第二章 駆け抜けろ青春、まるで転がり落ちるように 6
──で。
およそ二十時。
すっかり暗くなった住宅街はあまり物音が聞こえてこない。たまに車が通ることで、ようやく人の気配を確認できる程度。まだそんなに
「お待たせ」
「それじゃあ、いこっか」
「
「ん? 学校に忘れ物を取りに行くって言って出てきたけど?」
「あ、
「…………」
未だに親たちの目からは、仲の良かった
まぁ今回はそれがいい方向に転んだわけだけど。
そもそも、ひとりだったらどうやってプールではしゃぐのか、という話だけど。
いつもと同じように電車に乗り、同じ駅で降りる。
登下校時は学校から駅まで生徒がたくさん歩いているが、今は人の気配がない。おかげで、
しかし、当然のように校門は閉まっている。校舎も真っ暗だ。暗いグラウンドに静まり返った校舎、いつもの学校とは全く
「中は……、だれもいない、のかしら」
「多分。先生たちももう帰っちゃったんじゃない?」
校門前でひそひそと
「……一応、学校の周りをぐるっと回って確認してみようか」
「そうしましょう。中で
今、校門を乗り越えて
「えーと、『夜の学校』はこれでクリアでしょ。『かわいいあの子』はわたし。で、あとはプールではしゃげば、ミッションはクリアでいいのよね?」
「だと思うよ。プールではしゃぐ、っていう指示が
「白目を
「それだれがやるの?
彼女は
まぁ、それは確かに。前回のミッションは大変な目に
実際のところ、
今回のミッションで難易度が高いのは、夜に家を
……そう思って、
「……君たち、こんな時間に何をしているのかな」
突然、後ろから声を
中年の男性と若い男性。彼らは人の良さそうな笑顔を向けながらも、
「この学校の生徒さん? それ、ここの制服だよね? でも、学校はもう真っ暗だし、何をしているのかなーって声
……まずい。
制服で来たのが裏目に出た。深夜というわけではないし、「こんな時間に」と言われるような時刻ではないような気はするが、
「あぁ、ええと、その……」
ふたりの警察官を前に、
「そっちの子はどうしたの。こっちを向きなさい」
若い方の警察官が、
彼女はなぜか、前を向いたまま決して
目をぐりぐりと動かして、
「ど、どうしたの」
「ほら、どうしたの。理由があってここにいるのなら、その理由を言ってごらん」
かといって、
どうしよう。どうするべきか。
視線を感じて、横を見る。
……ちょっと待って。
「ゴウッ!」
その
「あ、こら! 待ちなさい!」
警察官の
彼女は角を一度曲がり、さらに曲がった。
そうしているうちに、学校の周りをぐるりと一周していた。すると、
……
「………………」
「………………」
外の様子を
心臓は痛いくらいにバクバクと鳴っていた。
「……追いかけて、こないわね」
「……うん」
十分すぎるほど待ってから、静かに口を開く。さっきから何も聞こえてこない。遠くで犬が
多分、
「はぁー……」
ほとんど同時に深い、本当に深いため息を
「危なかったわね……。まさか、補導されかけるなんて。
「
「そう見える?」
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