8-3
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「さて」
そう言って俺はケータイを取り出す。
「どうしたの?」
「ちょっと電話しようと思ってた人が居てね、気分のいいついでに掛けようかなって」
「そう。私は近くにいたほうが良い?」
会長に電話しようと思ったが、なんて言おうか。
「出来れば少し離れて欲しいかな、先方は俺だけの頼まれごとなんだよ」
「ふうん。ま、そういうことにしておくわ。」
何かに感づいたようだったが、離れてくれた。勘違いが無ければいいんだが。
ターニィに俺は後ろめたさを感じながら携帯を開く。
慣れない電話帳を操作して会長に電話を掛ける。
しばらくのコールの後に電話に出る音がした。
『はいもしもし?』
「うえ――。いや、本名だと分からないか?
えっとブックです会長」
『ん? ああ! ブック君。こんにちわ。まさかそっちからかけてくれるなんて』
「ええ、昨日の事で返事をしたいと思いまして」
そういうと電話の向こうで会長とは別の声が聞こえた。
『ちょっとまって今電話中!
ああ、ブック君? 昨日のって、保護とかの件の事?』
「ああ、そうですけど、大丈夫ですか?」
お取込み中なのかもしれない。そう思って聞いてみると。
『ああ、まあそうなんだけどさ、で!? 答えはなに!?』
「ターニィはそちらには寄越しません。俺が一緒にいるって言っちゃいましたから」
『そうなんだ! それは良かった! でも良くないことが今起きててね、今どこ!?』
「どこって」
そういえば公園の名前を確認し忘れた。
だが、会長はまくし立てるように言葉を投げてきた。
『聞いているのは場所じゃなくて家か外のどっちかってこと!』
「外ですけど」
『外ぉ!? 今すぐ家に戻って! 今すぐ! 説明は後にするから早く!』
「は?」
叫んだ会長の声に呆けていると、
「っ! 後ろ!」
とターニィの声。
俺はその声に従って後ろを向こうとするが、
ガンッという衝撃を頭に感じた。
俺の体は近くのフェンスに寄りかかり、倒れるようにずれ落ちる。
意識は朦朧とし、視界は霞む。
「――っ! ――っ!」
誰かが何かを言っている。
何かの影が誰かに迫っている。
それだけは分かった。
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