4-5
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フードコートを後にした俺たちは化粧品店、インテリアショップに行き、最後に食材を買いあさってモールを出た。
すでに夕暮れ。黄色の太陽が眠そうに沈む姿が遠目に見える。
「どうしたの?」
そう軽く聞くターニィに視線を向けずに俺はそっけなく返す。
「別に、こんな買い物をしたのは初めてだったから、疲れた」
俺の両手いっぱいに買い物袋がぶら下がっている。重さで掌がジンジンと痛む。
その状態の俺にどうしたのと聞くターニィは少し人を労わる様子を見せて欲しい。とはいえ、大量の物を女性に持たせるのもなんとなく抵抗がある。ゆえに不満を声に出さない。
俺は帰ろうとターニィに声を掛けて歩き出す。隣町とはいえ歩いて帰れる距離だ。それに話したいこともある。
ターニィは俺と横並びに歩いている。その姿を見てここで話そうか、家で話そうかと迷っているとターニィの方から声を掛けてきた。
「何か言いたいことがあるんじゃない?」
そう淡々とした口調で言い放った。
少し冷たいような口調に言いどもったが意を決して声に出す。
「あの二人とは知り合いなのか?」
「クラスメイトじゃない。」
「いやそうじゃなくて、なんか言い方が何か知ってそうな気がしてさ」
――お前は正気か?
その言葉が頭の中で反芻する。
あの言葉はターニィの何かを知っているように思えてならない。
俺の言葉にターニィは首を傾げて唸る。
「んん。知らないわ。少なくとも私とは昨日初めてあったはずなんだけれど。」
「という事は、お前の、あの、姿が変わるあれ。話したのか?」
「まさか、あれは信用しない人には話さないわ。」
俺の事は信用しているってことなのか。
それは置いといて、だとするとあの二人、正確には鬼川は何故あんなことを言ったんだ?
ターニィの事を昨日知ったばかりだとして、昨日のうちに何かをターニィから感じ取ったのだろうか。分からんな。
「うーん。それはいったん保留しよう。これ以上話しても意味なさそうに思えてきた。」
「……。」
俺の言葉にターニィは黙る。
「どうした? 何か心当たりでもあるのか?」
そう聞くとターニィは頭を振った。
「無いわよ、別に。」
「そうか、じゃあ、お前の、姿が変わるあれについては家に着いたら聞かせてくれるか?」
「ええ、元々そのつもりだったわ。」
昨日の出来事、それについて聞かなければならない。
あの二人について聞いてから少し強引に切り出したが、どうやらターニィの方も言いたい様だった。
その様子を見て、ふと俺は声が漏れる。
「今日は楽しかったか?」
ターニィはこちらを見る。
耳が良いのだろう。聞き逃さなかったようだ。
「ちゃんと服を見てくれたし。楽しかったわ。」
俺はその言葉に頷くだけで言葉は返さなかった。
それから、家に着くまで俺たちの間に会話は無かった。
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