第50話 特別編11 ステータス

 突然やってきた不審者たちである俺たち……いや猫に向けて歓声を送っていた街の人々。

 そのまま、街へ受け入れられたのはよかったんだけど、どうもこう座りが悪い。


 しかし、街に入ると俺の疑問も払拭されたのだ。というのはこの街、中心地に巨大なコロッセウムがあったからなんだ。

 コロッセウム……闘技場はファンタジー世界によくある設定で、たくさんのバトルジャンキーたちと賭け事をする熱狂的な住民たちによって支えられていることが多い。

 中には捕まえられてとか売られてなんて悲劇的な理由で戦わされる人もいるが、この街ではそういう人たちはいないみたいだった。


 驚いたのはこの街の住人の殆どが経済効果からではなく、純粋にコロッセウム大好きで、コロッセウム命! って感じだったんだよ。

 なんというか、外国のサッカークラブの熱狂的なファンみたいにさ。


 そんなわけで、俺たちはコロッセウムの受付まで来ている。来たくは無かったんだが、猫のやつが睨むから……。あと、ハトはいつ元の大きさに戻るんだろう? あのサイズだとやはり食べる量が増えるんだろうか?


 まあ、細かいことはどうでもいい。


「青木、お前から計測してみろよ」

「えー、俺はやんなくていいよ」


 頭の上に乗っかったカラスが囀ってくるが、俺は断固拒否したい。

 え? 何かって?

 いや、コロッセウムには人の強さを測るステータス表示の水晶があるんだよ。

 どんな危険が潜んでいるのか分からないのに、個人情報を安易に見せるのは良くないと思うのだ。


「面倒な奴だな……ふん」


 猫が水晶に手をかざすと、ホログラムのようにステータスが投影された。


 猫

 職業:孤高の武神

 レベル99


 え、ええええ。何だよこの強そうなの。

 ひょっとしたら設定か?

 不思議に思った俺は傍でじっと様子を見守っていたミオへ目をやる。


「良一さまはステータスを見られないのですか?」

「あ、いや。ミオは?」

「良一さまがするのでしたら……」


 何故かそこでポッと頰を染めるミオ。よく分からんがとにかく可愛くて綺麗だ。

 よ、よおし。

 俺が水晶に手をかざそうとすると、カラスとハトが割り込んで来た。

 あ、いや、ハトは水晶を踏みつぶそうとして猫に前足アタックをくらいよろけていただけだけど……馬車ほどの大きさがあるハトをああも簡単に……猫怖えよ!


 ともあれ……


 カラス

 職業:先輩

 レベル22


 お、普通だ。


 ハト

 職業:恐れを知らぬ遊び人(三羽目)

 レベル10


 ハトのことは見なかったことにしよう。


 さて、俺はっと……


 青木

 職業:フリーターらしい?

 レベル1


 待て待て! 俺はこの小さな鳥たちより弱いのかよ!


 ミオ

 職業 開示はロックされています。

 レベル99


 えー、えー、ええええ!


「良一さま、どうかしましたか?」

「あ、いや、何も……」


 きっと何かの間違いだ。ステータスなんて、この水晶が適当に遊んで表示してるだけだろ。


「痛っ!」


 その時、水晶玉が一人でに浮き上がり俺の頭へごっつんこした。

 急速に俺の意識は遠のいていく……。

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