7-2
7-2
お昼になるのは早かった。祝日の三日と比べると本当に短く感じた。
昼になると俺は一度ターニィを見る。一瞬交わす視線は気を付けるように言っているように感じられた。すぐにクラスメイトに囲まれたが。
その後、クラス中を見ると、荒村と鬼川が居なくなっていた。ついでに言うと秘崎もいなかった。
それを確認した後、バックを持って教室を出て屋上に向かう。
屋上に行くための階段の前に来たところで、階段の前になぜか風紀と書かれた腕章を身に着けたショートボブの女生徒が居た。制服の上着に縫われている赤の校章から、2年生だと分かる。因みに1年は青、3年は黄色。
その女生徒はあからさまに腕を組みながら周りを睨み付けている。まるで出刃包丁を連想させるほどに鋭い目つきに足が止まってしまう。
立ち止まったせいか、その女生徒はこちらを睨み付けた後、
特に何もないように視線を逸らした。
俺から視線を外したという事は俺には用がないという事か。
もしかしたら、ここら辺にいる特定の生徒に用があるのか。
どんなことがあれ、俺には関係の無い事だ。
俺は何事もなかったように女生徒の横を通り過ぎ、屋上に向かった。
俺が屋上に続く扉を開けると、そこには人が居そうなイメージとは反対に全然人が居なかった。
ただ、無人と言うわけではなく。
そこには荒村、鬼川、秘崎、そして見知らぬ女生徒が一人。その女生徒の校章は赤色、2年生だ。
なぜこの面子なのだろう。
なぜ俺は呼び出されたのだろう。そして思う。
あの風紀の腕章を身に着けた人物は風紀委員などではなく、単なる不良で、ここで俺はカツアゲでもされるのだろうか。
早計な判断はだめだ。
話をしよう。それが文明人に大切なことだ。
「すいませんね。昨日の留守電を入れて、びっくりしましたよね?」
「え、あ、ああ」
急に話しかけてきた荒村に俺は適当な返事をしてしまった。
「へえ。ブックなんてあだ名があるから根暗そうなイメージをしてたんだけど、割とイケメンだね。」
「え、そうには見えないのですけど」
見知らぬ女生徒の言葉に秘崎が目を細めて言う。
お世辞だよそのくらい分かれ。
見知らぬ女生徒はこちらに歩いてくる。校章に目が行っていたせいで気がつかなかったが、腕には腕章をしている。
文字は会長。……“会長”?
学校における会長職はいくつかあるが生徒が直接就く会長職となると限られてくる。一番有名なのは生徒会、つまりその生徒会の会長だ。
いや、だとしてもそんな漫画とかではとんでもない権力を持って描かれがちだが、実際は教職員と生徒間にまつわる書類整理をしたりする雑用組織という思った以上に夢も希望のない生徒役職の生徒会だ。
そんなところの会長だとしても何でここに?
俺は何をされるの??
「挨拶がまだだったね。私の名前は港外愛華。この通り生徒会の会長をしているよ」
腕章を見せつけてきた。
おう。生徒会の会長であることが確定した。
生徒会長はタレ目の美人で、長い髪をポニーテールにしている。近くで見れば見る程、清楚と言う言葉が似合う人物だった。
「せ、生徒会長と、皆さんはなんの様なんでしょうか?」
内心びくついている俺はそれでも頑張って声を出す。
それに対して生徒会長は笑う。
「そんな緊張しなくてもいいよ。取って食うわけでもないんだし」
そう言われてもこっちは一人なんですが! 一人に複数人がこちらを見てほとんど金縛り状態なんですが!
そんな俺の状態なんて気にしていないのか生徒会長は俺の手を引く。
ああ、校舎に入るための扉が離れていく……。
その場にいる人間の中心に入れられた俺は苦笑いをするしかなかった。
「それじゃあ、私が聞きたいことを聞くよ。良い? ブック君」
ああ、会長さんにまでブックのあだ名が……。
うなだれたい気持ちを抑えつつ、俺は頷いた。
「それじゃあ、君に聞くよ。ターニィとの関係はどんな感じなのかな?」
その言葉を聞いて俺は固まった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます