第四章 心に最後に残るモノ 6
「
「ほ、ほんと!?」
「何もない! 消えてる! それに、わたし、ちゃんと物が持ててる!」
やったー! と
「やった、やったよ、きぃくん! もう終わったのよ、これで! きぃくんのおかげだよー!」
そんな喜びの声を上げつつ、
彼女の女の子らしい身体が
ここで力強く
「喜ぶのはいいんですが、このあとの話をさせてもらってもよろしいですか」
「あ、はい」
「
「え……、あ……、そっか」
もうお別れなのだ。
「そっか、
「何を言うんですか、
「それに、
「……どういうこと?」
「まだ、ミッションは完全には終了していないということです。おふたりとも、これが最後の試練です。少し前に、『
覚えている。説明は長くて複雑なものだったが、要約するとこのような形だったはずだ。
「えっと……、確か、青春ミッションを完了する際に、ミッションに関する
「今回のミッションは青春ミッションの
「え……」
言葉に
今までの激動の数日間が、すべてなかったことになるとでも言うのだろうか。
「その通りです。あなたたちが
「…………」
絶句した。それは、
それらすべてがなかったことになるというのなら、
「ま、待ってよ、
連想してしまっているのだ。一番あって欲しくない結果を。
そしてそれは、現実のものとなっていた。
「いえ。
それらはすべてがなかったことになります。
つまり、
……予想はできていたけれど、それはとても
こんなふうにいっしょにいることもなければ、楽しくおしゃべりすることもない。ただのクラスメイト、いやそれ以下の関係だ。
ろくに会話もせず、変にお
今思えば、なんてつまらない関係だったんだろう。
「……い、
「せ、せっかく、せっかくきぃくんとまた仲良くなれたのに! いっしょにいるって約束したのに、また、また
彼女の声は
それから
「
「きぃくん……」
でも、やらなければいけないのだろう。
「このままじゃ君は、
「で、でも。きぃくんは、それでいいの? わたしたち、また
「
かつての自分がした約束。そのときの声が、頭の中で
〝ねぇ、あかりちゃん。ぼく、やくそくするよ〟
〝なにを?〟
「たとえ
〝あのね──〟
「〝
そう、約束だ。その約束だけは忘れない。ずっと大事にしていたもので、
なのに、なんでだろう。
彼女は口をわなわなと
どこまでも
どうやったらここまで
「なっ、に、そっ、れ! 今、今言う!? 約束のこと、今言うの!? え、ちょっと待ってちょっと待って、きぃくんは約束のこと覚えてたってこと?
わたしがそれとなーく
なにそれぇ……、ちょっともう、やだー……、どんだけわたしに
ていうかさ、このタイミングで約束のこと持ち出されたら、もうわたし『うん』って言うしかないじゃない……、ずるいよもぉー……、何も言えなくなっちゃうじゃん!」
その移り変わりについていけず、ただ
すると、
「……いいよ。きぃくんが約束を覚えていてくれて、正直すっごく
そう言って、
「わかったわよ、わかった。ミッションを完了しましょ。ここで
視線を
「それにどーせ、わたしはもうきぃくんには逆らえないしねー」
「ちょっと待って、それどういう意味?」
あまりに聞き捨てならないことを言われたので、
「いやあの……、……れた弱み、というか、あの、その」
「ちょちょちょちょっと待って、声が小さい、聞こえないもう一回言って!」
「うっさい、ばーか、ばーか! 何でもないわよ!
彼女は右手を大きく
その光が
大量の桜の花びらである。
想像を絶する数の花びらが現れて、世界を桜で
桜の花びらは
「
そんな言葉が
「この桜の花びらがあなたたちを
あと数分もすれば、
そして、それは
「そうだ、きぃくん。七夕祭り!」
「あ」
そういえば、いっしょに行く約束をしていた。ふたりでいっしょに行って、神社に
彼女は
「いっしょに行くっていう約束したんだから、絶対行くわよ。約束、忘れないように」
「うん。楽しみにしてるよ」
そんな言葉を交わす。その先にあるものは何も言わない。
約束の確認をしている間に、
あと少しすれば、きっと
「あ。そうだ、ねぇ
「わたしたちが今こうしていることも、全部忘れちゃうのよね?」
「はい。そっくりそのまま、
「そっか。そうなんだ」
「ならきぃくん。ちょっと聞いて?」
その顔に、
わずかに赤く染まった
「わたし、わたしね。ずっと気が付かなくて、この前ようやくわかったんだけど。自分の気持ちに、気付けたのだけれど。うん、そう。昔からだったの。ずっと、ずぅーっと、昔から、わたし、きぃくんのことが──」
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