04,始まりのゴールデンウィーク
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大きな部屋。色のない白いカーテンがこぼす光が室内を照らす。
部屋の中にあるのは3つの本棚、一つのタンス、大きめのベッドが一つ。
カーテンを除けば他に部屋を彩るもののない広いこと以外は質素な部屋。
そんな部屋に差し込まれる光はベッドの僅かな動きにも光を当てている。
俺はそんな光を寝ているベッドで受けながら体を起こす。
中高生程の子供が使うにしては大きいベッド。優に大人二人は寝れそうだ。
そんなベッドに一人分の掛け布団で俺は寝ていた。
朝の恵みを受けるべく、ベッドから抜け出してカーテンを限界まで開ける。
眩しく、目を覆いたくなる日差しを受けて俺は窓の外を見る。
なんてことはない。窓から見える道路には人が歩き車が往復するように走っている。どこにでもあるような光景だ。
空を見上げて、青い空を寝ぼけた頭で精いっぱい仰いで俺は部屋へと意識を戻す。
ベッドに隣接するように置いてあるタンスを開け、中の服を見る。
着古した服、まだ着たことのない服、そして、親が着ていたであろう服。
それらを一瞥した後、ターニィがデートだなんだと言っていたことを思い出す。
そして俺はベッドの上に力無く倒れているケータイへ手を伸ばした。
俺が寝落ちし手から離れたがゆえに画面が下になりうつ伏せになっている携帯をつかみ取る。
電源ボタンを押し、スリープ状態から起動させる。
時刻は6時10分ほど。
いつもは6時前に目を覚ますのだが、今回は少し遅めに起きてしまった。
そんなことを考えつつ、俺はタンスから服を取り出し着替える。
ケータイと寝巻にしていた服を一度ベッドの上に置き、掛布団を畳む。
その後ケータイを片手、寝巻にしていた服をわきに抱えつつ自室を後にする。
部屋の外は少し肌寒いが、その肌寒い空気は澄んでいるように感じる為、俺は心地よく受け入れる。
二つの部屋の前を通り過ぎ、一階へと向かう。
階段を下り、洗面所へと向かう。
まず洗濯物籠にわきに抱えた服を入れ、その後に籠の中を整理する。案の定、見覚えのない女性の下着やタイツ、ワイシャツがあった。叔母は酔って寝るとまず起きないことが多い事を考えると、恐らくはターニィのものだろう。
なんて考えつつ自分のものを含めた洗濯物から金具の付いたもの、傷みやすい服などを分けて洗濯物用ネットの中に分別していく
それらを洗濯機に放り込む。
次に鏡を見て、髪の毛の具合を見つつ水で簡単に整える。
その後に両手を使って水を溜め顔を簡単に洗い流す。洗面所の横に設置してあるタオル置きから一つタオルを抜き取り顔を拭う。
顔を終えると水を口の中に含ませて寝起きの歯磨きだ。これをやらないと口の中に入った埃が口の中にこびりついたようで食事を食べる気持ちが減ってしまう。
さっぱりした後、顔を拭ったタオルを洗濯機に入れ、洗濯機の電源をオンにする。
最近の洗濯機は便利だ。入っている洗濯物の量に応じて必要な洗剤や柔軟剤などの量を表示してくれる。
俺は表示された量の洗剤などを洗濯機に挿入し、洗濯をスタートさせる。
ちゃんと洗濯機が動いていることを確認し、俺はリビングに向かう。
リビングに入って一番に耳にしたのはいびきだった。昨日の夜に比べると静かだが、それでもいびきであり五月蠅いことには変わりない。
俺はリビングのソファーを寝床にしている人物の下へ向かい、毛布を剥ぎ取る。
うーん。と唸っている姿を尻目に剥ぎ取った毛布を簡単に畳んでリビングと廊下を繋ぐ扉の近くに放置する。
そのまま台所に入り、冷蔵庫を開ける。
取り出すのはレタス1玉、ベーコンのブロック1つ、卵を3つ、油のボトル。
朝はベーコンエッグのレタス添えに昨日の残りの卵スープだ。と思ったところで炊飯器の中身を見る。
空だった。そういえば昨日で空にしたんだったか? 忘れていた。
そのことを確認して俺は冷蔵庫を再度確認する。
丁度良く厚めの食パンがある。
朝はベーコンエッグレタスサンドと卵スープだ。
そうして料理を始めたとき、階段を叩くような音が聞こえる。
それは上の階から階段を用いて降りてきている音だった。
その音に俺は料理をする手を止めてリビングの方に足を運ぶ。
リビングと廊下を繋ぐ扉が開く。
そこには私服を身に着けたターニィがいた。長い黒髪はうなじでまとめられており、清楚な空気を作っている。
ターニィは台所から現れた俺に微笑を向け、さわやかな挨拶をした。
「おはよう。存外早いのね。」
「家事は早めにやった方がスムーズに色々なことができるからな。今サンドイッチを作ってる。顔を洗って待ってろ。タオルは好きなのを使っていいぞ」
ターニィはこちらの言葉を聞いて手を軽く振り、洗面所に向かう。洗面所は脱衣所と同じ場所だから分かるだろう。
リビングのソファーから聞こえてくる唸りを無視しながら俺は台所に戻って料理を再開した。
それはターニィという新しい同居人がいることを除いて、それはいつも通りの日常。その一幕だった。
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