4-2
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俺は皿に盛りつけられたサンドイッチを取り頬張る。
ベーコンの塩気やレタスのシャキシャキした触感と包むような柔らかさを持つ卵が口の中で踊る。
パッと作った物なので美味しさはそこそこ程度。少し凝らせばよかったかもしれない。
そんな自分の作ったサンドイッチの感想を頭で流していると、美味い美味いと言いながらサンドイッチを食べる人物が口を開いた。
「そういえばターニィちゃんの日用品を買いに行くんだよね? ついて行こうか?」
「いいえ、大丈夫です。それに二人きりで行きたいですから。」
「あらあら。それじゃあ私は自宅に帰ろうかしら」
保護者はターニィの言葉に肩を落とすように、そして嬉しそうに言った。
卵スープをすすっていると、そうだ。と保護者は声を上げて自分のバックを漁る。
バックから取り出したのは髪留めだ。三角のプレートの髪留めでそのプレートには見たことのない絵か描かれていた。
「何が書いてあるんだ?」
俺は余り絵に詳しくない。
その絵はまるで鳥の頭のようにも、翼を広げた小鳥のようにも見える尖った絵だった。
それを見てターニィは分かったように声を上げる。
「ストレリチアですね。」
「そそ。流石ターニィちゃん博識だねぇ」
そんなやり取りに俺は首を傾げる。ストレリチアってなに?
それの様子の俺に対してターニィはすかさず口を開く。
「ストレリチアは花の事よ。観葉植物として扱われている花で、色が派手で鳥の様な形から極楽鳥花とも言われているの」
極楽鳥花、なんだか四字熟語みたいだな。
俺は適当に納得するように頷く。この手の話は長くなりそうだからそれっぽく頷く。
俺の様子を確認し終わった保護者は髪留めをターニィに渡し、
「はい。私からのプレゼント。この子をよろしくねえ」
とヘラヘラとした口調で言った。あんたは親戚のおば……叔母だった。
それに男の俺をよろしくねって、逆だろうに。
「俺はそんな頼りなく見えるのか」
「頼りないわけじゃないけどね。血縁者として心配なのよ」
「そうですか」
「そうなのよ。それじゃ、ごちそうさまでした」
保護者は早々に手を合わせて礼を言うと自分のバックを担いでそそくさとリビングを出ていく。
「今は7時半。店は大体9時か10時くらいに開店するからまだ出なくてもいいんじゃないか?」
そう保護者に言うと、歯を見せた良い笑顔を向けてきた。
「私が居たんじゃイチャイチャ出来ないでしょ?」
そんな言葉を残して玄関へ消えていった。
いまだそんな関係には至っていないのに、そう思いながら食器を片付けていく。
食器をかたずけている最中、ターニィの方を見ると、保護者から受け取った髪留めをじっと見つめている。
その姿に、ふと考える。ストレリチア、たしか極楽鳥花といったか、つまりは花だ。花であるなら花言葉があるのではないか?
そう思った俺は髪留めに釘付けのターニィへと声を掛けた。
「ストレりチアって花言葉はあるのか?」
それを聞いたターニィははにかんだ様子でこちらを見た。
知りたい? そう悪戯好きそうな挑発的に聞いてきた。
「知りたい。どんな花言葉なんだ?」
ターニィは真っすぐにこちらを見る。
それはちゃんと話を聞かせるために、聞き逃すことを許さない為の視線。
微笑を浮かべたターニィはゆっくりと話す。
「強運とか情熱とか色々あるのだけれど。叔母様が私に送った花言葉は、きっと“輝かしい未来”ね。」
ターニィはそういうと髪留めを口元へ持ってくる。
その仕草はどこか艶めかしく見えた。
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