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積もる話の為に俺の家に向かったのはいいが、基本的に話す世間話は一切思い浮かばなかった為、道中無言だった。
正直、気まずいとも言わずだからと言っていい雰囲気とは言えないと微妙な空気を感じていた。
その状態のまま歩いておおよそ10分ほどで俺の家が見えてきた。
「やっと着いたか」
とは言っても別にこの微妙な空気が無くなるわけでもない。
というか、むしろこれから気まずい空気になるかもしれない。
こいつが話す積もる話とやらによって。
そんな心配をよそにターニィは率先して俺の家の玄関に駆け寄り、玄関前の門をくぐる。
ターニィは、鍵を開けるね。とこちらに言うものの返事を聞かずに鍵を差し込み捻る。
ガチャリという音は何度も聞いているにもかかわらず、妙に耳に残る音だった。
玄関扉を開いたターニィは駆け込むように家に入っていった。俺はその後に続き玄関が閉まる前に扉に手をかけて家に入った。
「一軒家に一人暮らしなんて、貴方ってお金持ちだったり?」
「いや、そんなことはない。俗にいう訳有りってやつだよ」
「なんか卑猥ね。」
……こいつ、学校でいた時にもそうだったが妙に流暢な日本語だな。
いわゆる日系の外国人で、実は日本生まれの日本育ちじゃないか?
と、これから聞けばいいことを細々と考えていると、ターニィはドンドン進んでいきリビングに遠慮なく入っていく。
「そこそこ広いのね。」
「ああ、元々三人か四人暮らしの予定だったからな」
「ふぅん。」
「おい、勝手に冷蔵庫を開けるな」
こっちの事情に踏み込んでくるかと思ったが、つまらなそうに返事を返しただけだった。
それどころか何の迷いもなく冷蔵庫に向かい、何の躊躇もなく冷蔵庫を開け放った。
「ジュース、無いのね。」
あったら遠慮なく飲んでたなこいつ。
と思ったらターニィは食器棚のコップを二つ取り、冷蔵庫にあった麦茶のポットを取り出しコップに注ぐ。
そして片手に麦茶入りのコップ二つを器用に持ち、片手で麦茶のポットを冷蔵庫に仕舞った。
「思ったよりも綺麗ね。」
「何がだ?」
「家の中。一人暮らしの男の家って散らかってるイメージがあるから。玄関に埃は見えなかった。台所も綺麗。リビングも目立つ汚れもない。……それとも自室以外は綺麗にするタイプ?」
「さあな、いつか分かるだろ」
「それもそうね。」
ターニィはリビングにある食卓の机に麦茶のコップを置き、椅子に座る。
それに倣うように、ターニィとは向かい合うように椅子に座った。
しかし、こうしてみると違和感がすごい。
何が違和感って、それはそうだろう。
今まで一人暮らしをしてきたところに、突如に転入生がホームシェアをしてくるとか、しかもそれがそれなりに美人の女子だとか。
そして、その女子が制服で俺の目の前に座っていることとか。
まったく、考えれば尽きない思考に迷っていると、
「それじゃ、話をしましょうか。」
ターニィは学校見た笑顔とも、俺の手を引いて下校したときとも違う、妙に不安にさせる笑顔をした。
そんな彼女に俺は、ああ。としか返せなかった。
そんな俺の様子を表すように、冷蔵庫から出された麦茶によって冷えたコップはその身に小さな水滴を作り始めた。
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