02,ターニィ

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 電車に乗った俺たち二人は俺にとっての日常の一部となった地元の駅で降りた。

 しかしながら二人という非日常の状態は非常に違和感を覚えていた。

 違和感が故に駅から歩きだせずにいた。

 きっと、友人が一人でもいればこの違和感はなかったのかもしれないが、是非もあるまいよ。

 俺は現在相方と化している転入生のターニィを見る。


「婚約者、ねぇ」


 今時ない話とは言わないが、少なくとも一般市民には縁のない話だと思っていた。

 いや、ないない。ありえない。

 今時な男子高校生の俺がそんな状況になるか? いや、ならないね。

 つまりは、だ。

 性質の悪い悪戯なのだろう。

 ……いや、まて、大体こんな時は本当に婚約者のパターンもあり得る。


「……あっ」


 そうだ、聞けばいい、俺の保護者に。

 俺は携帯電話を取り出し、素早く電話帳をタップする。

 電話を掛けようとも思ったが、用事などで出られないことを考え、メールを打つことにした。

 内容は簡潔に、ターニィについてと婚約者についてを簡単に打ち込む。

 送信しましたという表示から1分ほどで返信が来た。早い。


<全部本当だよ。それと、ターニィちゃんと一緒に暮らしてもらうね。それと鍵はもう渡してあるから。>

「……は?」


 おい、まじかよ。

 じゃあなにか、婚約者は本当で、このターニィ=ラットホープという輩は、俺と?

 そして若い男女が、二人、一つ屋根の下で?


「頭沸いてるだろこれ、この状況」

「なにが?」


 携帯電話を片手にぶつぶつ言っていた俺にターニィは興味を引かれてか近づいてきた。

 丁度いい、メールの内容とすり合わせの為の事実確認をすることにした。


「なあ、ターニィさん。俺の家の鍵は持ってたり?」

「ええ、ほら。」


 ターニィは俺の言葉を見越してか右手にチェーン付きの鍵を見せてきた。

 その鍵を前に自分の鍵を出して見比べてみる。


「本物だ。同じだこれ」


 そして恐らくスペアキーだ。それも模った物ではなく、スペアキーの通りの予備の鍵。

 だとしたら、この転入生の言うことは本当なのだろう。ってか、


 大切な鍵を婚約者(仮)だろうと易々渡すんじゃねえよ!


 過ぎたことに怒ってもしょうがないが、言わずにはいられなかった。


「そのくらい信用して貰えたって思っていいのかしら。」

「俺の意思が関与していないことを除けばそういう事なんだろうな」


 ……そう言ったことも色々聞きたいのだが、あまり突っ込んだ話は道端で話すことじゃない。

 なら、これ以上立往生してもしょうがない。


「ターニィさん、気は進まないけど一緒に帰るか」


 どうせ、行くところは同じなのだ。くどいことは何も言うまいよ。

 それよりも保護者に問いただしたいところが多いが、一緒に住んでいない都合上、直接会って話せない。あとで電話しよう。


「ええ、帰りましょ。積もる話は家の中で。」


 積もる話、か。

 まともな話だといいな、と少し他人事のように思った。

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