第二章 駆け抜けろ青春、まるで転がり落ちるように 3
「ごごご、ごめん、
我ながら、ここで声を
「いい。見つかるかもしれないから、静かに」
しかし、ひっついたままでは彼女に申し訳ないので、できるかぎり彼女とは
けれど、ここまでやっても彼女とはおそろしく近いままだった。
彼女の
そのとき、左手に痛みが走る。
おそらく、無意識のうちに強く
「……最近太ってきちゃったので、運動しなくちゃとは……」
「……そうは見えないが、どのくらい……」
先生の声がすぐそばで聞こえて、びくっとする。どうやら二人組だ。
そうなれば、ここから
「あれ?」
先生たちの足音が止まる。本当にすぐそば、
「どうした」
「いえ、
──血の気が、引いた。
おいおいおい、
しかし、
どうすればいい。どうすれば……、どれだけ考えても良い案なんて思いつかない。言い訳すら出てこない。それはそうだ、こんな
もも先生が
『
……校内、放送。
もうダメだ、と思った
「……名前、呼ばれちゃいましたね」
「何だろうな」
ふたりの先生が短くそうやり取りをすると、
全身から力が
「……………………」
「……………………」
脳がひりつくような危機的
男としてはこれ以上ないほど
しかし、そこでがちゃん! と勢い良く
「何やってるんですか、こんな
「……
再び身体中から力が
「
「しかし、不思議なんですけどね」
「一度、手を
無理して一回でやろうとするより、その方が確実だったのではないか。彼女はそう言うのだ。
言っている意味が
「はぁ──ッ!?」
「なにそれ! 見つかったらそれでミッション失敗じゃないの!?」
「まぁ失敗でしょうね。でも、またやり直せばいいでしょう。今度は見つからないように。条件は満たしているんですから、何回でもやればいいんですよ」
「いやだから、
「そんなことを言われても。わたしは一言もそれっきりだなんて言っていませんし、〝青春ミッションボード〟にそんな
気を取り直して。
手はずっと
足を
〝青春ミッションボード〟には『決して人に見つかってはいけない』と
これ、見つかってない?
「もちろんわたしは対象外ですので、お気になさらなくて結構ですよ」
「……あ、そう」
まぁそういうことならいい。さて。
危機的
〝青春ミッションボード〟に書かれていた条件どおり、だれにも見つからず、
その
それらは宙に飛ばされると、
それらがすべて流れていったあと、光は
「ミッション、完了です」
彼女の声が届いた
しかし、
「一時はどうなることかと思ったけど、これで解決ってわけね。あぁよかった。このまま物が持てない、って
心底ほっとしたのだろう。
さっきもも先生が置いていった
今まで見たことがないぐらいのはしゃぎっぷりだけれど、
彼女が
そして、その
彼女の手は無情にも
「どういうこと!? ミッションは成功したんじゃなかったの!?」
後ろに
「はい。
そんなとんでもないことを。
……おいおい、
後出しの事実をさらっと言う
しかし、
「じゃあ早く、次のミッションとやらを出しなさいよー……」
顔を
「わたしもそうしたいところですが、次のミッションがまだ来ておりません。ミッションが届くまでは待機でお願いします」
あっさりと
「え、じゃあなに? わたしはこのままってわけ!?」
勢い良く顔を上げると、信じられない、といった様子で彼女は
けれど、さすがにそうはならなかった。
その手鏡を
気を取り直して、再び鏡を見つめる。彼女の目の下にはあの
「ミッションをクリアした
あなたが〝
「わかっているとは思いますが、これで
「条件って?」
「トリガーとなる行動があるはずです。何かしたときに
言われて、思い返す。
『くちゅんっ』
おそらくこの世で最も
「くしゃみかな……」
「くしゃみね……」
同時に思い至ったらしく、彼女も同じように口に出していた。あちゃー、と言わんばかりの表情で、
「つまりわたしは、くしゃみをするとあの
確かにキツい。
「自宅で
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