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 フードコートを後にした俺たちは化粧品店、インテリアショップに行き、最後に食材を買いあさってモールを出た。

 すでに夕暮れ。黄色の太陽が眠そうに沈む姿が遠目に見える。


「どうしたの?」


 そう軽く聞くターニィに視線を向けずに俺はそっけなく返す。


「別に、こんな買い物をしたのは初めてだったから、疲れた」


 俺の両手いっぱいに買い物袋がぶら下がっている。重さで掌がジンジンと痛む。

 その状態の俺にどうしたのと聞くターニィは少し人を労わる様子を見せて欲しい。とはいえ、大量の物を女性に持たせるのもなんとなく抵抗がある。ゆえに不満を声に出さない。


 俺は帰ろうとターニィに声を掛けて歩き出す。隣町とはいえ歩いて帰れる距離だ。それに話したいこともある。

 ターニィは俺と横並びに歩いている。その姿を見てここで話そうか、家で話そうかと迷っているとターニィの方から声を掛けてきた。


「何か言いたいことがあるんじゃない?」


 そう淡々とした口調で言い放った。

 少し冷たいような口調に言いどもったが意を決して声に出す。


「あの二人とは知り合いなのか?」

「クラスメイトじゃない。」

「いやそうじゃなくて、なんか言い方が何か知ってそうな気がしてさ」


 ――お前は正気か?


 その言葉が頭の中で反芻する。

 あの言葉はターニィの何かを知っているように思えてならない。

 俺の言葉にターニィは首を傾げて唸る。


「んん。知らないわ。少なくとも私とは昨日初めてあったはずなんだけれど。」

「という事は、お前の、あの、姿が変わるあれ。話したのか?」

「まさか、あれは信用しない人には話さないわ。」


 俺の事は信用しているってことなのか。

 それは置いといて、だとするとあの二人、正確には鬼川は何故あんなことを言ったんだ?

 ターニィの事を昨日知ったばかりだとして、昨日のうちに何かをターニィから感じ取ったのだろうか。分からんな。


「うーん。それはいったん保留しよう。これ以上話しても意味なさそうに思えてきた。」

「……。」


 俺の言葉にターニィは黙る。


「どうした? 何か心当たりでもあるのか?」


 そう聞くとターニィは頭を振った。


「無いわよ、別に。」

「そうか、じゃあ、お前の、姿が変わるあれについては家に着いたら聞かせてくれるか?」

「ええ、元々そのつもりだったわ。」


 昨日の出来事、それについて聞かなければならない。

 あの二人について聞いてから少し強引に切り出したが、どうやらターニィの方も言いたい様だった。

 その様子を見て、ふと俺は声が漏れる。


「今日は楽しかったか?」


 ターニィはこちらを見る。

 耳が良いのだろう。聞き逃さなかったようだ。


「ちゃんと服を見てくれたし。楽しかったわ。」


 俺はその言葉に頷くだけで言葉は返さなかった。

 それから、家に着くまで俺たちの間に会話は無かった。

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