カラス先輩とハトくんのアンニュイな日常

うみ

第1話 ゴミの日

――都内某所

 ターミナル駅になっているこの駅舎は規模が大きく毎日大勢の人間が利用する。駅舎の屋根にとまった真っ黒のハシブトカラスは「くああ!」とあくびを一つ。

 そこへ、どこにでも見るくるっぽくるっぽうるさいハトが舞い降りた。

 

「カラス先輩、ちいいいっす」

「よお。ハト。元気してた?」

「ぼちぼちですよ、カラス先輩。ところで、先輩。なんだか眠そうっすね!」

「あー、うん。今日は満腹の日だからな」


 その言葉を聞いたハトの頭に電球がピコーン! と浮かぶ。

 そうだそうだ。今日は「生ごみの日」だったとハトは思い出す。きっと先輩は、朝早くにごみあさりをしてきたのだ。

 「僕も行けばよかったあ」と心の中でくあくあするハト。


「くああああ。眠い」

「そういえば、人間どもが先輩対策をしたとか?」

「んー、グリーンネットか? あんなもの、くああでくえええ! よ」

「さすが先輩っす! パねえっす!」


 コクリコクリと船を漕ぐカラス先輩につられ、ハトもあくびがでてきた。

 そのまままどろむ二人……一方の人間たちは足をとめずに駅へと入っていく。

 

「……くああ!」

「……くえ!」


 ハッとなり起きる二人。時刻はそろそろお昼を迎えようとしていた。


「よおし、ハト。暇だから刺激を楽しむとするか」

「何するんすか? 先輩」

「そうだな。人間へ近寄るゲームでもするか!」

「なんすかそれ! 先輩、マジカッコいいっす!」


 カラスが羽ばたくのにつれて、ハトも同じように空へと舞い上がる。

 二人は少しばかり飛行すると、近くの公園まで足を運んだ。

 

 街頭の上に着陸すると、カラスは眼下を見るようにハトを促す。

 

「おお、人間がいますね。先輩」


 ハトの視線の先には、手押し車を押す老人の姿……。

 

「いいか、見ていろ。ハト」


 そう言ってカラスは羽ばたき、老人の手押し車へ向けて滑空していく!

 手押し車の辺りまできたカラスは急旋回し、ハトの元へ戻る。

 

「すげえっす。先輩。先輩の風圧、人間に当たってましたよ!」

「ははは。こんなもんだ」

「今度は僕がいくっす!」


 ハトは地面に降下し、よちよちと歩き始めた。

 くるっぽくるっぽおおおと声を上げながら、進んでいくと向かいから自転車がやってくるではないか。

 

 接近するハトと自転車。接触してしまうのではないかという距離まで自転車が詰め寄ったが、ハトはみじろき一つしない。


「あ、あぶねえハト!」


 見ていられなくなったカラスが翼をはためかせた時……。

 自転車がハトをよけてそのまま走り去ってしまった。

 

「どうすか? 先輩?」

「あ、うん、まあまあだったな」


 「こいつ、気が狂ってやがる……」カラスは心の中でそうくええしたのだった。 


 ※続く? かもしれない。

  

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る