!!」


 逃げて、逃げて、なんとか自分の気持ちも家族も守ろうとする。


「城の人が用意する食事だけじゃダメさ!!黄金小麦亭の!!!私達のパンじゃなきゃ!!!お母さんの味じゃなきゃ街のみんなも元気にならない!!」


「ねえちゃん、疲れた!」


「疲れてない!!」


 あっ、と転んだ小さな弟をすかさず起こし、また走る。


「そうだね!!チビ達もいつも通り!!一番に味見させたげる!!ティナは私の次にお姉さんだから焼いてみるといいよ!!私からみたらまだまだだけど、きっと美味しくなるから!!!」


「姉ちゃん、もうダメだよ!!」


「ダメじゃない!!壁が見えたもん!!」


 街の外へ通じる要塞の壁と、鋼鉄の扉が見え始める。


「あそこまで走って終わりじゃないよ!!やる事はいっぱいあるんだ!!!

 私達は死なない!!死ぬもんか!!

 お父さんとお母さんの分も目一杯生きてやるって決めたんだから!!!」


 小さな一群は、なんとか、そこを通り抜ける。


 最後の一団が通り過ぎたのを見計らい、巨大な鉄の扉が閉まっていく。


「やった━━━━━━━」


 ズガァン!!!


 扉付近、石と漆喰で固めた要塞が吹き飛ばされる。


「へ?」


 直後、重い音を立てて倒れてくる巨大な影。


 通り過ぎたはずの門が今、


 こちらへ、覆いかぶさるように倒れて来て━━━━


「ひっ!?」




 ズゥゥゥゥゥゥゥン!!!!!




 …………………………


「……?」


 爆音が響いたはずなのに、落ちて来た巨大な鉄が自分を潰した感覚はない。


「あれ……?」


「姉ちゃん、おれたち……」


 目の前には、自分の兄弟姉妹がちゃんといる。

 そして━━天国にしては少し暗い。


「!?」


 気づく。

 目の前に突然できた建物に。

 いや、建物ではない。


 それは、間違いなく鉄のようなもので出来た……足だった!


 建物だと思ったのは、建物と見間違うほど太い、硬さ強固さ、とてつもない重量感を感じる足!


 その巨大さは、この街にもいるオーガが二人……いや、四人はゆうに横に並べるほどの太さ。

 例えるなら、それにそびえる鋼鉄の城!あまりに大きすぎる!


 見上げる。

 遥か遠く、天を仰ぐ様に。


「何……巨人!?」



 二つの目が輝く。

 そこにいた巨大な金属の身体が、

 今、あの巨大な鉄の扉を支え立っていた!



 ズゥン!!


 一瞬、辺りが明るく光り、巨人が大勢を崩す。


「!?」


 今度こそ潰れる、と思った刹那、


 すぐ目の前に、光る眼が大きく見える距離までで止まり、ズン、と真横に片腕が地面に着く。


『━━━━ティオちゃん逃げて!!!』


 瞬間、キィィンという耳鳴りと共に聞こえる大声。

 巨人が出したと思えない、高い女の声に聞き覚えがあった。


「その声……パンツィア姉ちゃん!?」


『このままじゃ扉が持たないの!!!

 みんな逃げ始めてる、早く走って!!!』


「待って!!そのでっかい……巨人みたいのの中にいるの!?」


『そ━━きゃあっ!!』


 ズゥン、と扉に何かが当たり、横の堀へ弾けた炎が落ちる。


『急いで!!なんとかするから!!!』


「わ……わかった!!」


 行くよ、とチビ達を連れて走り出す。


 急いであのさきの丘へ走りながら、ティオは振り向いてあの巨人を見る。




 周辺のオーガやドワーフといった力自慢の亜人達が、300人いてやっと持ち上がった王国の巨大な扉。


 金属の巨人は、事も無げにそれを持ち上げ、盾のように構えて額から光弾を出す怪物へ走る。


 そう、地面をえぐり、炎が拭き消されるほどの風と砂を舞い上げて、その巨人は走っていた。


「すっごいパワー……!!」


「姉ちゃん何見てんのさ!!」


「ごめん……でも……!」


 扉を掴んで振りかぶる。

 ビュゥゥゥ、と一回転しただけで風が巻き上がり、グォオオン!!!と精霊教会の鐘が霞むほどの音が鳴り響く。


 頭の形に歪んだ扉の端から伝わる力が、巨大な怪物を大きく吹き飛ばし瓦礫の中に沈める。




「すうっげぇ……!!」


「キッシュ爺ちゃんが何度も話してた神話みたい……」




 やがて、起き上がった怪物は吠え、その長大な尾を振るい、今度は巨人を吹き飛ばす。

 倒れた衝撃が街を揺らし、ここまで届く。

 再び襲いくる尾の一撃を巨人は掴み、そのまま回転して的を地面へ叩きつける。


『━━━来い、化け物!』


 身に纏った瓦礫を落としながら立ち上がり、その巨人の中から叫びが上がる。



『お爺ちゃんの…………この街のみんなの仇だ!!


 私とこの『ブレイガーO』が、相手になってやる!!』


 再び拳を構えた巨人と立ち上がった怪物がぶつかる。



      ***


 この日、

 ブレイディア王国は、謎の怪物━━━『邪巨神』による襲撃を受けた。


 しかし、隣国を滅ぼすほどの脅威を討ち果たしたモノが、同じく姿を現した。


 それは、空高くそびえる鋼鉄の城、

 神話の神を思わせるパワーを持つ、機械仕掛けの巨人。


 その名は、


 ブレイガーO



 

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