07,学校のヒト悶着と、
7-1
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癒されたような精神を削られたような日は過ぎ、今日、5月6日。朝。
祝日ではない登校する日と知って少し進まない気持ちでいっぱいだった。
なにせ、月曜日のあのターニィに連れられた下校以来なのだ。特に目ざとい悪戯好きの秘崎あたりなんて詰め寄ってくるのは目に見えている。
少し重い足取りにターニィはこちらの俯いた顔を覗き見た。
「今日は元気ないようだけれど。どうしたの?」
制服を着こなしたターニィが俺の学生カバンに手作り弁当を詰めているのが見えた。
制服姿は今週の月曜日以来だ。というか本当にこいつが来たのがほんの数日前とかありえない。
コイツとはこの数日のやり取りでもう何か月も一緒に暮らしているかのように感じてしまう。
これは俗にいう馬が合うという事なのだろうか。いや違うだろうな。
「早くしないと電車に送れるわよ。」
その声に引っ張られるようにターニィと一緒に家を出た。
場所は飛んで学校。
ターニィに対して変に視線が集まっている中、俺たちが教室にたどり着いた。
忘れがちではあるが、ターニィは美人なのだ。まさかの学校で再確認をさせられるとは。
驚くような気持ちでターニィと一緒に教室のドアを開けたその時、
「皆さん。おはようございます。」
とターニィはさわやかに言った。
……いや、誰だよお前。
とそこまで考えて思い出す。
そういえば転入初日はさわやか系だったな、と。
思考が停滞しかけているとき、ガシッと誰かが首を掴んできた。
悪戯好き女子こと秘崎である。
「ブック君んんんん! お゛は゛よ゛う゛!!」
血涙でも流しそうな形相を浮かべながら俺の首を掴んで揺さぶってくる。
俺は目を回しそうなほど揺さぶられた挙句に引っ張られるように卿実に引きずり込まれる。
教室を見るとクラスメイトの殆どがターニィに釘付けになっており、俺の存在は蚊帳の外のようになっていた。
そんな中で秘崎に肩を抱かれるように俺は教室の隅に追いやられた。
そして秘崎は片手で空中を上に向かって撫でるように動かす。
「ほら、ターニィさんとの関係を吐きな」
そうドスの効いた声で吐き捨てた。
女が言うセリフじゃねえ。
俺はビビってか呆れたのか何も言わないでいると、秘崎は空中を撫でていた手で俺の顎を掴む。
「さっさと吐けや。楽になるぞ」
そう言って顎を掴む手に力が入っていく。
「いだい! いだだだ! 楽ってそっち!? そっちの意味なの!?」
「ハッハッハ! さっさと吐けば楽に――いだっ」
秘崎が笑い出したその時、秘崎の顔ががくんと下がる。
秘崎に後ろにはパッと見誰もいない。が、やや下に視線を下げるとその人物はいた。
大きめの目にウェーブのかかった栗色の長い髪の毛。小柄な容姿から小動物を連想させる女子。いつぞやの鬼川だ。
その鬼川が辞書のような分厚い本を片手に立っていた。
おそらく、その片手の本で殴ったのだろう。本気で痛そうだな。
「ちょっと! いま尋問している最中でしょうがって鬼川さん……。ヘッヘッヘ、いつもご贔屓にありが――グヘッ」
急に媚びりだした秘崎に鬼川は容赦なくボディブローを食らわせる。
「今日は早めのホームルームだそうだ。さっさと席に着け。お前もだ」
外見に似合わない低い声でそう告げて自分の席に戻っていった。
鬼川を視線で追っていると、荒村が視界に入った。
まるで友人と目が合ったように気さくに片手を上げて挨拶してくる。サングラスがないから厳つい顔がはっきりと見えて怖い。気さくな笑顔すら怖い。
どうやってか俺の携帯電話の番号を知っている怪しい奴。
今日の昼にどんなことを聞いてくるのやら。
そんなことを考えながら席に着いた時にタイミングよく担任の教師が入ってきた。
それと同時にターニィに釘付けだったクラスメイト達は四散して自分の席に滑り込んだ。
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