第47話 特別編8 お約束
「白い、ひたすら白い」
俺は見たまんまの感想を漏らし、ぐるりを周囲を見渡す。
ちょ、俺だけかよ。驚いているのは。
この世界の設定をしたであろうミオは当然のこと、カラスたちもまるで驚いた様子がない。なんだか俺一人だけあたふたしているのも馬鹿らしくなって気持ちが落ち着いていた。
「良一さま、ここはチュートリアルです」
「またゲーム的だな……」
「良一さまのお好きなゲーム風ファンタジー世界になさりますか?」
「それでいいかな。チラッと見てとっとと連れて帰ろう」
俺はカラスらをチラリと見やる。
見られている事に気がついたカラスがふわりと飛び上がると俺の頭にとまった。
「痛い! 痛いって!」
「おい、青木。ここには食べ物が無いぞ」
「お前らそればっかりだな」
「くああ!」
「だから、こらあ! 突くなって!」
地味に痛いのが嫌過ぎる。
なんてカラスとやりあっていたら視界が草原に切り替わった……。
草原は言葉の通り雑草に覆われた平原だ。くるぶし位までの高さがある雑草が……ってハト、なんだか目を輝かせているな。
「どうした? ハト」
「何って、それは土をほじって虫がいないか見てるんすよ! お!」
ハトはさっそくウネウネした芋虫を土中から引き出す。
うわあ、何あの色……鮮やかなピンク色なんだけどお。き、気持ち悪い。
「先輩、食べますか?」
「だから俺はグルメだって言ってるだろ?」
「そうでした、そうでした」
てへへと首を揺らすハトだったが、そんなもん食べて大丈夫なのか?
「青木、向こうに人間の作ったであろう道があるな」
いつのまにか肩に登っていた猫が前脚で指し示す。遠すぎるため霞んで見え辛いが、確かに街道らしきものがある気がする。
まずは、そこを目指してみるか。
◆◆◆
「やってまいりました。何もない道です」
「だから、誰に話をしているんだって……お、向こうからなんか来るぞ」
ハトとカラスの漫才のとおり、お約束というか向こうから馬車がやって来る。
定番のイベントかな? でも、野盗の姿は見えない。
ってえええ、猫!
馬車の前に立つな。
あー、馬車が慌てて速度を落とし停車したよ。迷惑な奴だな。
「おい、食べ物をよこせ」
猫は馬車の幌に飛び乗ると、中を覗き込んだ。
まさかのこっちが追い剥ぎパターン。あ、新しいが……俺まで同類と思われないだろうか?
「ね、猫が喋った!使い魔か!」
あー馬車の中から驚いた声がするよー。
僕、なんだかとってーも嫌な予感がするぞ。
「おい、お前かこの使い魔をよこしたのは!」
ごっつい強面のおっさんが馬車からのそのそと出てきて、俺を睨む。
俺の第六感は正しかった。
なんて考えている場合ではない。どうしよ。
俺は縋るような目でミオを見やる。
「良一さま……私怖いです」
棒読みだよね、それ。
どうやら、ミオは俺を助けてくれるつもりはさらさらないらしい。
どうする俺?
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