第三章 デートへ行きましょう 6
「お待たせいたしました」
ちょうど、
「きたきた。うーん、やっぱりおいしそう」
チーズケーキはふっくらとした仕上がりで、表面のきつね色が実に
紅茶ポットとカップが
「今日一日、これが楽しみだったの」
今にも鼻歌でも口ずさみそうな陽気さで、
あーん、と彼女は小さく口を開くと、ケーキはそこへ吸い寄せられていく。
しかし。
「くちゅっ」
ケーキを口に
次の
「………………」
彼女はフォークを落とした姿勢のまま固まり、
しばらくそれを
「……まぁ、何となくこんなことになるんじゃないかと思ってたんだけど」
頭を
「え」
「ほら、口開けて。あーん」
ようやく正気に
「あ……、あーん」
こうするのがベストだと彼女も思ったのだろう。前のめりになり、
「あぁ、やっぱりおいしい」
口にした
「
「はいはい。砂糖とミルクは?」
「どっちも。砂糖はいっこ」
今度は紅茶の
これでは
「わたし、
表情を変えないまま、彼女はぽつりとそんなことを言う。なに? と
「〝青春の
……なんでまた、そんなことを。
なんで今さらそんなことを。
いや、もしかしたら彼女はずっと言いたかったのかもしれない。自分の事情に付き合わせてしまっていることを。申し訳ないと思う気持ちがあったものの、今まで口にするタイミングがなかっただけなのかもしれない。
けれど、
「いい。
本当ならお礼だっていらないのかもしれない。
そうすることで、
「もうひとつは?」
考え込んでいると良くない方向にいきそうだったので、話を次に進めることにした。すると彼女は、少しばかり
ようやく出てきた声も、ぽそぽそとしたものだった。
「子供の
……あっただろうか。全く身に覚えがない。
自分で言うのも何だか、子供の
すると彼女は、思いもよらぬ言葉を口にした。
「わたしたちが
そうしているうちに、どうこうできる段階じゃなくなってて。もう取り返しがつかないぞってなっちゃって……」
ただ
そんなふうに
特別すぎる彼女の
もし、
じゃあ、なにか。
きちんと心の内を明かしていれば、
なら、それなら、一体この数年間は──。
「ね。
どう答えていいかわからず、
「あぁ、ごめん。無神経だったわよね。それとも、昔のことだからもう覚えてないかしら。まぁどっちにしても、こうしてまた遊べているんだから、
「
「
自分の名前を呼びながら、
何だろう。突然始まった彼女の行動に、話の続きをできないでいる。
「いつからだっけ。わたしたちがこんなふうに呼び合うようになったのってさ。
「えぇ」
突然の提案に
けれどそれは、同級生とかクラスメイトにしては適切だ。昔の
ただ、
「ほら、呼んで呼んで」
かまんかまん、と
「あ、
「はぁいー」
のんびりと間延びした言い方で返事をされる。すぐに彼女は
「
実際、彼女を「
そんな人を
「ねぇ、きぃくん?」
「…………」
それよりも、こちらの方が問題だった。彼女は
そんな
でも、どうだろう。世界で一番かわいい、みんなが好きな
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます