第四章 心に最後に残るモノ 4
走った。
走った。
走るなと言われている
突然走り出したせいで早くも足がつりかけていたが、歯を
校門に
下校だというのに手には
「
彼女の姿を見つけて、
「──うそぉッ!」
「待って、
「聞くような話なんかないわよッ!」
走る背中に声を張り上げる。制服にローファーだというのに、彼女は全力で走っていく。
校門を
「なんで
「あなたが追いかけるからでしょう!?」
もうめちゃくちゃだ。頭に血が上った彼女は
「くっそ、速いッ!
男の意地で
あぁそういえば、
「
止まってくれないならそれでいい。話を聞くつもりがないならそれでいい。それなら
今まで
「君は世界一かわいくて、みんなにも好かれていて、どこからどう見ても特別な人間だ! でも
だから、君から
全力
言う言葉を決めていたわけでもないのに、
無責任ながらも力強く、
しかし、それが届くかはまた別問題だ。彼女は、走りながら、「うるさい、うるさい、うるさい、うるさい……ッ!」と
「
彼女は構わず
そして、駅が見えてきたところで彼女は制服から定期を取り出した。あのまま電車に乗るつもりだ。ひどい
このまま改札を通れば、彼女はあの電車に乗ってしまうだろう。そうなるとまずい。
それはダメだ。今、今日という日を
「
大声で
「……ッ!」
彼女は定期を持ったまま、改札へ走っていく。あと数秒もすれば駅の構内へ入っていく。未だ
遠くから手を
歯を
思い切り
力強い突風が、
「……! 桜……?」
桜の花びらが一枚、
その動きも不思議だったが、ここに桜の花びらがあるのもおかしな話だ。とっくに桜は散っている。
「はっくちゅ!」
そのときだった。
彼女は一度
トリガーであるくしゃみをしてしまった。彼女の
「
「特別って何よ……、
その
「わたしの価値が下がるってなに!? あなたといっしょにいたら、それで価値が下がるって!? そんなの、そんなのってないわよッ! わたしは確かに特別だけれど、特別であると思っているけど! わたしの価値はわたしが決めるわよッ! そんな
彼女は
ぐっと、彼女が声を
「わたしは……、わたしは。そんなわけのわからない周りの目なんか気にしないで、きぃくんがそばにいてくれれば……、いっしょにいてくれれば、それでよかったのに……!」
「
「
言えた。
ずっと言えなかったことが、ようやく言えた。子供の
そして、それは
未だ泣き続けている彼女の
「きぃくん、ダメだよ……、いっしょにいたいっていうのは、もうダメ。あなたには、大切な人がいるでしょう? わたしのことが一番大事って言ってくれたのは、
彼女は何かを
「ま、待ってよ、
「それが本当だとしたら、もっとダメだよ……。そんなのは彼女に失礼だし、
……出た。彼女だ。
思えば、
「え、えぇと、
「いいわよ、別に。気を
「…………」
いやだからだれだそいつ。
「え、ちょっと待って、
「
「遊びに行った日の夜……、公園の前……?」
「
「
その通りだ。あれだけ
でも公園の前を通りかかったときに
「あ」
そこでようやく思い当たる。確かにあのとき、だれかからの視線を感じた。
やっぱり
と、いうことは。
「もしかして、
「へえ、あの子、
言いながら、
もしかしたら、
「……え、
「……うん。あれね、うちの妹」
「う、
そう言いつつ、
「それって何年前の話さ……、
「え、え、え、ちょっと待ってよ、なら、それならわたしは、きぃくんの妹を彼女だって
彼女は自分の両手を見つめながら、信じられないようにわなわなと
「まぁ……、そういうことになるよね」
「~~~~~~~ッ!」
彼女はこれ以上ないほどに顔を真っ赤にさせると、声にならない
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