7-6
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「ハッ」
不意に鼻で笑いうような声が出てしまった。
「どうしたの?」
会長を無視して俺は無言のまま荒村に写真を返す。
そして俺は一息ついて話す。
「一枚目のターニィの顔がブレてますよもう少し綺麗なのお願します」
「あら、そのブレについて聞きたかったんだけど」
「そうなんですか? 別にブレ自体はおかしな点はないような。」
そういうと秘崎が目にもとまらぬ速さで近づいてきて俺の顎を掴み、
「キサマァ! 嘘をついているなぁ! ――ふがっ」
とまくし立て、顔を近づけてきた。その秘崎に俺は無言で鼻フックを食らわせる。
「イタイィィィイ!?」
と秘崎はのたうち回る。反射とはいえ女子に鼻フックをしてしまうとは、反省しよう。
「てんめぇコラぁ! 私の鼻に何をしてくれとんのじゃあ!」
秘崎はヤクザみたいな口調で叫ぶ。ってかドスの効いて声でかなり怖い。
こっちがヤクザの子供なのか?
そんなことを考えていると、秘崎はどこからか手帳とペンを取り出す。
そして、手帳に何かをサラッと書いてペン先をこちらに向ける。
「≪君は――ぐえ!!」
「一般人に不用意に使うな」
秘崎は鬼川に横から何処かで見たようなボディブローを食らわせた。
その影響で秘崎の手から手帳とペンが落ち、手帳の何かが掛かれたページが、パンッ、という音と共に弾けた。
俺は手帳とペンを拾ってみるが、特に変なところはない。というかペンはボールペンで、“MADE IN JAPAN”と書いてあり市販のものと分かる。手帳も100均で売ってそうなものだった。
なるほど、秘崎の能力は手帳とペンが使用条件で、手帳とかが特別なわけではないのかな。
そう分析しつつ、秘崎に返す。
「ごめん。急に顎を掴まれたからさ、反射的にやっちゃって」
「くそお、いつか覚えてろよ」
泣き顔で秘崎が言った。
その様子を見ていたら鬼川がこちらをジッと見ていた。
「なにか?」
「いや、もうすぐ授業だ」
そう、屋上に取り付けられている時計を指さす。
あと5分で授業が始まる。
俺たちは急いで教室へ向かった。
俺が扉に手を置いた時、扉はなんのこともなく開いた。もしかしたら手帳を落とした時に能力が消えたのかもしれない。
それと、屋上と繋がる階段の前にいたあの風紀委員の様な女生徒は居なかった。
何とか授業に間に合い、俺は午後の授業に勤しんだ。
時が流れるのは早い。あっという間に放課後だ。終わりのホームルームの時に俺はターニィとアイコンタクトを取る。
ターニィは頷く。ちゃんとこちらの意図は伝わっているのだろうか。とやっておきながら不安に思う。
ホームルームの終了した直後に俺は真っ先に教室を出た。
そして後ろから追いかけるようにターニィが教室から出てきた。
走る走る。いつぞやとは違い俺は自主的に走る。あっという間に昇降口にたどり着いて靴と上履きを取り換える。
そのまま俺たちは駅へと向かい電車に乗り込む。
いつの日と同じような下校をした俺たちは悪い共犯者のように笑った。
「で、屋上でどんな話をしたのかしら。」
午後6時、帰り際に俺の要望に応えて、ターニィによって作られたあんかけそばを食べている時、不意にターニィにそう聞かれた。
俺は口の食べ物を飲み込み、答える。
「お前について聞かれたよ」
「私について? 例えば?」
「一緒に下校したり、ショッピングモールにいた時の事とか聞かれたよ」
「それで、私の事をなんて言ったのかしら?」
俺は一考したあとに、
「少し我がままなところがあるとは言ったな」
と言った。すると、
「我がままって、そんなお姫様みたいな性格じゃないわよ。」
と大げさに口を手で覆い、そう言った。
お前のお姫様像は我がままなのか。
性格と言えば、
「ターニィ、明日の事なんだが」
「ええ、それでどうするの?」
「昨日言った通り中ぐらいの方で、まあ、その他はお前のお好みでお願いする」
「そう。少し張り切っちゃおうかしら~。」
ターニィは笑みを浮かべつつそう言った。
お好みと言った手前、あんまり強く言えないが、
「どうか人前に出れる格好にしてくれよ」
そうターニィに言うと、無視してあんかけそばを頬張った。
その様子に一抹の不安を覚えながら俺はあんかけそばを食べようとして、箸を止める。
「ターニィ。今日の弁当、美味しかったぞ」
それを聞いたターニィは当然と言いたそうな笑顔を浮かべた。
そして、その笑顔を見ながら俺は考えをまとめていた。
デート企画は明日で終わりにしよう。
屋上で思い至った考えをもとに俺はそう心に刻んだ。
その日の寝る時、ケータイを見たら無名のメールが来ておりそれは荒村からメールだった。
メール書かれている内容から、荒村、鬼川、秘崎、会長の電話番号とメールアドレスを手に入れた。
そして、俺は荒村にいつどうやって俺のメアドを知ったのかを聞くことを考えながら就寝した。
ま、次の日には忘れてるのだが。
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