第二章 駆け抜けろ青春、まるで転がり落ちるように 4
先生たちが
「ただいまー」
自分の部屋へ向かうために、リビングの横を
あまり長くない
「
「………………」
「ただいまって言っているのに、何も返さないからでしょう。はい、ただいま」
「おかえり。本当おにぃ、最近
「
クッションを元の位置に
「家にいるんだから
「もー、うるさいな! わたしの勝手でしょ!」
「ねえ、
当時の呼び方を引っ張り出してきて、
「………………」
思った通り、
「あれでしょ。おにぃの
覚えていたようだ。よくよく考えてみると、そこまで
「あらー、
キッチンから出てきた母さんが、手をエプロンで
「昔は
「お母さん! そんな昔の話しないで!」
がーっと
あぁそうだったっけ。何だか今と
「……なに、おにぃ」
顔を赤くし
「いや、
そう言い終わる前に、
※
「やめてよ、それあかりの! かえしてってば!」
小学生になったばかりの
何人かで
しかし、物を投げるほうが断然早い。だから、
「ほら、こっちだよ!」
「へーい、パスパス!」
彼らとて、本気で
ただ、
「こらーっ! あかりちゃんをいじめるな!」
そこに現れるのが
「なんだよおまえ、あかりのことすきなのかよ」
「こいつら、できてるんじゃねーの」
返ってくるのはそんな冷やかし。しかし、その程度だ。ガキ大将も周りの男子も
もしこれが、
クラスのみんながサッカーやドッジボールで遊ぶとき、
そんな少しの勇気だけで、ヒーローになれた。
いじめられて泣いてしまった
「きぃくん、あかりもうやだよ。いつもいじわるされてばっかり。きっとあしたもいじわるされちゃうよ」
そう言って泣く。その度に
「……きぃくんは、なんでいつもあかりのことをたすけてくれるの?」
「それはね、ぼくがあかりちゃんのことがだいすきだから!」
「……えへ。あかりも、きぃくんのことだいすき!」
めそめそ泣いていた彼女が、ようやく笑顔になった。花が小さく
だから、こんなことを言った。
「ねぇ、あかりちゃん。ぼく、やくそくするよ」
「なにを?」
「あのね──」
※
「おにぃ。朝。起きてってば」
「……ん」
身体をゆさゆさと
むくりと起き上がると、パジャマ姿の
「……また、
昨日の出来事が原因だろう。目覚めが良くないのも、昨夜、
部屋を出て階段を下り、洗面所に入って顔を洗う。
夢の中では、
いじめっ子から彼女を助け、泣き顔を笑顔に変えられるヒーロー。ちょっとだけ勇気を持ったヒーローだ。
そうじゃなくなったのは、いつの
彼女がかわいいお
しかし、
ちょっとの勇気だけじゃ、どうにもならないことに気が付く。
例えば、めちゃくちゃに足が速い子。勉強がとっても得意な子。クラスで一番背が高い子。容姿がすごく
そういう子たちは特別だ。得意な分野で一番になれる子たちは、やっぱりヒーローだった。さらに
運動部の一年生でレギュラーになった子。
もちろん、
彼女は
彼女が
彼女は特別だ。周りも同じように特別である。
だけど
別に
特別な人同士でいる方が、彼女のためだと思ったのだ。
そうなってから、
そして、今に至る。
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